約45年もの長きにわたり女王として君臨し、イギリスに繁栄をもたらしたエリザベス1世。その女王即位までの波乱にとんだ半生を、知られざる恋なども絡めながら描き出す歴史ロマン大作ミュージカル『レイディ・ベス』が8年ぶりに上演される(※初演・再演時のタイトルは『レディ・ベス』)。『エリザベート』『モーツァルト!』などを生み出したミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイが脚本と音楽を手がけ2014年に帝国劇場で世界初演、2017年に再演された、日本発のオリジナル・ミュージカルだ。
2026年版はキャストが一新され、レイディ・ベス(以下べス)役に乃木坂46・奥田いろはと小南満佑子、その恋の相手である吟遊詩人ロビンに有澤樟太郎と手島章斗、ベスの異母姉メアリー女王に丸山礼と有沙瞳といった、フレッシュな俳優が名を連ねている。中でもベス役の奥田と小南は、ともにミュージカル初主演。
この大役を前にどんな意気込みを抱いているのか、話を聞いた。
――まずは『レイディ・ベス』主演、タイトルロールに決まったお気持ちをお聞かせください。
奥田:決まった時は、嬉しさよりも今までに感じたことのないプレッシャーや不安といった感情が先にやってきました。ただ、作品を拝見した時にベスの人柄に惹かれ、さらに楽曲が素敵で「歌いたい」と思い、受けたくて(オーディションを)受けた役です。「この作品を頑張らなきゃ」という思いがすごく大きかったです。
小南:私は10年前にアンサンブルでデビューしました。そんな自分がまさか主演を務めて、日生劇場のゼロ番(真ん中)に立たせていただくことができるなんて思ってもみなかったので、すごく光栄です。また、主人公を演じるということは並大抵のことではないということを先輩方の姿を見て感じてきました。今まで支えてくださったスタッフさんや、お仕事で関わった方々すべての皆さんのお力なくしては、私はこの場に立っていないと思うので、皆さんへの感謝の気持ちも募りましたし、責任の重さを感じ「嬉しい」というよりも「大変だ」(汗)という思いが強いです。ただ、ベス役にと任せて頂いたからには、それを自信に変えて精いっぱい務めるしかないと根性が据わった気がします。

奥田いろは(乃木坂46)
――お二人とも喜びよりも責任感……とのことですが、周りの方はお喜びになったのでは? 特に小南さんは、お兄様(俳優の小南竜平さん)がお喜びになっていらしたのをSNSで拝見しました。
小南:はい。私は小池先生と初めてご一緒しますが、兄は『エリザベート』や『ロミオ&ジュリエット』など、小池修一郎先生と色々な作品でご一緒しています。
兄が築いてきた信頼があるということを改めて知って、その分の緊張もありますがとてもアットホームに小池先生のチームに迎え入れて頂きました。責任をもって、感謝を胸に務めることで恩返ししたいなと思っています。
――奥田さんも大役が続いていますが、主演となるとまた反響が違ったのでは。
奥田:私も「いつか」と夢を見ていましたし、ファンの方も同じように思ってくださっていたようでしたが、その「いつか」がこんなに早く叶うとは思ってもいませんでした。ファンの皆さんもすごく驚いていましたが、皆さん喜んでくださいました。一方でミュージカル界では私は新参者で、私のことを知らない方もまだまだたくさんいらっしゃいます。私はまだまだ自信はありませんが、私を信じて選んでくださった方がいるのですから、その方々に対し誠実に務めていきたいです。
――ダブルキャストで同じ役を演じますが、お互いの印象は?
小南:今日(※取材日)が初対面なのですが、ずっと拝見していました。先日の『FNS歌謡祭』もテレビで見ながら「可愛い~」と、画面に向かって手を振っていました(笑)。
奥田:嬉しい! 私は昨日、鏡に向かってはじめましてのご挨拶をする練習をしていたんですよ。でも先ほど、控室に挨拶に来てくださった時に、私、ちくわをもぐもぐしながら出てしまって……大後悔していて……。「ちくわの子」じゃなく、ちゃんとした子だと思われたいです……。
小南:待って、エピソードが可愛すぎる!(笑)。こんな可愛らしい方とダブルを務めるなんてなんか本当にすみませんという気持ちです。
奥田:こちらこそ、こんな綺麗なお姉さまと同じ役で嬉しいです。

小南満佑子
――ミヒャエル・クンツェさんの脚本・歌詞、シルヴェスター・リーヴァイさんの音楽・編曲の作品群は“クンツェ・リーヴァイ作品”と呼ばれ日本でもとても人気がありますが、お二人は初出演ですね。このコンビの作品に対してどんな印象がありますか。
奥田:憧れのミュージカル作品は、だいたい“クンツェ・リーヴァイ作品”です。まさか携われる日が来るとはと、びっくりしています。
小南:私は『エリザベート』が大好きで、宝塚版からビデオが擦り切れるくらい観ていました。『エリザベート』に出演していた兄が本当にうらやましくて、トートダンサーに欠員が出たらオーディションを受けたいとずっと言っていたくらいです(笑)。
それくらい好きですし、リーヴァイさんの作る楽曲は本当に荘厳で美しく、しかもその時代背景も感じさせてくれて、ぐっと物語の世界に引き込んでくれる。いつか携われたらと密かに思っていたので、今回その願いが叶ってとても嬉しいです。
――オーディションで役を掴んだそうですが、オーディションはどんな内容で、どんな思いで受けられましたか。
奥田:私はオーディションを受けると思うだけで緊張してしまうタイプなので「参加できるだけで、この場で勉強させていただくだけで得をした」「そこに結果がついてくれば嬉しいけれど、学ばせていただくだけでありがたい」という思いで受けました。オーディションでは『秘めた想い』を歌ったのですが、2度受けに行き、1度目は「ここはこう歌ってみてほしい」といった歌唱指導のようなこともしていただきました。私も勉強し、自分なりの解釈を持って、深い声を作っていったのですが「この曲のはじめの段階ではそこまではいかなくていい、曲の中で成長を表現して」というお話をいただいて、なるほどと思い、歌い方を変えて2度目に挑みました。
小南:オーディションのお声がけを頂いたこと自体、何かの間違いじゃないかと思いました。嬉しさと同時に驚きが強かったです。オーディションは本当に運とタイミングも重要だと思っています。何が正解かはいまだにわかりません。これからも分からないと思います。ただ、この実在したベスという女性の人生を生きるというところを大事にしなければ、彼女を理解し彼女の魂と対話する気持ちで挑まないと、と思いました。それくらい、生まれる前から壮絶な人生を背負っている人ですからね。だから彼女をまず知ること、勉強することからはじめ、片っ端から本を読んだり映画などを観た上で『秘めた想い』を歌いました。それがは本当に手助けになったと思います。この先、本番で演じるにあたっても、敬意をもって全身全霊で挑まないと天国から「いや、そうじゃない」と言われてしまいます(笑)。エリザベスご本人にも応援してもらえるよう、誇りをもって舞台上を生きたいなと思っています。

左から 小南満佑子、奥田いろは(乃木坂46)
――小南さんが「片っ端から映画を観た」とおっしゃいましたが、奥田さんはどうアプローチされましたか?
奥田:私も、実在した方を演じるのであれば、情報は入れられるだけ入れた方がいいと思っています。ですので映画や本をたくさん見ました。特に映画は、舞台と違って宮殿だったらリアルな宮殿が出てきますので想像しやすい。こういう場所で生活していたんだ、ということを視覚的に捉え想像を膨らませています。またビジュアルの多い子ども向けの本や漫画といったものも参考にしています。
――ベスという人物を現段階ではどう捉えていますか。またとご自身で共通するところ、似ているなと思うところはありますか。
奥田:ベスは作品の中でどんどん成長していきます。様々な葛藤がある中でたくましく生き抜く姿に心を打たれたし、お客様にとっても感情移入しやすいキャラクターだと思いますので、感情をぶつけて演じられたら。また私は好奇心がすごく旺盛で、そういうところはベスと近いのかなと思います。
小南:エリザベス女王という人は世界的に有名な方ですが、国も時代も私たちとは違うので、どこかかけ離れているような印象があります。でも、この作品では彼女が女王になるまでが描かれていて、生まれながらに背負った運命はあるけれど、本人は普通の人間であり、ひとりの女性です。思ったこと、やってみたいこと、見てみたいものが私たちと同じようにあるということがごく自然に描かれている。共感する部分がたくさんあると思うので、そこを丁寧に紡いでいきたいです。
似ているところは……私も割と責任感が強い方なので、そこかな、、、内心はわたわたしているのですが(笑)、任されたら「頑張ります」と肝が据わるところが似ているかなと思っています。

奥田いろは(乃木坂46)
――チラシビジュアルでは豪華な衣裳も身につけていらっしゃいます。着てみていかがでしたか。
奥田:これまで着させていただいた衣裳の中でも、非常に豪華な素敵な衣裳でした!物理的にも重かったですが、このドレスは物語で実際に着ける瞬間がやってきます。そこまでに、私自身もベスとしてもこのドレスにふさわしい人にならなければいけない、成長しなくてはいけないという重みを感じました。王冠も、ラストにかぶります。責任と同時に国も背負う。そういう重みを感じながらそのシーンを迎えられたらと思っています。
小南:これはベスが戴冠するときの衣裳で、衣裳の生澤美子さんがこだわってミリ単位まで調整してくださいました。そんなお衣裳を着れることがまず嬉しかったですし、やはり重厚感があるので、背筋が伸びるというか、伸ばさなくてはいけないドレスです。この衣裳を着る時、彼女が見た景色はどういうものなのかもとても興味深いです。王冠も非常に重かったです。いろはちゃんも言ったように、これは彼女にしか託されなかったものであり、いかにして彼女がクイーンとして選ばれ、その後40年イングランドを守り続けていったのか、そのことが世界にどんな影響を及ぼしたのかということが、この衣裳からも伝わる気がします。
この時代に女性が一人で国を引っ張っていくってやっぱりすごいこと。今、日本でも女性が初めて総理大臣になり、そのことが「すごい」と言われている中、この時代だったらどれだけすごかったんだろう、、、彼女の精神力は計り知れないなと思います。
現代とシンクロするところも沢山あると思うので、この作品を通して、前を向いて自信を持って歩いていけるようなメッセージをお届けできたら嬉しいなと思います。

小南満佑子
――最後に『レイディ・ベス』上演に向けて、意気込みをお願いします。
奥田:私はこの『レイディ・ベス』を観た時に、ベスの生き方や人としての魅力はもちろん、楽曲の素晴らしさ、世界観すべてに心を打たれました。ベスは若いながらに色々な壁にぶちあたり、でもくじけながらも強く信念をもって生きていきます。観てくださる方にもそんな姿をお届けできたらと思います。歌に関してはお稽古に入る前から訓練を重ね、役作りも自分なりにすでに始めていますが、共演者の方との対話の中で生まれるものも多いと思いますので、そこも楽しみにしています。ぜひ劇場で、この世界観を浴びてくださったら嬉しいです。
小南:2014年に初演され、2017年の再演を経て、待ち望まれた再々演だと思います。
本当にたくさんの方に愛してくださっているこの作品でベスとして生きられることを嬉しく思います。初演は花總まりさんと平野綾さんが演じていましたが、私は初舞台の『レ・ミゼラブル』で綾さんとご一緒しており、とても可愛がっていただきました。綾さんからは「この役を満佑子ちゃんに引き継いでもらえることが嬉しい」と温かいメッセージをいただいたので、花總さんと綾さんがお作りになったこの『レイディ・ベス』を、新しいキャストでどう新たに作り上げていくのか、私も楽しみでなりません。
ベスが何を思い、何を希望として歩んできたのかというものを、ぜひ劇場に来て体感していただきたいです。劇場でお待ちしております。
《奥田いろは》ヘアメイク=高橋稚奈/スタイリング=菅野 悠
《小南満佑子》ヘアメイク=美舟(SIGNO)/スタイリング=大野紗也
取材・文=平野祥恵 撮影=奥野倫
公演情報
ミュージカル『レイディ・ベス』
脚本/歌詞 ミヒャエル・クンツェ 音楽/編曲 シルヴェスター・リーヴァイ
演出/訳詞/修辞 小池修一郎(宝塚歌劇団)
製作 東宝株式会社
出演者
レイディ・ベス(Wキャスト)奥田いろは(乃木坂46)/小南満佑子
ロビン・ブレイク(Wキャスト)有澤樟太郎/手島章斗
メアリー・チューダー(Wキャスト)丸山 礼/有沙 瞳
フェリペ(Wキャスト)内海啓貴/松島勇之介
シモン・ルナール 高橋健介
スティーブン・ガーディナー 津田英佑
キャット・アシュリー 吉沢梨絵
アン・ブーリン 凪七瑠海
ロジャー・アスカム(Wキャスト)山口祐一郎/石川 禅
粟野史浩 飯作雄太郎
須田遼太郎 加賀谷奏音 小林諒音
安部三博 飯塚萌木 伊宮理恵 大竹萌絵 風間駿太朗 黒沼 亮 相良飛鷹
澤田圭佑 柴田実奈 Taichi 寺岡拓海 畑中竜也 春乃ひめか 廣瀬孝輔
政本季美 松浪ゆの 丸山泰右 光由 宮内裕衣 山下麗奈 山田 元 山田定世
リトル・ベス(Wキャスト)浅利香那芽/横溝陽音
リトル・メアリー(Wキャスト)上條日菜/馬場音羽
(五十音順)
【日程・会場】
東京公演 2026年2月9日(月)~3月27日(金)日生劇場一般前売開始:2026年1月10日(土)
料金(全席指定・税込):平日 S席 15,000円、A席 10,000円、B席 5,000円
土日祝日・千穐楽 S席 16,000円、A席 11,000円、B席 6,000円
【日程・会場】
福岡公演 2026年4月4日(土)~13日(月)博多座
愛知公演 2026年5月3日(日)~10日(日)御園座
