石川県の化粧品メーカー「ルバンシュ」。社名兼ブランド名は、フランス語で「復讐(ふくしゅう)」を意味する。このインパクトのある名には、創業時、代表の千田和弘氏が当時の化粧品業界に対して抱いた憤りと、「うそ偽りのないものを作りたい」という揺るぎない覚悟が込められている。創業から35年、独自の哲学を貫き、日本の化粧品業界に一石を投じ続けている同社の思いに迫った。(SDGs・美容ライター/継田理恵)
【写真】「食品由来の成分を使用した口紅」や「兼六園の花酵母エキスを用いた保湿シートマスク」
「イメージで売る」業界への疑問から始まった挑戦
千田氏が23歳のころ、父親が経営する食品の研究会社で研究員として在籍していたときに、取引先のサプリメント販売会社が化粧品販売部門の新設を検討していた。意見を求められた千田氏は、当時人気だったドラッグストアのアロエクリームを調べ、大きな違和感を覚えたという。
「ドラッグストアで売れ筋ベスト3のアロエクリーム製品は、クリームの色がどれも緑色でした。しかし 配合量を分析したところ、アロエはごく微量。緑色は着色料によるものでした。『化粧品はイメージだけで売っているのではないか』と、業界に対する不信感を覚えました。
うたい文句と実際の配合量のギャップへの疑問が、私の創業の原点です。化粧品業界に一石を投じたい思いを胸に父の会社から1990年に完全に独立し、会社名を『ルバンシュ(復讐)』に決めました」
「口に入れても安心」を実現する製造哲学
食品会社をルーツにもつルバンシュの製品開発でもっとも重要なのは、「口に入ってしまっても安心」という考え方だ。千田氏は、当時主流だった石油系防腐剤のパラベンではなく、食品で使われる天然由来の防腐剤にこだわった。
「天然由来の防腐剤での開発を試みましたが、これが最初の壁でした。天然の防腐剤は安定性に課題があり、化粧品の下請け会社に製造を依頼しても、天然の防腐剤を使用した製品の製造にどこも難色を示したのです。
断られ続けた結果、自社での製造を決意しました。手持ちの資金が十分にないなか、工場建設と資金調達に奔走。『今の困難さえクリアすれば、誠実な化粧品を作ることができる』と信じて進みました」
天然防腐剤の開発は試行錯誤の連続だった。父親の会社で培った食品の防腐剤に関する知識を生かしつつ、化粧品に使える原料を模索。創業前から開発を始め、製品が世に出るまで約2年を要した。
「当初、天然由来の防腐剤だけを使用するとカビが発生するなど、抗菌力の確保に苦労しました。また一般的な防腐剤パラベンは、幅広い菌種に作用する万能型であるのに対し、天然由来の防腐剤は特定の菌種への対応に限られるという課題がありました。
そこで、植物由来成分を独自に組み合わせ、防腐機能を持たせる道を模索したのです。最初に開発したのは、カミツレとローズマリーの組み合わせでした。
研究は現在も続いています。ダイコン発酵液など、さまざまな天然由来原料を検証し、においの少ない防腐剤を使用しています」
こだわりは防腐剤だけではない。乳液やクリームに必要な界面活性剤や乳化剤にも、食品にも使える成分を選んできた。リップやハンド製品には、大豆レシチンやステアリン酸グリセリル、ラウリン酸スクロースといった食品基準の原料を用いている。そのほかの製品にも天然由来の乳化剤を使い、心地よさを追求している。
