作家・ライターとして「現代のカップルが抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。人間関係が複雑化する現代において、男女間の問題もまたしかり。それぞれのケースを検証してみましょう。
今回お話を伺うのは、48歳女性、結婚15年の夫と穏やかに暮らしていた真理さん。夫婦仲は落ち着いていて、子どもはおらず、ふたりで外食を楽しんだり、愛犬を溺愛する日々を送っていたそうです。
しかし2025年のはじめ、大事件が勃発します。それは、ある1本のYouTubeがきっかけでした。

取材者プロフィール真理さん(仮名):48歳、パート主婦。夫と愛犬と暮らす。
主婦、布団の中で地下アイドルを知る
「最初は軽い気持ちだったんです。YouTubeを寝る前に見ていて『あれ、かっこいいかも?』って。きれいな男の子が、テンポよく面白い話をしているなと思いました」
そう前置きしてから、真理さん(48歳・仮名)は遠い目になりました。結婚15年目。夫と犬と穏やかな日々を送っていて、その暮らしにとっても満足していたそうです。数年前に大きな病気をして、それ以来、正社員を辞めてパート勤務をしているという真理さん。健康のありがたみを噛み締め、日常のささやかな楽しみを愛でて、平穏に暮らしていました。
しかし、そのYouTubeを見た夜から、心に小さなさざ波が立ったといいます。きけば、真理さんは10代の頃、いわゆる「バンギャ」をしていたとか。バンギャ=バンギャルとはバンドの熱心なファンの意で、ライブハウスに通い、出待ちもしていた経験があるそう。
「だから、推すという感覚自体は知っています。でも対象はずっと音楽であって人じゃなかった。王道アイドルにはまったく興味がなかったんです。かろうじて全員認識できるのはSMAPくらいでした。
それなのに、YouTubeで見かけたカッコいい男の子たちの動画を一本見て、次を見て、また次を見て。気づいたら、真夜中になっていて、チャンネル登録をしていました。昔は音楽にちょっとうるさかった私からすると、彼らの歌は本当にトンチキだったんです。でもなぜか頭から離れない。口ずさんでしまう。気づいたら、また再生している。これは好きかもって。その瞬間、なんとなくまずいドアを開けた感じがありました」
地下アイドルについて、真理さんはそれまでいい印象を持っていなかったといいます。
さて、そもそも地下アイドルとはどういうひとたちを指すのでしょうか? 筆者も遅まきながら調べてみました。反意語と思しき「地上アイドル」はおそらくテレビで毎日見るようなボーイズグループのことでしょう。
調べてみると、メジャー事務所には所属しておらず、地上波テレビ出演などはほぼなし。SNSとライブを中心にして発信をしているアイドルたちのことを「地下アイドル」というようです。
彼らのおもな収入源は「チェキ券」「お話会チケット」などライブ後のコンテンツ。例えば1枚1000~1500円程度の「チェキ券」を買うと20秒ほどスタッフの監視のもとでチェキと軽いトークができる、と真理さんが教えてくれました。
「地下って聞くと、なんだか怖いし、ちょっと胡散臭いしでまったく興味がありませんでした。そのYouTubeを見てから調べてみると、私が興味を持ったアイドルの場合、是非はともかくシステムは明快でした。ライブ後にチェキ、数十秒の会話、その時間を買う仕組みです。まあ、地下アイドルがホストっぽいって言われるのもわかるなと思いました」
そもそも地下アイドルの定義とは?
