8,000m峰のような過酷な環境下での行動時も使用できる、耐久性と品質で知られる「Mountain Hardwear(マウンテン ハードウェア)」。1993年、アメリカ・カリフォルニア州バークレーで誕生して以来、数々の革新的なアイテムを生み出してきた、アウトドアウエアのパイオニア的存在である。
そんなMountain Hardwearが開発した、次世代のスタンダードとなるダウンジャケットについて、マウンテンハードウェア(商品本部所属)の近藤 伊織さんに話を伺った。
進化するダウンウエア──保温から“行動するためのダウンジャケット”へ
ダウンジャケットの歴史は、過酷な寒さの中での防寒を主な目的として始まった。2000年代にはファッション性が重視されるようになり、その後は軽量化が進んだ。さらに2010年代に入るとサステナブルな視点も加わり、ダウンウエアを取り巻く環境や用途は変化を続けながら進化している。
そうした流れの中でMountain Hardwearが着手したのは、単に保温するだけではない“行動できるダウンジャケット”の開発だった。
開発に10年を費やした「Stretchdown™(ストレッチダウン)」
一般的に、ストレッチ生地は伸びた際に生地の目が変化するため、ダウンジャケットにストレッチ生地を使用するという発想はこれまでほとんどなかった。
そうした常識にあえて挑戦したMountain Hardwearが開発したのが、「Stretchdown™(ストレッチダウン)」だ。ここからは、その開発背景について詳しく話を聞いていこう。
「従来のダウンジャケットは、ダウンパック[1]に羽毛を詰め、ステッチで区切っていく製法が一般的でした。その場合、ステッチの針穴から雨風が浸入したり、ダウンが抜け出してしまったり、ステッチ構造はストレッチしにくく、動きが制限されてしまうという課題がありました。
近年では、保温性を確保しながらも行動しやすさを重視した『アクティブインサレーション』という考え方が注目されていますが、その考え方もなかったような時期から“行動できるダウンジャケット”を開発したいという思いがあり、Stretchdown™の開発がスタートしたそうです。
従来のステッチ構造からまったく異なるアプローチを採用することで、ダウンジャケットの常識を覆しました。
Stretchdown™は、表地と裏地を特殊な機械で直接織り合わせる独自構造を採用。針穴をなくすことで雨風の侵入やダウン抜けを防ぎ、さらにストレッチ性を損なうことなく羽毛をしっかり封じ込めることに成功しました。
完成までには10年という歳月を要しまして、当社調べではありますが、織りの構造そのものに着目してダウンジャケットを開発した例は、おそらくこれが最初ではないかと考えています」
