
このカットを一目見ておかしいところを的確に指摘できる人はどれほどいるだろうか。拡大してディテールをつぶさに観察すればある程度はその不自然さに気づくことができるかもしれないが、PCやスマホで一瞥する限りでは、Penに掲載されているファッションページの1カットか何かと思うのではないだろうか。
実はこのカット、アドビの生成AIを使って、いち編集部員が制作したカットだ。どこからどこまでが生成AIを使ったものなのか、これもまた正確に指摘することは困難だろう。
—fadeinPager—
東京の街角で撮影したカット。まずは右の人物の服装を変えてみる。
背景にするのは、スペイン・ビルバオで撮ったカット。
今回使用したのは、Adobe Photoshopと、Adobe Firefly。Photoshopは画像編集アプリとしてお馴染みだが、昨今、生成AI機能を積極的に搭載し、その進化は目覚ましい。また、Adobe Fireflyは、生成AIに特化したアプリで、PCではブラウザ上で動き、スマートフォンではiOS、アンドロイドともにアプリがリリースされている。
今回のカットは、ご覧の通り、人物カットと背景を合成したもの。驚くべきは、その服装だ。手順としては、まずモデルのカットをFireflyにアップロード。右のモデルSOTAさんの服装を変える指示のプロンプトを入力する。今回は、
上着をグレーのコートにし、パンツを太めのスラックスに変更してください
と入力してみた。するとモノの数十秒で指示通りの服装に着替えさせることができた。
—fadeinPager—
左の画像をアップロードし、モデルの服を着替えさせるプロンプトを入力して実行すると右のように指示通りの服装になる。ちなみにAdobe純正のAdobe Firefly以外でも、設定でGeminiのNano BananaやOpen AIのGPT Imageも選択し使用することができるが、商用利用ならFireflyが安全だ。
1クリックで背景に馴染ませる、Photoshopの「調和」機能
Fireflyで着替えさせることに成功したら、次はその画像をダウンロードし、Photoshopで開く。画像下にある「背景を削除」ボタンを押せば、極めて正確に人物だけを切り抜いてくれる(切り抜くことを見越して、撮影時にはできる限りシンプルな背景を選んでおきたい)。
次に、切り抜いた人物を合成したい背景に配置。当然このままでは人物と背景のエッジは不自然で、光のあたり具合などもすぐに合成とわかる出来栄えだ。
そこで活用したいのが、Photoshopの新機能「調和」だ。今回のPhotoshopのアップデートの中でも特に注目される機能で、その名の通り、1クリックで周囲の環境に馴染ませるような調整を行ってくれる。人物画像の下部にそのボタンが配置され、クリックすれば十数秒で3パターン、背景に馴染ませた画像を提案してくれる。すると冒頭のような、自然なカットが完成する。
背景となる環境が、どのような光の当たり具合なのか、周囲の状況から判断し、人物にも反映させる。足元にも自然な影を落とし、美しく周囲に馴染んでいるのがわかる。
写真選びなどに神経は使うものの、合成作業や着替えにかかる作業はほんの数分しかかからなかった。

切り抜いた人物カットを背景に配置すると、下部に「調和」ボタンが出現する。人物を配置しただけではもちろん不自然なままだが、「調和」ボタン一つで自然なカットが完成する。調整後のカットが、記事冒頭の写真となる。
—fadeinPager—
静止画が生き生きと動き出す、Adobe Fireflyの動画生成
Adobe Fireflyの機能でさらに驚くべきことは、動画生成機能だ。静止画から動画を生成するという機能で、元の画像を指定できるぶん、かなり意図に沿った動画を制作することができる。
同じく東京で撮ったモデルAMEさんをスペインのビルバオで撮った写真と合成したカットをもとに、動画を生成してみよう。
まずはブラウザ上のAdobe Fireflyの「動画を生成」モードを選択。するとベースとなる画像をアップロードできるようになる。起点となる画像のほか、もう一つ画像をアップすれば、最後のシーンを指定できる。この際、なるべく同じ背景を使うと、より自然な動画を作ることができる。
こちらも東京で撮ったモデルカットを、スペイン・ビルバオで撮ったカットに合成。微妙な段差の階段を自然に登らせることができるか?
元となる画像をアップロードし、プロンプトを入力して「生成」ボタンをクリックするだけで動画が生成される。
プロンプトには、
人物が階段を上がり、左にフレームアウトしていく
と入力してみた。すると1分前後で5秒の動画が完成。モデルが足元の緩やかな階段を自然な動きで登っていく。カメラはそれに合わせてモデルを追う。最後には指示通り左側にモデルがフレームアウトしていく。モデルの顔つきがやや変わってしまうものの、人間としての動きや背景が流れていくさまは驚くほど自然だ。写真に写っていない部分も違和感なく生成されており、極めて高いクオリティと言えるだろう。
生成AIによる動画の作成はこれまで、プロンプトでゼロから作り出すのが主流だったが、このようにベースとなる画像を指定して作成できるのはかなり便利なポイントだ。
さらに、Fireflyではサウンドトラックの生成も可能。完成した動画をFireflyにアップすると、動画の雰囲気や内容をAIが解析し、自動でお薦めのプロンプトのキーワードを表示してくれる(現状は英語のみ)。それを選択したり削除したりしてより精度を高めていく。最終的にサウンドトラックを4パターンほど提案してくれ、好みのものを動画につけた形でダウンロードが可能となる(以下の動画は、4つのモデルカットと世界各地4箇所でのスナップ写真を合成し、動画化したものを繋げて制作した)。
@pen_magazine アドビの生成AIで動画を作成! この動画は、4つのモデルカットと世界各地4箇所でのスナップ写真を合成し、動画化したものを繋げて制作したもの。詳細は、Pen Onlineにて。 https://www.pen-online.jp/article/020412.html #PR ♬ オリジナル楽曲 – Pen Magazine
今回撮影したモデルのカット(しつこいようだがすべて静止画だ)を使って、動画を生成した。背景は、スペイン・ビルバオのほか、長崎の軍艦島、ポルトガルのファロ、ニューヨークのマンハッタンで撮影したものをそれぞれのモデルカットを合成して制作した。
今回アドビの最新生成AIツールを使ってみて、かなりの精度で、ざまざまな作業を自分一人でもできる可能性を感じることができた。あらゆるクリエイティブがあらゆる人にとっても身近になりつつある今、アドビのツールがその牽引役であることは間違いない。
アドビ
Adobe Photoshop
https://www.adobe.com/jp/products/photoshop.html
Adobe Firefly
https://firefly.adobe.com/