スターバックス が初のファッション・ビューティー専任職を新設 飽和するコラボ市場で何を仕掛ける? | DIGIDAY[日本版] - Moe Zine

記事のポイント

スターバックスはファッション・ビューティー専任職を新設し、コラボ体制を強化している。

CEO主導で音楽やスポーツも含め、カルチャー回帰を軸にマーケティングを再構築している。

若年女性層を主要ターゲットに、ブランドの価値向上と文化的存在感の回復を狙っている。

スターバックス(Starbucks)は、カルチャーコラボレーションを通じてブランドを再活性化する継続的な取り組みの一環として、エルフ・コスメティックス(E.l.f. Cosmetics)からシニアマネージャーを引き抜いた。

ネイヴ・トレダノ氏が、スターバックスのファッションおよびビューティー担当シニアマーケティングマネージャーとして入社した。

スターバックスはこれまでも、ファッションやビューティー分野を含むコラボレーションに携わる社員を抱えてきたが、今回のように専任でこの領域を統括する役職は初めてであり、同社がこうしたパートナーシップにこれまで以上の重きを置いていることを示すものだ。

エルフ・コスメティックスでは、トレダノ氏はスタンレー(Stanley)やリキッド・デス(Liquid Death)といった話題性の高いブランドとのコラボレーションを担当していた。

LinkedInへの投稿で同氏は、「自分の最大の情熱を組み合わせ、スターバックスブランドのためにカルチャーやファンダム、話題性のある瞬間を生み出していく」と述べている。

トレダノ氏の役職はブランドアクティベーションチームに属しており、同チームはスターバックスのブランドエンゲージメント、パートナーシップマーケティングおよび体験担当バイスプレジデントであるキャンディス・ベック氏が率いている。

ベック氏は7カ月前にヤフー(Yahoo)のクリエイティブ・ラボ(Creative Lab)からスターバックスに加わり、それ以前はチポトレ(Chipotle)でソーシャルおよびインフルエンサー担当ディレクターを務めていた。

CEO主導で進む「カルチャー回帰」を軸にした再建戦略

2024年9月に最高経営責任者に就任したスターバックスのブライアン・ニコル氏は、「刷新したマーケティングアプローチ」によって再びカルチャーの中心に戻ることが、「バック・トゥ・スターバックス(Back to Starbucks)」と名付けた再建計画を実行するうえでの最優先事項のひとつだと述べている。

そのためスターバックスは、ファッションやビューティーに限らず、音楽やスポーツといった業界横断のカルチャーモーメントにより深く寄り添う姿勢を強めている。

直近の会計四半期における北米の既存店売上高は横ばいだったが、前年に報告された6%減からは改善している。

スターバックスとファッション・ビューティーの親和性

ファッションやビューティーとの関わりは、程度の差こそあれ、長年スターバックスのDNAの一部であった。

グローバルブランドおよび成長戦略コンサルティング会社であるエルーム・グループ(Elume Group)の創業者兼CEOであるユーニス・シン氏によれば、もっとも基本的なレベルでは、誰がどのコーヒーブランドを持ち歩いているかは、履いている靴や持っているハンドバッグと同様に「ソーシャルシグナリング」の一要素だという。

過去から続くコラボ実績と最近の拡張

また、米国最大のコーヒーチェーンであるスターバックスは、コラボレーション相手を選ぶ立場にも長らくあった。2019年には、アジアの店舗向けにダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)と限定マーチャンダイズのラインで協業している。

さらに2023年には、ファッションデザイナーのブランドン・ブラックウッド(Brandon Blackwood)とスリング型ボトルバッグのラインを展開した。

しかし、ここ数カ月でその提携の規模と範囲は拡大している。

NYFWからオリンピックまで広がるカルチャー連携

スターバックスは、ロゴから着想を得たカスタムクチュールドレスをデザインするため、ザック・ポーゼン(Zac Posen)と組み、ニューヨーク・ファッション・ウィーク(New York Fashion Week)に登場した。

さらに、アメリカ・ファッション・デザイナー協議会(Council of Fashion Designers of America)が主催するファッションウィークのキックオフディナーなど、ほかのイベントの開催やスポンサーも務めた。

これらニューヨーク・ファッション・ウィークでの施策は、エグゼクティブコンサルタントのアナ・アンジェリッチ氏が主導したと、WWDは報じている。

5月には、スターバックスはファッションブランドのファーム・リオ(Farm Rio)と、ブラジル、ラテンアメリカ、カリブ地域で限定マーチャンダイズのラインを展開した。

また、ロサンゼルス2028年オリンピック・パラリンピック競技大会および米国代表チームの公式コーヒーパートナーにも就任している。さらに、一部の店舗ではテイラー・スウィフトの「ザ・ライフ・オブ・ア・ショーガール(The Life of a Showgirl)」のグローバル・リスニングパーティーを開催した。

コラボ成功の条件と「予想外」が難しい時代

消費者戦略コンサルティング会社であるコンシューマー・コレクティブ(Consumer Collective)の共同創業者兼マネージングディレクターであるアリソン・コリンズ氏は、「成功するコラボレーションとは、人々が欲しがる商品を生み出すだけでなく、話題を生むもの」だと語る。

たとえばブラックウッドとのコラボレーションについては、「かわいらしく、実際に意味のあるプロダクトだった」と評価している。

一方で彼女は、最良のコラボレーションのなかには予想外のものがあるとしつつも、「今の時代では、もはや何も予想外ではない」と指摘する。

コラボレーションがより一般的なマーケティング手法となるなかで、飲料ブランドが紙おむつブランドと組んだり、デオドラントブランドがコーヒー会社と提携したり、ほぼすべての食品・飲料会社が独自のリップバームを持っているような状況になっていると、シン氏は述べた。

若年女性層と「格上ブランド」戦略の行方

今後のコラボレーションが、スターバックスを再びカルチャーのなかでより大きな存在に押し上げるうえでどれほど成功するかは、どの顧客層を狙うかに左右されると、コンサルタントらは語る。

ファッションやビューティーに関心のある若い女性は、「何がクールとされるかにおいて非常に大きな文化的影響力を持っている」とシン氏は述べ、スターバックスがより多くのコラボレーションでこの層を狙うのは理にかなっていると指摘する。

同氏は、16歳の娘とその友人たちが、最近のスターバックスとパジャマブランドのローラー・ラビット(Roller Rabbit)とのコラボレーションに熱狂し、欲しい限定カップを探して地元のスターバックスを巡っていたと語った。

そして、ファッション業界とより多くの取り組みを行うこと自体に大きな利点があると、コリンズ氏は言う。

「スターバックスは格上のコーヒーブランドであるべき存在であり、ファッションにはもともとそうした格の高さが内包されているのである」。

[原文:Starbucks hires first-of-its-kind role heading up fashion and beauty collabs]

Anna Hensel(翻訳、編集:藏西隆介)

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