40代・50代は美容医療の知識が少ない世代だった
格差が広がっているといわれる現代社会だが、ビューティー編集者としては、美容の知識やそこにかける情熱の格差も大いに気になる。先日もこんな出来事があった。
気のおけないママ友8人と食事をしていたのだが、子どもの話や仕事の話から、いつしか美容医療トークに突入。そこは美容編集者である私の出番ね……と思いきや、30代ママは私なんぞが太刀打ちできないくらいに詳しかったのだ。かたや、さっさとクリニックに行くべき40代、50代(高齢出産が珍しくない昨今では、ひとくちに同級生ママといっても年齢の幅が実に広い)は美容医療に疎く、そのお説を拝聴するばかり。両者の間には、美容医療リテラシーにおいて広大なルビコン川が横たわっていた。
だが、そんな大人世代こそ美容医療を受けるべきと教えてくれたのはアヴェニュー表参道クリニックの佐藤卓士院長だ。
「初診のときは不安そうにしていた方が施術を続けるうちに顔も気持ちも明るくなっていくのを見ると、肌悩みがQOLに与える影響を痛感しますね。それに、たとえば眼瞼下垂は視野が狭くなって日常生活に支障があるからと、オペ(挙筋前転術)が保険適用になっているほど。美容医療は美しくなるだけでなく、頭痛や肩こりが楽になる、日々の生活が快適になるための手段でもあります」
私はかねてから「美容医療≒ハウスクリーニング説」を唱えているのだが、自分でいい状態を保てるならばプロの手を借りなくてもまったく問題ない。毎日の掃除やスキンケアが基本であることにも異論はない。だが、経年劣化をリセットして気持ちよく過ごすのにプロのメンテナンスは欠かせないという意味で、どちらも同じくらい大切なのだ。

Cosmetologist examines the skin of the patients face through a magnifying glass, the specialist works with the frontal areayacobchuk
美容医療若葉マークの人はこれからまず始めてみよう
では、ビギナーは何から始めればいいか。自身もハードな治療はせず自然な美貌をキープしている松倉クリニック代官山の貴子院長は、初心者へのおすすめをこう語る。
「まずはIPLレーザーやピーリングといった肌質改善を1 〜 2カ月に一度。さらにリフト系レーザーを3 〜 4カ月に一度くらいのペースで受けるのが理想的。シミはレーザー一発で取れると思っている方も多いのですが、マチュア世代になると老人性色素斑・肝斑・脂漏性角化症などが混在しているので一度になくすのは難しく、段階的に少しずつ治療すべきですね」。これらはダウンタイムがほとんどない治療だが、たとえば注入をした部分はしばらく圧迫を避ける(うつぶせ姿勢になるマッサージ系はNG)、レーザー治療を受けるなら熱に弱いヒアルロン酸やボトックスの施術はその後に組み込むなど、日々の生活や治療における注意点はあるので事前にきちんと確認を。トラブルが発生したときのために、使う薬剤や量、機械の種類などもメモしておこう。
そして、こういった肌質改善をベースとしつつ、10年、20年といった長期的な治療イメージも持っておくのがおすすめだ。たとえば目の下の膨らみを取る脱脂は少量なら粘膜側から取るだけでOKだが、タイミングを逃すと緩んだ皮膚を切り取るので傷が目立ちやすくなる。また、眼瞼下垂の場合、額の力でまぶたを持ち上げるようになるので放置するほど額にシワが刻まれる。「いずれ」「そのうち」と先送りにせず早めにしたほうがいいものもあると頭の片隅に入れておこう。
「皮膚は年齢とともに伸びてきます。ハイフなどはその予防になりますが、実際に伸びてしまった皮膚は切り取るしかありません。眼瞼下垂のオペ、クマ取りの手術などはダウンタイムがありますが、一度やれば10年くらいいい状態を保てるのでやる価値あり」(佐藤院長)。「シミ取りやリフト系のメンテナンスをアラフォーで始め、40代でゆるみを感じたら糸リフトや脱脂を。50代で眼瞼下垂オペもしくは下眼瞼のシワ取り手術、60 〜70代でフェイスリフト、が着地点ですね」(貴子院長)
