
©マイナビ TGC 2025 A/W
20周年を迎えたTGCには、変わらず話題のブランドが参加し続けている。10年間にわたり参加し続けているのがWEGOだ。オンワードグループ入りしてからも継続中。新規では今春からZ世代向け注目企業のyutoriが、今秋からK-FASHOINを手がける韓国大手百貨店のHYUNDAI(ヒョンデ)とそれをサポートする韓国ファッション協会が参画している。各者はTGCの何に魅力を感じ、TGCを通じて何を発信しようとしているのか?
(前編はこちら)
WEGO園田恭輔社長「TGCのメディアパワーと、キャスティングを含めた独自の見せ方が魅力。半歩先の見せ方を意識」
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今、デジタルやSNSなど数々のプロモーション手法がある中で、なぜTGCに参加することを選んだのか? WEGOの園田恭輔社長は「まずはやはりメディアとしてのパワーがあることが大きい。普段なかなかご一緒できない演者の方々をキャスティングしていただけることもあり、服やブランドを他とは違ったTGCならではの見せ方が出来るからだ。10年以上の付き合いになるが、ずっとこの部分は変わっていない」と語る。
今年20周年を迎えたTGCが日本のファッション業界に与えた影響については、「振り返ってみて、あらためて感じるのは、メディアやバイヤー、そして、芸能人やモデル、インフルエンサーといった“表に出る方”しかリアルに見ることができない業界関係者向けのコレクション/ファッションショーではなく、ファッション・エンタメに興味のある人、見たい人なら(チケットを買えば)誰でも見に行けるエンターテインメントを作り上げられた先駆けだ。今、『日本を代表するコレクション/ファッションショーといえば?』と尋ねたら『TGC』と答える方が大多数では!?それが“答え”だと思う」。
そんなTGCでステージの効果を高めるために、演出やスタイリング、ECやSNS連携などをどのように工夫しているのか?「着用アイテムをSNSやECですぐ見て『欲しい』と思ってもらえるように、スタイリング提案は一歩先ではなく半歩先ぐらいの感覚で、リアルに手に取りやすいアイテムや、コーディネートに取り入れてみようかなと思える着こなしを提案することを心がけている。また、静止画ではなくリアルな空間で〝魅せる“ことができる点に重きを置き、『WEGO』という世界観を視覚・聴覚で体感いただける演出を目指している。それが実現できるのは、クオリティーの高いTGCのクリエイティブ力があるからこそだ」と園田社長。
11月22日に山口県にWEGO おのだサンパーク店をオープンし、日本の全都道府県への出店を達成した。「WEGOはファッションを通じて“自分らしさ”を表現する若者たちとともに歩んできた。ついに全国47都道府県すべてにWEGOの店舗を構えることができてとても嬉しい。地域ごとのカルチャーや個性を大切にしながら、今後も若者の“好き”を応援し、共に新しい価値を創り出していきたい」と語る。
yutoriの片石貴展社長「これだけの熱狂を生み出せるのはTGC以外ない」「数字への貢献も大きい」
片石貴展yutori社長(左)と子会社YZの土田天晴執行役員
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yutoriは、2025年3月の「TGC 2025 S/S」を皮切りに、同年4月の大阪・関西万博の機運醸成イベント、9月の「TGC 2025 A/W」と、今年に入って立て続けにTGCに参加してきた。9月に披露したのは「ナインティナインティ ガール(9090 girl)」「2002」「マリテ・フランソワ・ジルボー(MARITHÉ FRANÇOIS GIRBAUD)」の3ブランドだ。
若者向けのD2C型ブランドを多く展開するyutoriの片石貴展社長は、TGCの持つ独自の価値について、「TGCには圧倒的な集客力と、舞台裏を含めてTVやドラマで見た芸能界の華やかさがある。いろいろな所属の人々が一挙に出てステージを歩いて大きな話題をつくるというのは、TGCしか起こせないムーブメントだ。今は(人々の興味関心や行動が)デジタルからオフライン、リアルに移る流れがある中で、これだけの熱狂を生み出せる場所はTGC以外ない」と語る。
TGCのステージでは音楽や大画面での映像を含めた訴求力の強さも特徴だ。「ブランドを手がけているのは平均年齢22歳。キーマンであるディレクター陣も20代前半とTGCのショー参加ディレクターの中で最年少だ。90年代をまったく経験していない彼女たちがググったり雑誌などをめっちゃ調べて、Z世代の僕らからしたら新しくてカッコイイ、当時を知っている人たちには懐かしい感覚をムービーでも最大限表現することを意識した」。そして、「やりたいことが明確な分、ときにはわがままも言わせてもらったと思うが、若いディレクター陣の要望に対して、TGCチームは時間がない中でも最大限に実現しようと動いてくれて、エネルギーを感じたし、とても感謝している」という。ちなみに、ミュージシャン(yutoriくん)としても活動する片石社長は「前回の万博でも自身の曲を使わせてもらったが、9月のTGCでは最新楽曲を発表に先駆けてフィナーレで流すなど、いろいろな意味でお披露目の場として活用させてもらっている」とニッコリ。
そもそもyutoriがTGCに初参加したのは、平成ファッション&カルチャーのリバイバルをコンセプトに掲げるブランド「9090」から派生したウィメンズ向けブランド「9090 girl」を成長させたいという思いから。「もともと知名度はそれなりにあったが、『TGCに出たらこんなに数字が上がるのか』というぐらいインパクトがあり、yutoriのIR説明のトピックスになるほど、話題性のみならず売り上げ貢献度の大きさにも驚いた」と振り返る。来年1月に原宿キャットストリートに「9090girl」のフラッグシップストアをオープンする予定で、「今後もTGCの力をお借りして、加速度的にオフラインを伸ばしていきたい」と続ける。
目指しているのは、Y2Kを含めた平成ファッションをリバイバルさせ、細分化されたストリート、ヒップホップ、ギャルなどのジャンルの頂点にyutoriが立つ状況を創り上げることだ。また、9月のTGCでは、伊藤忠を通じて日本でライセンス展開する「マリテ・フランソワ・ジルボー」を披露した。フランス発のブランドが韓国でリブランドされ、日本に再上陸したもので、「KポップからKファッションが人気になっているが、日本のカルチャーが影響を与えている部分も大きい。だから、日本のカルチャーやファッションをもっと発信していきたいし、韓国ブランドが日本に進出する際には『yutoriと組めば日本の実態感のある流行を作って若者の支持を得られる』という立ち位置を狙っていきたい。それを自分たちだけでなく、TGCと関わりながら華やかさとして演出できたらこんなに嬉しいことはない。やはり、TGCは神様みたいな存在だから」とキッパリ。TGCのグローバル展開についても協力に前向きで、「TGCの世界進出も一緒に盛り上げられたらアツイよね。今後もTGCのステージを踏みしめられるように鍛錬を積みたい」と意気込む。
韓国ファッション協会「日本市場では『見て・体験する』オフラインの経験が重視される。TGCの接触機会は貴重」
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今回初めてTGCにスポンサードしたのが、韓国ファッション協会だ。「私たちはK-ファッションのグローバルな拡散と韓国ファッションブランドの海外進出を積極的に支援している。近年、韓国ファッションブランドの日本市場進出への関心が高まっており、実際に『見て・体験する』オフラインの経験が重視される日本市場の特性を踏まえると、消費者と直接コミュニケーションできるチャネルを戦略的に確保することが重要だと考えた。TGCは日本の10代~20代のカルチャーを中心に展開する代表的なファッションフェスタであり、単なるファッションショーにとどまらず、現場で消費者の反応を直接確認できるオフラインイベントである点に大きな魅力があるため、今回の参加に至った」と説明する。
今回のパートナーステージは同協会と現代百貨店の協業により実施された。「『ときめく、K-Fashion』をコンセプトに、日本の10代~20代の若い女性がK-ファッションに共感し、ブランドの感性がしっかりと伝わるようなステージ構成を目指した。ファッションショーには、それぞれ異なるコンセプトとストーリーを持ち、精力的に活動している4ブランドが参加した」。「オヘシオ(OHESIO)」「トリミングバード(TREEMINGBIRD)」「レスト&レクリエーション(Rest & Recreation)」「ザ・バーネット(The Barnnet)」で、「現在、流行発信地として知られる聖水洞(ソンスドン)や漢南洞(ハンナムドン)のオフラインストアを拠点に展開しており、韓国を訪れる日本人消費者の間で人気を集めている。ブランドの単なる露出にとどまらず、日本の消費者と直接触れ合い、その反応を確かめることができる貴重な機会となった」と振り返る。韓国ファッション協会はさらに、「TGCを皮切りに、今後の日本市場進出や流通拡大に向けた現地パートナーシップの構築など、持続可能な成長を目指した支援を計画している」と明かす。
近年の⽇本における韓国ファッションの状況をどう分析しているのか?「2023年には『3M』と呼ばれるブランド(『マーティン・キム(Matin Kim)』『マルディ・メクレディ(Mardi Mercredi)』『マリテ・フランソワ・ジルボー(Marithé François Girbaud)』)を皮切りに、多くの韓国ブランドが日本市場へ進出した。その後、K-ファッションの強みの一つであるトレンディなデザインを武器に、MZ世代を中心に急速に浸透している。特に、ポップアップストアなど日本市場に適した積極的なオフラインマーケティングを展開し、単なる流行にとどまらず、一つのカテゴリーとして定着しつつある。K-ファッションは、このような適切なローカライズ戦略と成功事例を基盤に、日本市場のみならず、グローバルファッション市場においても競争力を拡大していく予定だ」。
韓国ブランドの⽇本進出を成功させる秘訣については、「現在、K-ファッションはK-POPやK-ドラマなど韓国の文化コンテンツの人気を背景に、急速にグローバル市場を開拓している。日本のMZ世代は、ファンダム文化を軸にドラマの中のスタイルやK-POPアーティストのファッションを通じて新たなKトレンドに触れており、SNSやインフルエンサーのスタイルを真似たり関連商品を購入したりするなど、オンライン上でも急速に拡散している。このような流れは、韓国国内のソンス洞やハンナム洞など主要商圏のブランドオフラインストアへの来店につながっており、さらに日本現地では、ポップアップストアなどのオフライン戦略を通じて消費者と直接コミュニケーションを図り、ブランド価値を広めている。これは、韓国ファッションならではの効果的なコミュニケーション手法であり、K-ファッションの独自の強みであると同時に、日本市場での成功要因となっている」と分析する。
逆に解決しなければならない課題として、「K-ファッションは変化が速く、アクセスしやすいことが特徴だ。トレンドの変化に敏感で、それに伴って多様化する消費者のニーズにも柔軟に対応している。一方で、連続性に欠ける面や、トレンドへの依存度が高いという側面もある。韓国ブランドは単に『かっこいい』『かわいい』にとどまらず、K-ファッションという言葉がどのような雰囲気や感性、デザインを意味するのかを考え、持続可能な成長につながるしっかりとした基盤を築くことが求められる」と思慮する。
メディコトス「nugu」「TGCは日本市場を理解する上で非常に重要なリファレンス」
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HYUNDAIのグローバル展開をサポートし、日本でのマーケティングや運営などを担うのが、韓国発のファッションECモール「nugu(ヌグ)」を擁するメディコトス(MEDIQUITOUS)だ。2020年から日本で「nugu」を手がけており、成長・拡大に向けて2025年1月には日本のファッションEC「SHOPLIST」を買収。さらに、今年5月には現代百貨店が約30億円を戦略的投資を行っている。
TGCへの参加について、「日本は消費者のトレンド感度やブランドに対する期待値が非常に高い市場であり、現地消費者と直接つながるチャネルを確保することが何より重要だ。TGCは日本の若者層への圧倒的な影響力を持ち、リアルな消費者の反応を知ることができる唯一無二の舞台だ。さらに、現地モデルやインフルエンサーとのコラボレーションを通じて観客とのリアルタイムな交流が生まれ、ブランドの『ローカライズの可能性』を検証できる重要な場でもある。今回は韓国ファッション協会と現代百貨店の協業により4ブランドを披露したが、韓国ブランドが日本の消費者と直接触れ合い、現場での反応を体感できただけでなく、中長期的な日本市場参入に向けた実質的なテストベッドとして大きな価値を得ることができた」と振り返る。
韓国でのTGCの認知については、「現時点で一般消費者の間では直接的な認知度はまだそれほど高くない。J-カルチャーへの関心は依然として続いているものの、TGC自体が韓国のマスメディアやSNSで露出する頻度は多くないため、ファッション業界の専門家や関係者の間でのみTGCの影響力が共有されている状況だ」という。けれども、「業界関係者にとってTGCは日本市場を理解する上で非常に重要なリファレンスであり、代表的な大規模BtoCファッションフェスタとして認識されている。特に、ファッションとエンターテインメントを融合させた消費者体験の提供、日本のトレンドを牽引する独自のイベントとして高く評価されている。今回の参加による現地の反応や成果は、今後の韓国ブランドの日本進出における実質的な参考資料となるだけでなく、将来的に日本市場を目指す多様なブランドにとってもTGCが魅力的な機会として作用することが期待される」と分析する。
2025年9月19日には渋谷パルコ4階に日本1号店となる「ザ・現代グローバル(THE HYUNDAI GLOBAL)」の常設ストアをオープンした。「日本では東京を皮切りに、今後4年以内に5店舗を展開する計画だ。ECは日本のMZ世代向けスタイルコマース『nugu』で2025年12月に『THE HYUNDAI館(仮称)』のベータ版をオープンし、2026年には正式ローンチを予定している。これにより多数の韓国ブランドがグローバル市場へ進出できるプラットフォームを目指す」という。
日本市場に寄せる期待は大きい。「日本のファッション市場は約100兆円規模で、韓国の2倍以上の大きさを誇る。個性的で高品質なローカルブランドやグローバルブランドが積極的に参入しており、進出したいと強く思わせる大変魅力的な市場だ。さらに、K-POP、BEAUTY、DRAMAといったK-コンテンツの世界的な人気上昇はK-FASHIONへとつながっており、両国の体型や気候的な類似性も高いためローカライズが容易だ。一方で、K-FASHIONの現地競争力の強化や、変化の早いファッショントレンドへの対応、さらには海外進出時に必要となる多額の初期投資は大きな課題だ。これらの課題解決に向けて、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)や韓国ファッション協会など関係機関と連携しながら取り組んでいきたい」と決意を語る。
