(左)中野瑠美(なかの・るみ)「美的」編集長は大学卒業後、2000年4月に小学館入社。「女性セブン」編集部を経て、週刊誌、国際情報誌、単行本の編集に携わる。17年3月に「美的」編集部に所属。22年10月に編集長就任、23年10月からは美的ブランド室室長を兼任

(右)小林由佳(こばやし・ゆか)「美的.com」編集長は大学卒業後、2008年に実用系出版社へ入社。15年に小学館に中途入社後、広告局に所属し「美的」「Precious」などの女性メディアのデジタル広告セールスやマネタイズを担当。2年間の美的ブランド室兼務を経て、22年10月から現職

「美的」は2026年3月に創刊25周年を迎える。創刊以来、「『肌・心・体』のキレイは自分で磨く」を掲げ、美容をホリスティックに捉えた「キレイになる」方法を続けてきた。09年に立ち上げた「美的.com」、18年に創刊した「美的GRAND」と共に、今後も幅広い層に向けてビューティ情報を展開する。26年は25周年記念号を皮切りに、イベントや豪華な付録など、「25」にちなんだ多彩な企画・メニューを予定している

2022年にはメンズ美容コンテンツの発信を開始。市場の成熟とともに手応えを得ており、今後も強化を図る方針だ。同時期に立ち上げたキッズ美容の領域も拡大が続いている。40代以降がターゲットの「美的GRAND」と併せ、年齢や性別を問わず幅広い層へのアプローチを進めている。ジェンダーレスかつエイジレスに美容を楽しむ時代に、「『美的』をみんなのもとへ」を掲げ、多様なプロジェクトを展開する

読者の半数がYouTubeで美容情報を収集する中、「美的」も公式YouTubeで発信を強化。スキンケアやメイクアップ、美容トークなど、美容誌ならではの切り口で番組化を進めている。毎週水曜夜と金曜夜の週2回の定期更新でファンとの接点を拡大。ブランド各社からの問い合わせも急増しており、動画タイアップの事例も相次いでいる

小学館の美容雑誌「美的」は2001年の創刊以来、移り変わるトレンドの中でも“自分のための美しさ”という理念を軸に、ホリスティックな視点で美容を発信し続けている。26年に創刊25周年を迎えるにあたり、「美的」は次の時代に向けてどんな進化を目指すのか。中野瑠美「美的」編集長と小林由佳「美的.com」編集長にこれからの挑戦について聞く。

WWD:2001年の創刊以来、ビューティを取り巻く環境は大きく変わったが、その中で“変わらない美的の核”とは何か。

中野瑠美「美的」編集長(以下、中野):ビューティの捉え方は変わっても、創刊当時から発信している「『肌・心・体』のキレイは自分で磨く」というホリスティックな視点は変わっていません。美容を強要するのではなく、大前提は「美容でハッピーになる」こと。そこをブラさないようにしています。生活全体が美容であり、それぞれ自分の美を楽しめることこそ“美的らしさ”だと感じています。「美的」は、いまや男性やキッズにも向けたコンテンツを発信するなど垣根を越えて広がっていて、“みんなの美的”へと進化を遂げています。

WWD:読者層は。

中野:毎月読者のモニター会を開いてヒアリングしていますが、「美容が生きがい」と感じている読者が多い。「美的」は特にスキンケアに強いイメージを持たれていて、お悩みを解決できる教科書のような存在として捉えられています。20代後半になると悩みがより深刻になり、専門的な知識を正しく知りたいという層が増える傾向があり、そうした読者が「美的」を選んでくれています。現在の主な読者層は30代、特に30歳前後がコアです。一方、「美的GRAND」は40代の読者が中心で、年齢によって抱える悩みが異なるため、それぞれの媒体が自然に選ばれています。

小林由佳「美的.com」編集長(以下、小林):創刊当時から、“モテるため”ではなく“自分のため”にきれいになりたいという読者が多いのが特徴です。自分のモチベーションを上げるために「美的」を読む人も少なくありません。「美的.com」は雑誌よりも読者層が幅広く、20代から40代にまで読まれています。その中で31歳をコアターゲットに据え、その世代から幅広い層へと情報が届くよう意識しています。

WWD:信頼される美容メディアとして意識していることは。

中野:“カロリーをかける”ことです。新作情報などスピードが求められるカテゴリーもありますが、丁寧に取材の手順を踏んで手間をかけた企画ほどアンケートでも人気があります。カタログのような情報にも良さはありますが、フィジカルであることならではの強みを大切にしています。もちろんビジュアルの美しさも購入の動機になりますが、読後の満足感につながるのは、やはりカロリーをかけた企画です。

WWD:今年人気を集めた企画は。

中野:MBTI診断(性格特性テスト)のスキンケア版として企画した、「美的」オリジナルの“BSTI診断”が人気を集めました。16タイプの肌診断ができるコンテンツで、スキンケアに精通したライターと編集チームが一緒にチェックリストを作成しました。診断自体はAIでも作ることができますが、これまでの知見やリアルなトレンドを盛り込めるのは、人の手による編集ならではの強みだと感じています。

小林:「美的.com」ではタレントを軸にした企画を強化しています。美容メディアならではの視点で、例えばアイドルグループ結成直後の人に最初にインタビューを行うなど、これまで美容情報が発信されていない人物を追いかけたりしています。直近ではTBSの田村真子アナウンサーのメイクテクに大きな反響がありました。私たちはエンタメメディアではなく、美容メディアです。「美的」だからこそできること、美容のプロとして発信すべき視点は何かを常に考え、企画を重ねています。新進気鋭の人物と美容を掛け合わせることは、私たちが発信する意義だと考えています。

「美的とキレイはどこまでも続く」
変わらぬ情熱を胸に、25周年へ

WWD:毎回、豪華な付録も話題だ。

中野:小学館には学年誌の文化があり、付録で楽しむことはDNAにあります。「美的」も創刊号から付録をつけていますが、特にコロナ禍以降、店頭で試せない代わりに付録サンプルが支持を集めました。競合誌も付録をつけていますが、市場全体が活況であることはとても良いことだと感じています。サンプリングは美容文化の一部でもありますし、美容好きな読者は、本気でその製品を買いたいからこそ本気で試しています。ブランド側からも、付録で試して購入につながるケースが多いと聞いています。良い循環が生まれていると思います。

WWD:イベントも充実している。

小林:イベントは得意分野の一つで、読者を招待する大型イベントを数多く開催しています。ブランドの方からは「『美的』の読者が一番真面目」と言われることも多いです。トーク内容を熱心にメモされたり、ブランドブースで研究論文について質問されたりというエピソードをよく耳にします。イベントを通して私たち自身も、美容に真剣に向き合っている読者が多いことを実感しています。読者を招き、ブランドの方々にも直接見ていただける場があるというのは、とても価値のあることだと思っています。3月には関西初となる「あいたい美的」を阪急うめだ本店で開催し、1800人を招待しました。温かい雰囲気の中で開催でき、とても良い反応をいただいたので、来年の開催も計画しています。

WWD:来年は創刊25周年を迎える。

中野:「美的とキレイはどこまでも続く」というメッセージを込めて、一年を通して大小25の企画を準備中です。25周年にあたる5月号(26年3月発売)は節目の号として、従来の雑誌にはない華やかな特集を企画しています。紙媒体は縮小傾向にありますが、美容業界自体は非常に活気があります。「美的」ブランドが持つ複数のプラットフォームを通じ、読者、そしてクライアントの双方にとって価値のある企画をお届けできるよう取り組んでいきます。

「美的」(小学館) DATA
【MAGAZINE】創刊:2001年3月 発行部数:非公表
【WEB】月間UU:374万3000 月間総PV:1113万
【SNS】X:31万4000 Instagram:60万1000 LINE:166万5000 YouTube:13万5000 threads:11万 TikTok:4万 ※2025年9月末現在

PHOTO:SHUNICHI ODA

問い合わせ先
小学館
03-3230-5350

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