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AFP
掲載日
2025年11月28日
子どもは美容用フェイスマスクを使うべきでしょうか? 皮膚科医の答えは「ノー」ですが、TikTokのスキンケアやメイクのルーティンを見て育った新世代の子どもたちを狙う企業は増え続けています。
ドランク・エレファントはアルファ世代の消費者の間で人気です – Drunk Elephant
今月初め、カナダ人女優のシェイ・ミッチェルが支援する、3歳からの子どもを対象としたビューティーブランド「Rini(リニ)」がローンチされて以来、化粧品業界やネットの一部では話題騒然となっています。
「Puppy」「Panda」「Unicorn」と名付けられた「毎日用」を含む子ども用保湿フェイスマスク5枚セットは、同社ウェブサイトで約35ドル(30ユーロ)で販売されています。
米国発で成長中の別ブランド、Everedenは、プレティーン向けのフェイスミスト、化粧水、モイスチャライザーなどを販売し、年商1億ドル超だと主張しています。
15歳のアメリカ人YouTuber、セイリッシュ・マターは10月に自身のブランド「Sincerely Yours」を発表。ニュージャージー州のショッピングモールで行われたローンチイベントには数万人が押し寄せ、警察が増員対応する事態となりました。
フランス・ナント大学の研究者で、ウェブサイト「Cosmetics Watch」を共同運営するロランス・コワファール氏は、「子どもの肌には、歯磨き粉やシャワージェルといった日常の衛生用品と、日光にさらされる際の日焼け止めを除けば、化粧品は必要ありません」と述べました。
子ども向けの美容製品は、社会全体に広がる大きな潮流の一部です。ジェネレーション・アルファ(2010年から2024年に生まれた若者を指すマーケティング用語)の女の子の多くが、年上のティーンや母親世代に典型的なスキンケア、メイク、ヘアのルーティンを取り入れています。
なかでも早熟な層は「セフォラ・キッズ」と呼ばれるようになり(フランス発の人気ビューティーリテーラー「セフォラ」への言及)、TikTokやYouTubeの人気インフルエンサーをまねしようとしています。なかには7歳ほどの子もいます。
コワファール氏は、大人用の化粧品やクリームを使用する子どもは、その後の人生で皮膚アレルギーを発症するリスクが高く、ホルモンの発達を乱しかねない内分泌かく乱物質やフィトエストロゲンにさらされることになる、という研究結果を挙げました。
シカゴのノースウェスタン大学に所属するアメリカ人皮膚科医のモリー・ヘイルズは、TikTok上で美容ルーティンに関心のある13歳の少女になりすまし、数カ月にわたって調査を行いました。プロフィールを作成し、未成年が投稿した複数の動画に「いいね!」をすると、中国資本の同サイトのアルゴリズムによって、彼女と共同研究者のサラ・リガリのフィードは関連コンテンツで“飽和”するまで埋め尽くされました。
2人は最終的に、82の異なるプロフィールから合計100本の動画を視聴しました。ある動画では、子どもが14種類の製品を顔に塗布した後、焼けつくような発疹を起こしていました。別の動画では、少女が午前4時30分に起きて登校前にスキンケアとメイクを済ませると語っていました。
最も人気があったのは「Get Ready with Me」と題した動画で、ルーティンには平均して6種類の製品が使われ、しばしば大人向けのアンチエイジングクリームも含まれ、合計金額は平均168ドルに上りました。
「これらの動画の実態、とりわけ少女たちが使用している製品数の多さには衝撃を受けました」とヘイルズ氏はAFPに語りました。彼女の研究は6月、米国の学術誌『Pediatrics』に掲載されました。
Glow、Drunk Elephant、The Ordinaryといった、動画内で「過剰に登場していた」複数のブランドは、化学成分を多く含む競合製品に代わる、ヘルシーでナチュラルだと謳う代替品として自らを売り込んでいます。ヘイルズが分析した最も視聴された上位25本の動画に登場した製品には、小児の皮膚を刺激する可能性のある有効成分が平均11種類、最多で21種類含まれていました。
Rini、Evereden、Saint Creweといった新しい子ども向けブランドの主張は、ツイーンやティーンをより適切な代替品へと導くことにあります。「子どもは本来好奇心旺盛です。無視するのではなく受け止め、親が信頼できる安全でやさしい製品を」と、Riniの共同設立者であるミッチェルは、3,500万人のInstagramフォロワーに語りました。
ヘイルズ氏はこのトレンドの出現について「複雑な心境」だと述べ、若い女の子にとってより害の少ない製品を提供するという潜在的な利点は認めつつも、それらは「本当に必要ではない」うえ、「非常に高価で時間のかかる日々のルーティンを用いて肌の健康や美を保つべきだという、ある種の美の基準や期待を助長する」と指摘しました。
これらの製品は、「時間、お金、労力のより良い使い道から少女たちを遠ざける」危険性があるとも付け加えました。
フランス皮膚科学会の会員であるピエール・ヴァーブル氏は、子どもを美容ルーティンにさらし、さらに製品を売り込もうとすることには、心理的にも有害な影響があると考えています。「子どもに、場合によっては性的なニュアンスさえ帯びた、誤った自己像――『気分よくいるためには外見に気を配る必要がある“ミニチュアの大人”』――を与えてしまうリスクがある」と、同氏は今月パリで記者団に語りました。
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