女性グループのMVを特集したのは、11月14日(金)放送のJ-WAVE『THE PLAYBACK』(ナビゲーター:山田健人)。音だけでは完成しない世界で表現を続ける演出家の山田が、MVなどさまざまな“見る”を言語化するプログラムだ。

また、番組のPodcastが11/11(火)からSpotifyなどでスタートした。現在はエピソード0と、男性グループを特集したエピソード1を公開中で、毎週金曜日に更新される。

遊び感のある演出が特徴の『はちゃめちゃわちゃライフ!』

アソビシステム所属の7人組アイドルグループ・FRUITS ZIPPER。『はちゃめちゃわちゃライフ!』は10月15日に4枚目のシングルとしてリリースされた両A面シングル『はちゃめちゃわちゃライフ!/JAM』の収録曲で、アニメ『クレヨンしんちゃん』のオープニング曲となっている。監督はVFXやCGを駆使した映像を得意としているEPOCH所属のフィルムディレクター・大河 臣。振り付けを担当している槙田紗子はアイドルグループ・PASSPO☆の元メンバーだ。


山田:セットがジャケットのデザインということで、背景はご本人たちの担当の色味を生かすような、ビビッドな感じの衣装と混ざらないような色のバランス感で、ちゃんと本人たちに目線が行くようになっています。ホリ(ホリゾント)で撮っているんだと思います。ホリというのは白い何もない壁のスタジオに、こういうセットとかを作ってよく撮ったりするんです。だいたい四角いスタジオで、壁側を背景にして撮るんですが、このMVのメインシーンのところは角を背景にしています。全編を観て思ったのは、まずほとんどローアングルがないんだよね。基本は目線が目の高さよりもちょっと上ぐらいからのアングルです。

山田は高いアングルから撮影する意図を推察した。

山田:これはおそらく、私が勝手に言いますが、SNSとかでの「盛れアングル」じゃないですか。いまの時代はみんな上からのアングルが好きなイメージがあって……これはイメージで語っているので違っても怒らないでくださいね。とにかくローアングルがほぼない、上からが基本。だから角を使う意味もなんとなくわかります。奥行き感に対して立体的に見える、フォーメーションとかもよく見えるし、いいよねと。ローアングルだと圧が出て、サスペンスやホラー映画でもお化けや怖い人が出てくるときにローアングルが出てきたりします。人を大きく見せる効果がある。どちらかというとグループですから、フォーメーションとかも大事でしょうし。あとはなにより盛れるかどうかが、きっと命じゃないですか。いわゆる上目遣いというやつか。「キュン」系の『はちゃめちゃわちゃライフ!』系のやつだなと。ここまでこだわって、そのアングルばかり選ぶんだ、というのも僕としては新鮮でした。

山田はライティングについても専門的に考察した。

山田:ライティングも基本的には盛れの黄金(比率)のセットかなと思います。トップで“ベース”を作って、手前の下手か上手から順光で当てるみたいな。いわゆるスタジオって電気をつけないと真っ暗なので、環境自体の光量を担保するんです。画的なものじゃなくて、それのために天井にある程度(照明を)吊っているんですね。画には絶対映らないようなところ。それを“ベース”とよく言ったりするんですが、基本的な真上からのライティングで“ベース”があって、それに対して手前、このビデオでは下手、左側かな。左手前の高いところから当たっています。

山田は真上に加えて正面から照明を当てる理由やメリットを説明した。

山田:真上からだけだと、たぶん鼻のラインとか顔の掘り(の深さ)によっては顔に影が乗っちゃうので、正面からビューティーなライトを当てている。全員が均一にちゃんと見えますよね。逆にのっぺりとも言えると思いますが、画のなかにはそんなに陰影がないというか。だけど、こういう世界観でやってらっしゃるので、正解ですよね。みんながかわいいになっているということです。ひさしぶりにこういった映像を拝見しました。『はちゃめちゃわちゃライフ!』という感じがちゃんとしました。

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