ホーム > インタビュー&レポート > 「韓国ではJ-ROCKのような素敵な曲を作るアーティストが
いないので、その時代を僕が作ろうと思った」
“J-POP×HIPHOP×ロック”的なトラックに
エッジボイスが刺さる韓国発の新世代
Nunegashi インタビュー

「韓国ではJ-ROCKのような素敵な曲を作るアーティストが
いないので、その時代を僕が作ろうと思った」
“J-POP×HIPHOP×ロック”的なトラックに
エッジボイスが刺さる韓国発の新世代
Nunegashi インタビュー

10月に開催された「FM802 MINAMI WHEEL 2025」に『ASIAN WAVES』として参加した韓国出身のアーティスト、Nunegashi。ヒップホップやロックの要素も感じるトラックにエッジの効いたボーカルが刺さる初の自作曲『H.U.R.T』が日本でも熱い注目を集めている。「いつかはリスナーを励ます曲を書く日が来るかもしれない。でも今はまだ、“救い”や“共感”に回収されない自分の問いを表現したい」という思いを映画監督志望の仲間と共に映像作品として昇華したMVも視聴者に強いインパクトを与える内容となっている。今回ぴあ関西版WEBでは、10月13日に行われたCONPASSでのライブ後に初インタビューを敢行! 『H.U.R.T』ができた経緯や自身が抱く野望とは。アニメやJ-POPなど日本のカルチャーを通して学んだという日本語も交えてフランクな話しぶりで、周囲を巻き込む熱い姿勢が伝わってきた。

ヒップホップをルーツに、J-POPに影響を受けて
初めて作った曲が『H.U.R.T』

――まず、Nunegashiという名前の由来から教えてください。

「Nunegashiは韓国語で厄介者っていう意味です。僕自身は厄介者ではありませんが(笑)。僕のキャッチフレーズは、”あなたの目の棘は僕”です。目にトゲが刺さると痛いように、現実を見たくないという韓国のことわざからきています。ダークヒーロー的なイメージもあります」

――Nunegashiさんの声質やボーカルスタイルもインパクトがありますね。

「ありがとうございます。僕はTOOBOEさんとか常田(大希)さんが好きなので、あのような発声の方法を勉強しています」

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――日本語はどこで勉強されたのですか。

「大好きなアニメとかJ-POPを通して勉強しました。韓国ではヒップホップが好きな人はアニメが好きな人が多くて、僕もアニメ好きでヒップホップを聴いていたし、今はJ-POPが大好きです」

――そんなNunegashiさんの音楽的なルーツというのは?

「アメリカのヒップホップを主に聴いていました。その後に日本のJ-POPやボカロ文化に出会って、その魅力に衝撃を受け、それから自分で作詞作曲しようと思って初めて作ったのが『H.U.R.T』という曲なんです」

――ちなみに、音楽を始めたのは何歳頃ですか?

「20歳からです。ちょっと遅いかもしれませんが、韓国はとても学歴社会なので、それまでは勉強をしていました。高校卒業して、ソウルで2年間アルバイトして頑張って貯めたお金で音楽を作るようになりました。先述したようにヒップホップがルーツだったので、タイプビートにメロディやその当時の想いをのせて作曲をしているうちに、友達がイイねっていってくれたので、とても単純なきっかけですがそれが原体験です(笑)」

――楽曲を作る時にコンセプトなどは考えていますか。

「『H.U.R.T』を作る時は太宰治の『人間失格』とか、アルベール・カミュの小説とかを参考にしていて、僕たちはなぜ存在しているのか?ということを考えて作りました。MVは、冒頭のシーンで閉じ込められていた人間がそこから脱出するんですけど、結局また元のところに戻ってきてしまうという展開で、毎日が同じことの繰り返しで、抜け出したいって気持ちはずっとあるんですけど、結局また同じ場所に戻ってしまう̶̶そんな無力感をそのまま形にしました。勇気を出して外に出ようとしても、依存や過去の習慣、人間関係とか、いろんな理由でまた”元の場所”に戻る。そのサイクルの中にある静かな絶望とかを描いています」

――日本の小説家もお好きですか。

「大好きです。韓国でも太宰治の『人間失格』はとても有名で、僕は太宰治とか村上春樹、東野圭吾も読んでいます」

――音楽家で好きな日本のアーティストは?

「僕が一番好きなアーティストはキタニタツヤさん。リリックやトラックのメタファーや暗喩の使い方がとても魅力的で、日本語での表現方法など勉強しています。フェスティバルに出ているアーティストとかは大体チェックしていますよ」

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「K-POP、ヒップホップ、J-ROCK」いろんなジャンルをミックスさせて
オルタナティブな曲を作っていきたい

――今後、オリジナルの曲はどういうものを作りたいと思っていますか。

「ビート含めて、最新のトレンドも取り入れたオルタナティブな曲を作っていきたいです。そこに自分の思想や理想とか、時には混沌とした感情を歌詞にしてのせていきたい。『H.U.R.T』を作って、やっぱり日本で通用したいという気持ちがあるので、12月にリリース予定の曲は、日本語の歌詞で全部作っているんです。僕は英語もある程度はできるので、韓国語と日本語、3つの歌詞で作って、ゆくゆくは自分の曲が世界中で聴かれたら良いなと思っています」

――今日のライブは日本人のミュージシャンとのバンドセットで、一曲、kohamo(大阪で結成された4人組バンド)の三浦海輝さんと共演されていましたね。

「今回披露した曲はkohamoの海輝くんに釜山(韓国)まできてもらって、一緒にスタジオに入って作りました。メロディーを海輝くんが書いて、日本語とK-POPのバランスをしっかり意識しながら感情を揺さぶるようなワードを入れていて、歌詞は一緒に作りました」

――今後はどんな形でパフォーマンスしていきたいと思っていますか。

「理想はヒップホップのアーティストのようなパフォーマンスをしつつ、バンドセットでみんなが楽しめるようなものを目指しています。僕の夢はまず日本で通用すること。そして、母国(韓国)の人にも認められるような存在になります」

――最後に日本のファンに伝えたいメッセージがあればお願いします。

「日本のみなさん、大好きです! また日本に来て僕が一番好きなコメダ珈琲のコメチキやセブン-イレブンのおにぎりを食べに行きたいです(笑)。また必ず戻ってきます! Iʼll be back!」

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Text by エイミー野中
写真提供:FM802、撮影:浜村晴奈

【LIVE REPORT】
2025.10.13 Mon. at CONPASS
 
ライブ前に、「日本の10代20代のみなさんと同じような音楽を聴いてきている男の子です」(FM802DJ 土井コマキ)と紹介されていたNunegashiは韓国の釜山出身。日本ではこの日が3回目というステージはバンド(ギター/ベース/ドラム)と共にパフォーマンス。アーティスト写真はミステリアスな雰囲気だが、ステージに現れるとさっそく日本語で挨拶をして、1曲目からエネルギッシュにフロアを盛り上げていく。R&B系のグルーヴにベースを前面に出して揺らす『あなたのせいだと思う』、さらに『終焉が目@前に』と2曲続ける。その後、大阪・北摂のバンドkohamoの三浦海輝を加えて歌った『IRIS YOU』。6月に釜山のスタジオで一緒に作ったという一曲で、サビでは、日本語の「約束」と韓国語で発音の似ている「ヤクソ(약속)」という言葉をフックにしながら、〈私のことを愛しているの?〉と問いかけるキャッチーなメロディが展開される。曲中には他にも多くの言葉遊びや二重の意味が散りばめられており、リリース時にぜひその仕掛けを確かめてほしい。そして、ラストに披露されたのは初のそして、ラストに披露されたのは初の自作曲としてSNSでも注目を集めている『H.U.R.T』だ。Nunegashiのエッジが効いたワイルドなボーカルが映えるナンバーでパワフルな動きとともに熱量の高いグルーヴを生み出し、フロアを大きく揺らした。出会った人を瞬時に惹きつける個性の強さとポテンシャルの高さを感じたパフォーマンスが脳裏に焼き付いた。

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Text by エイミー野中
写真提供:FM802、撮影:浜村晴奈

(2025年11月19日更新)

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