記事のポイント
アルタのウェルネス顧客は美容ファーストとウェルネスファーストの二極化が進み、後者の存在感が成長している。
UBマーケットプレイスを通じて新カテゴリの実験とSKUテストを強化し、AI検索など新しい購買行動への対応も急務となっている。
同社は透明性と科学的裏付けを持ちつつ消費者にアプローチしやすいブランドを求め、インティメイトケアや更年期領域への研究投資を重視している。
アルタビューティー(Ulta Beauty)がウェルネス領域をさらに強化するなかで、2つの主要な消費者像が浮かび上がっている。
「我々にとって、ウェルネス消費者は大きく2タイプに分かれる」と語るのは、アルタビューティーのウェルネス担当バイスプレジデント、ローラ・ベレス氏だ。「ひとつは、ビューティー愛好家で、コロナ禍を経て『美容は好きだけれど、もっと別の形でエンパワーメントを感じたい』と考えるようになった層である」。
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この顧客は、ウェルネス商品群のなかでも気分を高めるアイテムを好み、ポートフォリオ全体を積極的に試す姿勢が強い。美容とウェルネスの境界線が曖昧になり、新しいカテゴリや美容寄りのコラボレーションが生まれている状況を象徴している。インサイドアウトビューティーや、美容系ブランドによるサプリメント、見た目と心の両方に働きかけるモダリティなどがその一例だ。
「美容ファースト」と「ウェルネスファースト」の二極化
「もう一方は、よりストイックなウェルネス志向の顧客で、美容よりもウェルネスを軸にした生活を送っている」とベレス氏は述べる。この層は流行のウェルネス科学や長寿領域への理解が深く、習慣的に運動をし、日々のルーティンを真剣に管理している。
「我々は引き続きビューティー愛好家に注力し、セルフケアの全体像やストーリーを伝え、日々の生活のなかの『心地よさ』を見出し、美容とウェルネス全体のルーティンに結びつけるようにしていく。しかし同時に、ウェルネスファースト層にも応えられる魅力的な商品群も揃えている」とベレス氏は話す。
ベレス氏によると、アルタのウェルネス売上の「大部分」は美容ファースト層が占めるが、ウェルネスファースト層も確実に拡大しており、同社の重点領域になりつつある。
AI時代の新たな購買行動
アルタビューティーの「UBマーケットプレイス(UB Marketplace)」は、同社がウェルネスを含む新領域へ拡大する推進力となっている。店頭投入前に新カテゴリや商品をテストできる点が大きな強みだ。近い将来、既存ブランドが新SKUをこのマーケットプレイスで試せるようになる見込みだという。
ベレス氏のチームが購入しているものは、多くがイノベーションに結びついている。
「市場におけるイノベーションの評価の基準として、『消費者のデータアクセス』『特定分野における研究』『投資』の3点に注目している」とベレス氏は語る。
特に消費者の情報アクセスは、AI検索や解析ツールの普及により大きく変化している。多くの買い物客がChatGPTやユカ(Yuka)、サプコ(SuppCo)を使いながらアルタ店内を歩き、購入候補を評価しているという。ブランドが勝つためには、これらのアプリ上で「正しく表示される」ことが不可欠だ。
「この現象は確実に当社の店内で起きており、顧客が店舗スタッフに尋ねる内容にも表れている」とベレス氏はいう。「スタッフがこうした最新のトピックに常に対応できるよう、ブランドと協力して教育への投資を推進し、販売スタッフの知識強化を確実に行なっている」。
研究・投資が後押しする新領域
研究領域では、インティメイトケアや更年期・閉経期のソリューションがもっとも注目されている。「これまでタブー視されてきた領域が急速に表舞台に出てきたことで、研究があとから追いかけ、イノベーションが進んでいる」とベレス氏は語る。
投資面で同氏が期待する領域は、栄養・サプリメント、インティメイトケア、睡眠とリカバリー、そして日々の心地よさを生むセルフケアアイテムだ。歯磨きなどオーラルケアの補充アイテムのアップグレードや、テック系シャワーフィルターのような新機軸も含まれる。
「日々のなかで、顧客が自分のために何かをして気分がよくなる瞬間を得られるようにしたい。そこに大きな期待を抱いているのだ」とベレス氏は語る。
アルタが求めるブランド像は明確だ。透明性があり、オーセンティックなストーリーを持ち、臨床データで裏付けされ、科学を店頭でわかりやすく伝えられることだ。
「もちろん、必要な資格や条件をきちんと揃えているブランドを求めているのはいうまでもない。だが同時に、このカテゴリの入りやすさをしっかり体現できるブランドも必要なのだ。ウェルネスという圧倒されやすい領域であるからこそ、教育とナビゲーションを明快に示せるブランドこそが長期的な勝者になる」とベレス氏は締めくくっている。
[原文:Wellness Briefing: A look at Ulta Beauty’s 2 distinct wellness consumers, plus news]
LEXY LEBSACK(翻訳・編集:的野裕子)
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