Tommy february6(6は「6乗」が正式表記)のコンサートフィルム上映会『Tommy february6: The Screening』が、11月8日、アメリカ・ニューヨークのJapan Societyで行われた。

【画像】NYで行われたコンサートフィルム上映会の観客の様子

■今もなお、女子心をくすぐるTommyワールド
Japan Societyは日米の交流を促進することを目的に設立された100年以上の歴史を持つ非営利団体で、北米最大規模の日本映画祭の主催など、年間を通じて数多くの日本映画のプレミア上映を行っている。

Tommy february6は、the brilliant greenのボーカル・川瀬智子によるソロプロジェクト。チアリーダーの衣装にキャットアイ型の眼鏡をかけ、バンド構成ではなくダンサーを引き連れてパフォーマンスするなど、the brilliant green では見せなかった“ポップでキュート”なファッションアイコンとして一世を風靡した彼女だが、活動開始から24年が経った今、ソーシャルメディアでのバイラルヒットや海外アーティストによる楽曲シェアを通じて再評価されている。

Tommyのリバイバルブームに火が付いたのは2024年。アメリカの人気ラッパー、Doja Catが「Wait till I can dream」のミュージックビデオをXでシェアしたり、イギリスのシンガーソングライター、Charli xcxがお気に入りのアーティストに挙げたことが話題になった。さらに、TikTokでは「Lonely in Gorgeous」がメイクアップやファッション動画のBGMとしてバズを起こし、16億回再生を突破して注目を集めている。今、世代と国境を越えて彼女のリスナーが急増中だ。

Tommyのダークサイドとして登場したTommy heavenly6では、ロックなサウンドにゴシックパンクなファッション、ハロウィンをモチーフにした楽曲を通して“クールで反骨的”な女の子像が描かれ、“二面性”をコンセプトにした音楽活動も際立っている。また、“硝子の靴” “願いのりんご” “トランプの壁”など、おとぎ話からインスピレーションを受けたフレーズが歌詞の随所に散りばめられている点も、女子心をくすぐるTommyワールドである。

このリバイバルを受け、2025年5月にはTommy february6、Tommy heavenly6、the brilliant greenの各プロジェクトのファーストアルバムがアナログレコード化。そして本イベントのチケットは、一般席の他、アナログ盤・Tシャツ・ポスター付きのVIP席を含めて開催発表直後に即完売となった。

■スクリーンにTommy february6が登場すると、場内は拍手喝采!
会場には、パステルカラーを基調とした原宿カワイイ系スタイルと、濃いアイメイクにストレートヘアのロックスタイルという対照的なファッションを纏った10代〜20代女性が多数。2000年代カルチャーをあらたな感性で楽しむ世代の熱気で包まれた。

上映前のスピーチで、Japan Society映画部門ディレクターのピーター・タタラが「2001年にTommy february6の楽曲を聴いていた人はいますか?」と尋ねると数人の手が挙がり、「では2001年時点でまだ生まれていなかった人は?」と続けると、会場の8割以上が挙手。この光景こそ、彼女の再ブレイクがまさに“Y2Kムーブメント”の象徴であることを物語っている。

プログラムでは、『Tommy february6 “J-WAVE LIVE 2000+1”』『Tommy heavenly6 “SPACE SHOWER TV LIVE #5”』『the brilliant green “PREMIUM ACOUSTIC LIVE”』から厳選された映像を上映。スクリーンにTommy february6が登場すると、場内は拍手喝采。アメリカ初公開となるライブ映像には、「★CANDY POP IN LOVE★」や「EVERYDAY AT THE BUS STOP」など、february6の代名詞とも言えるドリーミーポップな楽曲がラインナップされ、観客たちは体を揺らしながら映像を楽しんだ。当時のステージ衣装やトークの様子に加え、時代を感じさせる観客のファッションも映し出された20年以上前の映像を、Z世代のファンたちは“知らなかった2000年代”の空気感を味わうように見入っていた。

Tommy heavenly6パートでは、少女漫画の金字塔『NANA』のトリビュートアルバム収録曲「GIMME ALL OF YOUR LOVE !!」や、日本のロリータとヤンキー文化がフィーチャーされた映画『下妻物語(英題:Kamikaze Girls)』の主題歌「Hey my friend」で会場を盛り上げる。

“女の子”のパーソナリティとファッションの多様性を体現する作品とのタイアップには欠かせないTommyだが、ファン層は女性だけにとどまらない。彼女の可能性をさらに広げたのは、本イベントでひときわ歓声を集めたアニメ『銀魂』の主題歌「Pray」の存在だ。最後に上映されたのは、彼女の音楽活動の原点であるthe brilliant greenのアコースティックセッション映像。コンセプチュアルなソロプロジェクトとは異なり、素顔の川瀬智子として歌うどこか切ないその姿には、媚びない透明感と自然体の魅力が溢れ、観客に深い余韻を残した。

■Tommy本人による“NYC Thank U-Tommy”のサインとメッセージがスクリーンに
上映後には、“NYC Thank U-Tommy”と書かれた本人のサインとメッセージがスクリーンに映し出され、観客は咄嗟にスマートフォンをかざして撮影し始めた。会場ロビーに設置されたメッセージカードの回収ボックスには、ファンが綴った彼女への思いが次々と投函され、「テキサスからこのイベントに駆けつけた」という熱心なファンや、「来年から日本に留学する予定」と話すJ-POP好きの学生にも出会った。このコンサートフィルム上映会は、これまでオンライン上でしか触れることのできなかったアーティストの魅力を、ファン同士がリアルな空間を共有し、あらたな楽曲や世界観を再発見する貴重な機会となった。

もちろん、アメリカの音楽シーンでも“Y2Kムーブメント”は勢いを増している。10月にラスベガスで開催された大型フェス『When We Were Young』では、1990年後半から2000年代初頭にブレイクしたアーティストたちがヘッドライナーを務め、イベント名が示すとおり “あの頃の僕たち/私たち”をコンセプトに、当時のファンが“懐かしの名曲”を楽しんだ。一方で、ソーシャルメディアを通じて再びバイラル化した楽曲を“今、流行りの曲”として捉えて楽しむTikTok世代の若者たちも多く足を運んでいた。

Tommy february6のチアガールやスクールガールにインスパイアされた衣装は、90年代後半のブリトニー・スピアーズや、現代のオリヴィア・ロドリゴを彷彿とさせる要素がある。Tommy heavenly6のロックスタイルはアヴリル・ラヴィーンと同世代の感性に通じるし、このふたつのプロジェクトによる二面性の音楽表現は、Z世代ミュージシャンのアイコン、ビリー・アイリッシュが見せる光と影のコントラストにも重なる。時代は巡り、文化は姿を変えながら繰り返す。Tommy february6、Tommy heavenly6、そしてthe brilliant green――ひとりのアーティストが生み出したそれぞれの音楽ビジョンが今、時を越えて世界のステージに立っている。本イベントは、11月15日にロサンゼルスのCary Grant Theatre at Sony Studiosでも開催が予定されており、チケットはニューヨーク同様完売となっている。

TEXT BY Megumi Hamura

THE FIRST TIMES編集部

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