「MUSIC EXPO LIVE 2025」という音楽イベントが3日に東京ドームで開催され、様々な反響を呼んでいます。
なにしろ出演陣はトリを務めるNumber_iを筆頭に、KAWAII LABの4グループや、BE:FIRST、HANAなどの日本の人気アーティスト、そしてENHYPEN、TOMORROW X TOGETHERのようなK-POPの人気アーティストまで、アジアを代表する12組のアーティストが集結するという豪華な顔ぶれ。
今回は東京ドームでの初開催ということで、チケットの売れ行きを懸念する見方もあったようですが、最終的には4万人の観客が12組による50曲のパフォーマンスに熱狂する展開になっていました。
実はこの「MUSIC EXPO」は、単に出演陣が豪華なだけでなく、通常の音楽フェスと少し異なる取り組みがされていますので、ご紹介したいと思います。
公開収録の音楽番組から、東京ドーム公演への転換に成功
そもそも、この「MUSIC EXPO LIVE」は、昨年までは「NHK MUSIC EXPO」という名称でNHKで放送されていた音楽番組でした。

これまではNHKホールに無償で番組観覧の観客を集めて公開収録を行い、それをNHKで放送すると言う通常の音楽番組としての立て付けだったのが、今年からは子会社のNHKエンタープライズが主催となり東京ドームでチケットを販売する形での音楽ライブに転換。
その音楽ライブでのパフォーマンスの一部を、NHKの番組で放送されるという形にシフトしたのです。
もちろん、こうしたテレビ局の音楽番組による有料の音楽ライブ開催は、民放各局によっても既に実施されており、必ずしも珍しい取り組みではありません。

ただ、Number_iやTOMORROW X TOGETHERのような豪華な出演陣を維持したまま、いきなり東京ドーム公演で4万人を集めることに成功できたのは、NHKならではと言えるかもしれません。
筆者も、関係者席に招待いただいてイベントを拝見しましたが、大トリを務めたNumber_iのパフォーマンスを、4万人の観客が総立ちで盛り上がっているのが非常に印象的でした。
4EVEの出演の話題がタイのトレンドで1位獲得
この「MUSIC EXPO LIVE」で特に注目していただきたいのは、タイトルにEXPOという単語が入っているように、日本のアーティストだけではなく海外のアーティストも交えた音楽版万博的な取り組みがされている点です。
分かりやすいのはCORTIS、ENHYPEN、KiiiKiii、TOMORROW X TOGETHERと4組のK-POPのアーティストが出演している点です。

ただ、今や日本の音楽番組でのK-POPアーティストの出演は珍しいことではないですから、これだけでは意外感がある方は少ないかもしれません。
実は今回「MUSIC EXPO」ならではの取り組みとして最も象徴的だったと言えるのは、4EVEというタイの人気女性グループが出演していた点です。
彼女たちはタイで非常に人気のあるグループで、彼女たちが東京ドームに出演するということで、イベント当日はタイのSNS上で大きな話題が巻き起こり、なんとタイのXのトレンドで1位、世界でも7位に入ってしまったのです。

当然のことながら、この「MUSIC EXPO LIVE」はまだテレビ放送もされていなければオンライン配信もありません。
4EVEの日本での番組出演や東京ドーム出演をお祝いする、タイのファンのエネルギーの大きさが感じられる出来事と言えるでしょう。
日本と海外アーティストの様々なコラボ
実は「MUSIC EXPO」では、こうした海外の人気アーティストを単に招聘するだけでなく、日本のアーティストと海外アーティストのコラボの機会も様々に提供しているのが一つの大きな特徴と言えます。

今回の「MUSIC EXPO LIVE」当日も、日本のBE:FIRSTと韓国のENHYPENがそれぞれお互いの楽曲で、難易度の高いダンスコラボを実施。
さらには日本のKAWAII LAB.のメンバーと韓国のKiiiKiiiが、TWICEの「TT」とAKB48の「ヘビーローテーション」を披露するスペシャルコラボも披露。

また、HANAと4EVEがトークパートでコラボするなど、日本と海外のアーティストのコラボを積極的に企画しているのです。
ステージ裏でも様々なトークが繰り広げられていたようですし、アーティストのTikTokなどには様々なダンスコラボがアップされ始めていますから、まだまだ国境を越えた様々なコラボ企画も見られるかもしれません。
NewJeansとYOASOBIのコラボのきっかけも「MUSIC EXPO」
実はこうした取り組みの目に見える成功例と言えるのが、「NHK MUSIC EXPO 2023」におけるYOASOBIとNewJeansのコラボでしょう。

この時にはパフォーマンスこそ一緒にはしていませんが、YOASOBIが「今一番会いたいアイドル」としてNewJeansとSEVENTEENのWOOZIさんと番組の中でトークを展開しました。
その後、YOASOBIとNewJeansは、再び2023年年末の紅白歌合戦のYOASOBIの「アイドル」歌唱時に、コラボパフォーマンスを披露。
さらにはNewJeansの東京ドーム公演にYOASOBIが出演したり、YOASOBIの韓国公演にNewJeansが出演したりと、関係を深めていくことになります。
こうした両者のコラボが、お互いのファン同士がJ-POPとK-POPの垣根を越えてお互いの音楽を知るきっかけになっていたことは疑う余地もありません。
「MUSIC EXPO」は番組やライブ自体で、そうしたアーティスト同士のコラボのきっかけを提供することで、日本と海外の音楽をつなぐ架け橋になっていると言えるでしょう。
今回の「MUSIC EXPO LIVE」でトリを飾ったNumber_iも、コーチェラ出演時にコラボした88risingやジャクソン・ワンさんとの絆がその後の海外活動につながっていることを踏まえると、こうしたコラボの取り組みが日本国内でも増えることには大きな価値があると感じます。
日本の音楽を世界に拡げるために
最近では、音楽業界も日本の音楽を世界に拡げるための活動に注力するようになり「MUSIC AWARDS JAPAN」のような国際音楽賞も立ち上がっています。
ただ、「MUSIC EXPO」の成功から学ぶべきなのは、自分達の音楽を海外で知ってもらうためには、自分達も海外の音楽を知る必要があるということかもしれません。
奇しくも11月5日は「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」の記者発表会が行われ、授賞式が6月13日に開催されることが発表されましたが、この授賞式が今回の4EVEの出演によるタイでのトレンド1位獲得のように日本以外での国で話題になるためには、「MUSIC EXPO」のように海外のアーティストのパフォーマンスを日本の音楽ファンに披露する機会を増やすなどの工夫も必要になるのかもしれません。
いずれにしても、「MUSIC EXPO LIVE 2025」はまだイベントが終わっただけで、NHKでの放送は12月12日になります。

今回の放送の反響次第で、「MUSIC EXPO LIVE」が来年以降どういう展開をしていくかも変わるはずです。
また、せっかく音楽番組メインから、音楽ライブ事業メインにシフトしたわけですから、パフォーマンス映像をNHKでの放送以外のデジタル等でも活用していくのかも注目点と言えます。
実は今回の「MUSIC EXPO LIVE2025」ではSpotifyともコラボしており、参加アーティストの楽曲をプレイリスト化、さらに「もう一度見たいパフォーマンス楽曲」投票キャンペーンを実施するなど、従来の日本の音楽番組とは異なるデジタル活用にも挑戦されているのが印象的です。
当然、4EVEのタイのファンや、K-POPアーティストの海外のファンからも「MUSIC EXPO LIVE 2025」を観たいという声が上がるでしょうから、どう対応するかも注目点と言えるでしょう。
今後「MUSIC EXPO LIVE」が日本の音楽を世界につなぐ舞台として、どのように進化を遂げていくのか楽しみにしたいと思います。
この記事は2025年11月6日Yahoo!ニュース寄稿記事の全文転載です。
