掲載日
2025年10月27日
ミラノやパリ以外の都市でファッションウィークが開かれるのは珍しくない。しかし、トゥールーズ・ファッションウィーク(TFW)ほど確立され、独自性が際立つイベントは多くない。芸術・モード協会(Institut des arts et de la mode)が主催する本イベントは、2019年の創設以来、“ピンクシティ”の象徴的な会場を舞台に、世界各地から集う数百人の来場者と約十人のデザイナーを迎え、ファッションとライブパフォーマンスを祝してきた。
ジェニア・ガラのコレクションより – Toulouse Fashion Week
2025年は11月28日・29日に開催され、テーマは「ヘリテージ」。待望のInterférence – Balmaでの開催となり、代表のファブリス・ソリアによれば、トゥールーズ・ファッションウィークは新たな節目を迎えたという。「集大成だ」と彼は語る。「私自身は実感していなかったが、皆が信じられないという反応だった!」 会場は1,000平方メートルの規模に、45メートルのU字型キャットウォークを備え、会場費も割引される。収容人数400〜600人のホールは完売が見込まれており、「昨年は毎晩500人を迎えた。今年は600人に達するはずだ」とソリアは話す。
楽しみながら参加
開催の現場を支えるのは、モデル、フォトグラファー、メイクアップアーティスト、ヘアスタイリスト、広報担当者まで、300人のボランティアだ。トゥールーズ・ファッションウィークはまた、ポーランド、ベルリン、フランス領ギアナ、ブラジル、中央アフリカの各ファッションウィークからの支援も受けている。こうした広報面での後押しにより、各大陸のデザイナーからTFWへの問い合わせが寄せられるようになった。「いまやデザイナーのほうから私たちに連絡が来る」とソリア。「ただし、彼らは金銭的な利益ではなく、楽しみのために参加している」。会長の試算では、参加予定デザイナーの約20%は販売目的ではなく、自らの作品を芸術として表現するために出展しているという。
ADN Streetのコレクションより – Toulouse Fashion Week/Johan Photographie
この独自性が最も際立つのがまさにこの点だ。ファッションショーにはときにダンスや音楽、舞台美術が加わり、観客は各デザイナーのユニバースへと没入する。その結果、ライブならではのスペクタクルが生まれ、ファッションの都のキャットウォークのように「頭だけが動く」場とは異なる、別種のファッション体験が提示される。こうした多分野横断的な性格に惹かれて、TFWの観客層は多彩だ。気に入ったルックに拍手を送った観客は、その夜に限ってはバイヤーになることもでき、価格も手の届く範囲に抑えられている。
着実で有機的な成長
実のところ、このアート志向の催しをほぼ単独で支えているのは観客で、チケットは10〜50ユーロに設定されている。一方デザイナーは、別の仕事を持つ愛好家も多いため、負担するのは控えめな参加費(100ユーロから)にとどまる。トゥールーズ・ファッションウィークの狙いは、「自分の名前を売り出す手段を持たない」クリエイターを紹介し、一定の可視性を提供することにある。「デザイナーの4分の3は、1カ月以内にコレクションを販売するだろう」と協会の会長は述べる。
ヴェロニク・マニーのコレクションより – Toulouse Fashion Week/Johan Photographie
2016年にFabosとSwarovskiのためのダンス&ファッション・ガラとして産声を上げ、2019年にトゥールーズ・ファッションウィークへと発展した。トゥールーズ市庁舎の支援を受け、セピエール競馬場で開催された初回は、150席が予約で埋まった。「Nuit d’Orient(東洋の夜)」と題されたこの催しには、トゥールーズ、モンペリエ、ペルピニャンのほか、モロッコ、ウガンダ、アルジェリア、チュニジアのデザイナーが集い、一夜限りのファッションと芸術的パフォーマンスが披露された。回を重ねるごとに協会とイベントは成長を続け、いまやソリアはTFWを、モデルと観客がキャバレーのような雰囲気で交わるヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーになぞらえている。
規模を拡大するTFW
TFWに参加するクリエイターのひとりに、2025年版の後援者であり名工でもあるトーニー・アカがいる。2020年からTFWに参加する彼は、Tonye’s Fashionのほか、トゥールーズ拠点のファッション教育機関Tonye’s Fashion Academyを主宰している。イベントはまた、アップサイクルバッグのレーベルBi Ethicを手がけるシャルロット・バルドゥ、さらにジェニア・ガラと彼女の同名ブランドにも光を当てており、後者はトゥールーズに2つの縫製工房を構えている。
アニエス・ヴュイヤムのコレクションより – Toulouse Fashion Week
わずか数年で、トゥールーズ・ファッションウィークは地元での評価を築き、その評判はいま広がりを見せている。オートクチュール・モード連盟の新進ブランド担当ディレクター、セルジュ・カレイラの関心も集めた。一方で、芸術・モード協会はすでにTFWの先を見据え、国際的なファッションと舞台芸術を組み合わせた新プロジェクトに取り組んでおり、早ければ2026年にも始動する見込みだ。
