掲載日
2025年10月23日
中国の蘇州は「絹の都」、古くは「上海の庭」として広く知られています。ところが近年、蘇州有数の重要なファッション産業の製造拠点である常熟では、情勢が大きく動き始めています。
「ファッション常熟」ブランド&アウトドアスポーツ産業発展会議 – Changshu Organiser
今季のファッションウィーク期間の10月9日から16日にかけて、新たな大型イベント「蘇州テック・ファッション・ウィーク(STFW)」が業界の視線を一手に集めました。初開催となった同イベントには世界中から数千人のファッションおよびテキスタイルの専門家が常熟に集結し、国内外で数十件に及ぶ商談・取引合意が成立。各種メディアからも高い評価を獲得しました。
STFWは「テクノロジーとともにあるファッション」に明確に焦点を当てた、中国初のファッションイベントとして位置づけられています。力強いテーマ「テクノロジーは触れられ、ファッションは活用できる」のもと、ファッションの在り方に変革をもたらしました。
この取り組みは極めて戦略的で、常熟に根づく強固な産業クラスターを梃子にしつつ、新技術が牽引する革新的な消費環境の醸成を力強く後押ししています。同イベントは、先進的なデザインと卓越した製造力が交差する重要なプラットフォームとなる見込みです。
いま世界の繊維産業は、テクノロジー、グリーン開発、消費の三領域にまたがる三重の変革期を迎えています。同時に、中国の「双循環」戦略は、内需の高度化と産業サプライチェーンの自立を後押ししています。
「伝統的な繊維の一大拠点である常熟はいま、『製造大市からファッション大市へ』と飛躍を図る重要な岐路にあります。そのためには、総合的なサプライチェーンの優位性を盤石にすると同時に、ハイエンドデザインやコア技術のボトルネックを打破し、新たな成長ドライバーを見出す必要があります。現在、常熟では『アウトドア・スポーツ・プラス』戦略を推進し、アウトドアアスレチックアパレル(主に機能性ジャケット)を産業の革新と発展における第二の柱に据えています。目標は、全国的な影響力を備えたアウトドアスポーツアパレル産業の新たな高地を築くことです」
こうした政府の戦略と開発イニシアチブの後押しを受け、数多くの企業が台頭し、各専門分野で先駆者としての地位を確立しています。なかでも常熟の成功を象徴する代表格がBosidengで、同社は最近パリ・ファッション・ウィークで最新のプレゼンテーションを行いました。
Bosidengの大ヒット商品を支えるAIデザイン – Changshu Organiser
常熟の繊維・アパレル産業という肥沃な土壌のもと、Bosidengは業界の発展を見届けてきた存在であると同時に、その中心的な担い手であり牽引役でもあります。Bosidengは地域ブランド「ファッション常熟」の構築に深く関与し、地元産業と歩調を合わせて成長してきました。「チェーン・リーダー企業」として、常熟の繊維・アパレル・クラスターをハイエンド化・スマート化・グリーン製造へと導く変革を先導しています。
30年以上にわたり中国の市場と売上を牽引してきたBosidengは、いまや世界的なファッションの巨人へと変貌を遂げました。現在、同社は世界の「最も影響力のあるブランド500」および中国の「トップ500企業」に名を連ねています。ブランド価値は1,180億5,800万元に達し、2年連続で「千億元クラブ」の一員としてその地位を維持しています。
「私たちが投資・建設したインテリジェント製造基地は、地域に300を超えるインテリジェントな生産ラインやワークショップの整備を促し、江蘇省のハイエンド繊維産業における高品質な発展の実証ゾーン構築を力強く支えています。Bosidengは常熟産業の『成長モデル』であるだけでなく、世界の舞台で『ファッション常熟』を生き生きと体現する存在だと言えるでしょう」と、ブランドの公式広報担当者は述べています。
常熟服装城は中国最大級の繊維・アパレル専門市場のひとつ – Changshu Organiser
2025年9月、Bosidengは世界初の伸縮性のあるGORE-TEX®ファブリックと、革新的な自社開発の温度制御技術を搭載した「Foldable 3-in-1 Expedition Down Jacket」を発表しました。これは「1着で3通りに着用でき、20℃の気温差にも容易に対応可能」という画期的なイノベーションでした。さらに、10月のパリ・ファッション・ウィークで披露された「Master Puffs」コレクションは、エアリーでふんわりとした生地と建築的美学に着想を得たデザインを採用。軽量性(生地重量を70%削減)と保温性の両面で革命的な進化を遂げ、中国ブランドの革新力を世界のファッションコミュニティに示しました。
テクノロジー分野での地元ブランドの研究開発への注力に加え、常熟は越境ECやライブコマースの台頭により、活気ある復活を遂げています。
さらに、常熟服装城は中国最大級の繊維・アパレル専門市場であり、年間取引額は1,500億元を超えます。4万以上の事業者を惹きつけ、ライブコマース従事者約5万人を含む10万人超を雇用することで、「オンライン・オフラインのダブル1000億元」として知られる活況の市場環境を築き上げました。
近年、常熟の繊維・アパレル企業は積極的にグローバル展開を進めています。伝統的なOEM輸出モデルから、グローバルなサプライチェーン体制のもとで自社ブランドを海外展開する新たな段階へと移行しつつあります。海外市場の資源とチャネルを共有する「共同国際化」モデルを採用する中小企業も増えています。
今後、これらの企業の新たな発展の道としては、東南アジア(ベトナムやカンボジアなど)での海外生産能力の確立が挙げられます。現地の労働コスト優位を活かしてアパレル生産拠点を設けることで、ASEAN、オーストラリア、さらにはその先の市場へと製品を効果的に広げていくことができるでしょう。
シシ・チュウ
