掲載日

2025年10月7日

4週間にわたる国際ファッションシーズンは、パリ・ファッションウィーク最終日に、Meryll Rogge(メリル・ロジェ)の見事なインディーショーで幕を閉じた。同日には、ピエール・カルダンの“アスピックの中の宇宙空間”さながらのコレクションや、日本ブランドUjohの晴れやかなステートメントにも出会えた。

メリル・ロジェ

最後にして決して脇役ではないMeryll Rogge(メリル・ロジェ)は、まるで解放の瞬間のような、予想外にクールで画期的なコレクションでこのシーズンを締めくくった。

コレクションを見るMeryll Rogge - 2026年春夏 - ウィメンズ - フランス - パリMeryll Rogge – 2026年春夏 – ウィメンズ – フランス – パリ – ©Launchmetrics/spotlight

 
中世、ルネサンス、新古典主義の建築様式が交差する中庭を擁する国立公文書館での発表は、このコレクションに実にふさわしい舞台だった。服は、珍しい薄手のツイードや現代的な旅のスナップ、大胆なコスチュームジュエリー、そしてムーディなロッカーなムードを軽やかに混ぜ合わせていた。
 
女優で作家のクッキー・ミューラーのカルト的伝記『黒く塗られたプールの透明な水の中を歩く(Walking Through Clear Water in a Pool Painted Black)』に着想を得た本コレクションは、クラブカルチャーの世界、ボヘミアンの美、深夜の享楽を巡るツアーのように感じられた。

80年代のロウアー・イースト・サイドで幸運にも青春時代を過ごした私たちにとって、クッキー・ミューラーは特別な崇敬の対象だ。このコレクション全体に彼女の美学が漂っているのを見るのは、なんとも特別だった。 
 

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ペンシルスカートに肌見せのニット、光沢感のあるノースリーブのパーカ風ドレス、そして白のフリルを幾重にも重ねた美しいフェイクのウエディングドレス。最後の一着は、1986年にイタリア人アーティスト、ヴィットリオ・スカルパティと結婚式を挙げるクッキーを捉えたナン・ゴールディンの有名な写真に着想を得たもの。ふたりはその3年後、エイズで悲劇的な最期を遂げている。
 
総じて、ベルギー生まれのロジェによる見事なコレクションである。彼女は来年2月、ミラノでマルニの初コレクションを披露する予定だ。
 
ドリス・ヴァン・ノッテンとも仕事をしてきた、アントワープのWouters & Hendrixによる素晴らしいジュエリーの提供で、ショーもキャストもいっそうクールに。
 
イースト・ヴィレッジのマッド・クラブやピラミッド・バーで、うぶな若きアイルランド人としてミューラーの輝きに見惚れていた深夜の時間を思い返すと、クッキーもこの服とジュエリーをとても気に入ったに違いない、と思わずにはいられない。
 
唯一無二のランウェイシーズンの幕引きとして、なんとも称賛に値する締めくくりだった。
 

ピエール・カルダン:アスピックの中の宇宙空間

ピエール・カルダンのスペースエイジ・ファッション。プレショーでは、背の高いモデルが12人、パッド入りの光沢ボディストッキングにハイヒール、グルーヴィーなバイザー姿で歩き回った。さながら銀河のワルキューレ、そして引き締まったスーパーヒーローたちだ。

コレクションを見るPierre Cardin - 2026年春夏 - ウィメンズ - フランス - パリPierre Cardin – 2026年春夏 – ウィメンズ – フランス – パリ – ©Launchmetrics/spotlight

舞台は、エリゼ宮の真向かいという絶好のロケーションにあるピエール・カルダンの歴史的ブティック。キャストは店の外にも繰り出し、多くの憲兵隊とCRS準軍事警察が笑顔で拍手を送った。マクロン大統領は首相が次々と交代しているが、ピエール・カルダンの逝去から5年を経た今も、ブランドは力強く歩み続けている。
 
甥のロドリゴ・バシリカティ=カルダンが手がけたコレクションは、メゾンのコードである未来派のデザイン、スタッズ仕上げ、グラフィックなシェイプで遊んだ。
 
黒、白、ピンク、グリーンのボディストッキングに重ねたのは、直径1メートルのピンクの円盤、帝政ローマの紫を思わせる宇宙船司令官のチュニック、サンゴ色のパッド入りウェーダーなど。 
 
ヒップにはライムグリーンの葉をあしらい、多くの首元には巨大な蝶ネクタイが垂れ下がる。ベストやソフトハーネスには、60年代ライクなグラフィックシェイプが映えた。そして見せ場として、ロドリゴは銅色に輝く磁石式のキノコのオブジェを、ひとりのモデルに何十個もぶら下げてみせた。
 

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ショーの中盤には、プレティーンの子ども4人がグリーンカーペットのランウェイを一巡し、大人と同様に、いくつか設けられた小さな壇上でポーズを取り、ピルエットしてみせた。ロドリゴに遺産の管理権を与えた遺言をめぐっては、カルダン一族の十数人がなお争っており、フランスの裁判所で係争中だ。しかしランウェイ上では、この一族は終始和気あいあいだった。
 
実のところ、このコレクションは60年代を舞台にしたSF映画のために仕立てられたかのように、時間の渦に取り込まれたようでもあった。とはいえ、1960年代にファッションを革新した自らのデザインを心から誇っていたピエール・カルダンなら、このショーをむしろ喜んだのではないだろうか。
 

ウジョー:サマータイム・ブルース

Ujohの最新ショーでは、帆やフィッシュネット、水着、ウインドブレーカーといった要素が多くのルックに波打ち、陽光降り注ぐ海辺のリゾートへと連れ去られるような心地だった。

 

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パレ・ド・トーキョーの奥深くにあるSaut du Loupのショースペースで行われたこのショーは、サイドを大胆に開けたルーズフィットの提督風ブレザーにフィッシュネットのスカートを合わせたルックで幕開け。ウジョーのデザインデュオは、ネルソン卿の水兵たちのようにワイドにカットしたパンツを用い、フィッシュネットレースや、水生生物のスタンプを施したオーガンジーのパンツも仕立てた。
 
往々にして最良のルックはシンプルなもの——たとえば、ノースリーブでベルト付きのトレンチコートドレスや、大ぶりの共布タイで仕上げた着やすいチュニックドレスだ。 
 
男女混合のショーでは、男性はテクニカルなカーゴパンツやパッチポケット付きの半袖スウェット、ストライプのパジャマシャツ、そして美しいテクニカルタフタのダスターコートを着用。後者はモデルたちが誇らしげに身に纏っていた。
 

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2009年にデザイナーの西崎充と西崎アコによって設立されたUjohは、緩やかながらも着実に成長を重ねるブランド。次の目的地は——夏だ。

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