深夜に電話していたら「女の人いる!」と言われて…妖と人が織りなす江戸ミステリー アニメ『しゃばけ』声優座談会【山下大輝・沖野晃司・八代拓】 | 対談・鼎談 | Book Bang -ブックバン- - Moe Zine


沖野晃司さん(左)、山下大輝さん(中央)、八代拓さん(右)

作家・畠中恵さんのベストセラー小説『しゃばけ』が初のアニメ化。フジテレビ系“ノイタミナ”にて10月3日(金)23時30分から初回放送が始まる。

『しゃばけ』は、江戸を舞台にした時代劇ミステリー作品だ。日本橋の大店(おおだな)・長崎屋のひとり息子で「若だんな」と呼ばれる少年・一太郎は、ある理由から妖(あやかし)を見たり会話したりすることができた。体の弱い一太郎は、店の使用人である手代(てだい)の仁吉(にきち)と佐助(さすけ)に過保護ぎみに世話をされながら過ごしていたのだが、ある日、恐ろしい事件に出くわしてしまう――。

原作は累計1000万部超の大人気作ということもあり、声優陣の顔ぶれも豪華だ。主人公の一太郎を山下大輝さん、仁吉を沖野晃司さん、佐助を八代拓さんが演じている。今回は、メインキャストを務めたこの三名に、『しゃばけ』の魅力からご自身の恐怖体験まで、たっぷり語り合ってもらった。

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中央が一太郎、左が仁吉、右が佐助 (C)畠中恵・新潮社/アニメ『しゃばけ』製作委員会

夜道を歩きながらの電話に、いるはずのない女性の声が……

――『しゃばけ』の主人公・一太郎は妖(あやかし)を見ることができる少年ですが、皆さんはこれまでに妖怪やお化けを見たことがありますか?

山下(一太郎役)、八代(佐助役):僕たちはないですね。

沖野(仁吉役):はっきり見てはいないですが、不思議な体験はありました。僕が20代の頃、お酒をだいぶ飲んで終電で帰ってきた時のことです。 地元の駅を降りて、携帯で電話しながら歩いていたんです。そうしたら、通話相手の人が突然「女の人いる!」って言い出して。僕ひとりで普通に歩いていただけなんで、「はぁ? 何言ってんの」って返したら、僕にも女性の笑い声が聞こえてきて……。外を歩いていたから、どこかのマンションから笑い声が漏れ聞こえただけかもしれないですけど、これが人生唯一の怖い体験でした。

山下:妖とかが出てくる可愛い話かなと思ったらガチのやつだ(笑)。僕はスプラッター系のホラー作品があまり得意じゃないんですけど、『しゃばけ』は全然そんな感じじゃなくて、可愛らしい妖がいっぱい出てくるので怖がらずに楽しめました。

八代:第一話にも鈴彦姫(すずひこひめ)っていう道案内をしてくれる可愛い妖が出ますよね。

沖野:はっ……。もしかしたら、あの時の女の人の声も鈴彦姫的なやつかな? 酔った僕を家まで導いてくれる感じだったとか? 当時は声が出ないくらい怖くてめっちゃ早歩きで帰りましたけど。

山下:鈴彦姫だったら、家に着くまで見守ってくれてたかもね(笑)。

“筋肉おバカ系”な僕が知的でクールな役を…?

――アニメの『しゃばけ』で皆さんが 共演すると知った時、どう思われましたか?


アニメ『しゃばけ』で一太郎を演じる山下大輝さん

山下:僕は二人と以前から面識はあって、特に(八代)拓は同時進行で他の現場でも一緒になっていたので、どんな芝居をするかも何となくイメージはありました。ただ、沖野さんの場合、他の現場では“猪突猛進”みたいな大きい声の元気キャラだったので、知的でクールな仁吉をどう演じるのか楽しみでした。

沖野:収録後は毎回声が枯れてたからね(笑)。僕は、山下さんが若だんなを演じると分かった時に「ああ、ぴったり!」と思いました。過去には守ってあげたくなるような役を演じられていたのも見ていたので、自分が支える一太郎が山下さんになって、「うわ、いいな」と思いました。拓さんとは、この現場で初めてなんですが、かっこいいイメージだったんですよ。なので、クールな仁吉役は拓さんじゃなくて僕なのか……?って。僕自身も普段は“筋肉おバカ系”なので(笑)。

八代:確かに、どっちかというと(沖野)晃司さんのキャラクター的には佐助のイメージなのかもしれないですね。

沖野:そうそう! だからクールな役で「あっ、あれ?(笑)」って思いながらも、僕が一太郎のお母さんを、拓さんがお父さんを演じる感じなのかなとイメージしながら、収録を楽しみにしてました。

八代:僕もワクワクしてました。一太郎は、体があまり強くないけど思慮深くて好奇心旺盛なキャラクターなので、僕の中で(山下) 大輝さんのイメージとリンクするところが多くて、素敵なキャスティングだなって思っていました。大輝さんが演じる一太郎は、僕らに支えられるだけじゃなくて、引っ張ってくれる感じにもなりそうでワクワクしていました。

晃司さんは……、「すごく声に色気がある!」って思ってました。

沖野:あら(笑)。

山下:色気出ちゃってる?

八代:そうなんですよ(笑)。初めましてだったこともあって、パーソナルなところを存じ上げなかったからこそ、色気のある声が仁吉のイメージにすごくハマっているなと最初に喋った時にすぐ思いましたね。

カリスマ性のある病弱な「若だんな」と、父母みたいな「兄や」たち

――それぞれが演じるキャラクターについて、もっと詳しく教えてください。


アニメ『しゃばけ』で仁吉を演じる沖野晃司さん

山下:僕が演じる一太郎は、江戸で廻船問屋兼薬種問屋を営む大店(おおだな)の息子で、御曹司のような生い立ちの少年です。「若だんな」として周囲の期待を背負うんですけど、体が弱いこともあって、その期待に十分に応えられてない自分が嫌だという部分もあります。

だけど、芯がめちゃくちゃしっかりしてる子で、自分がやりたいと思ったことや、しなくちゃいけないことを決めると、本当に頑固だなって思うくらい突き通す力を持っているんです。それに、体が弱いからってみんなに頼るんじゃなくて、この体でもどうにかしなくちゃというところに「カリスマ性のある子なんだな」って思ってました。

めちゃくちゃ頭も回る子なんですけど、仁吉や佐助ら兄やたちに怒られることを承知の上で、大胆なことをやっちゃうようなメンタルの強さもありますね(笑)。それでも、周囲にちゃんと感謝の気持ちを持ち続けている素敵なキャラクターです。

沖野:仁吉は人ではなく妖ですが、とても人間らしい。「若だんな、若だんな」ってみんなに優しく声をかけてもらえる一太郎に対して、「ダメでしょ!」ってビックリマークで喋れる唯一のキャラかもしれません。お説教が“最大の武器”でもあります(笑)。僕は、世話を焼きながら口うるさく小言を言ってくるお母さんみたいだなって思います。

八代:お母さんの仁吉に比べて僕の演じる佐助はお父さんみたい。快活で細かいことをそんなに気にしない性格なのと、腕力があるのでいざという時に頼りになるし、安心感もあります。でも、いつも優しくて元気なお父さんだからこそ、本当に怒った時の迫力はすごい。

ただ、やっぱり妖なので、どこか人間とズレた行動をするんです。人間からすると「え、そこまでやるの?」って思うくらいにやりすぎちゃうことも。その根底には、妖として生きてきた感覚の他にも、一太郎のためにっていうピュアな思いも感じます。

取材・文:Book Bang編集部

Book Bang編集部

2025年10月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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