掲載日
2025年9月28日
映画『プラダを着た悪魔2』の撮影真っ最中のメリル・ストリープがドルチェ&ガッバーナのフロントロウに姿を見せ、土曜のミラノは熱気に包まれた。この高揚感あふれる空気のなか、ミラノのデザイナーたちは景気回復への期待をにじませ、ひときわ楽観的な姿勢を示した。来たる夏に向けては、軽やかさと遊び心への回帰を掲げ、生命力に満ちたクリエイションを提案している。2026年春夏レディス・プレタポルテは、ディテールやテクスチャー、プリントが豊かで、しなやかかつカラフルな装いが主役となる。なかでも、フェラガモ、ステラ・ジーン、MSGMがその筆頭だ。
コレクションを見るフェラガモ、2026年春夏コレクション – ©Launchmetrics/spotlight
品格、官能、躍動…2022年からマキシミリアン・デイヴィスがデザインを率いるフェラガモは、ラグジュアリーとエレガンスのあり方を磨き上げつつ、リポジショニングを進めている。洗練されたシルエットと上質な素材は、今回も同メゾンのワードローブを形づくる鍵だ。
今季、この英国人デザイナーは、これまで以上に色と質感のミックスを楽しみ、フェミニンとよりマスキュリンな二つの軸で展開する。
テーラリングのパートはダークトーンで、ほとんど冬物さながらの厳格でストイックなムード。ビッグコートやトレンチコート、一連のスーツが並ぶ。とろみのあるワイドパンツに、身体を包むようなタキシードジャケットを合わせ、フリンジ付きの長いサテンのスカーフでウエストをマークするルックも登場。ときにパジャマやガウンの趣を帯び、いっそうのリラックス感を漂わせる。レザーも顔を出し、たとえばレザーのタンクトップにスエードのストレートスカートを合わせたり、半袖のリトルブラックドレスをビニール素材で仕立てたりしている。
もう一方のパートは、透明感のある極薄素材で、洗練された官能を描き出す。前身頃に縦スリットを入れたオーガンザのトップスや、レースにサテンのインサートを施したスリップドレスなどがそれだ。シルクドレスは膝上丈で、ときに床まで揺れる長いリボンや繊細なフリンジへと続く。このフリンジのディテールは、ときおり脇や手首も縁取り、1920年代の流麗に揺れる装いを想起させる。
コレクションを見るステラ・ジーン、2026年春夏コレクション – ©Launchmetrics/spotlight
3年ぶりにミラノのランウェイに復帰したステラ・ジーンは、色彩とクラフツマンシップの豊かさに満ちたコレクションを披露。異文化をミックスしたファッションで知られるイタリア系ハイチ人のデザイナーは、今回はブータンへ赴き、現地の女性職人たちに伝統的な手法で多彩なピースを製作してもらった。
たとえば、手織り機で織り上げる伝統的な小さなテゴジャケットや、長方形の布を体に巻き付けるキラドレス。ほかにも、イラクサ繊維で織ったノースリーブのコートには、収穫から織りまでの製作工程を、鮮やかな色のウール糸で刺繍している。
ビタミンカラーと巧みなプリント、手描きのモチーフが躍るコレクションは、クラシックなピースと、複雑な織りのエプロンやビスチェとしてまとうタペストリー、腰に巻いてスカートとして着るラグなど、エスニックなタッチのユニークなクリエイションを巧みに融合。モデルたちは、銃士風に履いた丈の高いフィッシャーマンブーツに、色鮮やかな刺繍ドレス、ひとつひとつ異なる麦わら帽子、大ぶりの貝殻ネックレスという装いで登場した。
ショーの最後を飾るステラ・ジーン – ©Launchmetrics/spotlight
ステラ・ジーンはこれまでも、ハイエンドのレディス・プレタポルテで、消滅の危機に瀕する職人技を前面に押し出し、世界各地でその継承に取り組んできた。「伝えたいことができたらランウェイに戻る、と話していました。生産のバリューチェーンを守るための具体策を2つ携えて、今戻ってきました。クラフト系ファッション製品すべての付加価値税の引き下げと、職人たちが自己認証を活用できるようにすることを提案します」と、デザイナーはバックステージで語る。
ショーの最後、ステラ・ジーンは「Grazie, Mr Armani」と記した白いTシャツを掲げて登場。これは2013年、彼女を支援し、ミラノでの初ショー開催をかなえてくれたジョルジオ・アルマーニに敬意を表して着用していたものだ。「彼に最後のオマージュを捧げたかったのです。彼はファッションのために多大な貢献をしてきました。彼のおかげで、“メイド・イン・イタリー”は世界の真のパスポートになったのです」と彼女は語った。
コレクションを見るMSGM、2026年春夏コレクション – ©Launchmetrics/spotlight
マッシモ・ジョルジェッティは、ミラノ中心部のブティックを、土曜のショッピング真っ只中に、ガラス張りの大きなバックステージ兼フォトスタジオへと変貌させ、通行人が広いショーウィンドー越しに、巨大な水槽を覗き込むような感覚で、フィッティングやメイク、撮影などファッションショー準備のさまざまな工程を見られるようにした。
「ブティックをすべての人に開いて、メゾンとチームを称えたかったのです。ここは象徴的な場所でもある。私たちが働き、ファッションを売る場所だから」と、約15年前にこのレーベルを創設したクリエイターは説明する。
デビュー当初のストリートで奔放な少女像は、いまや若い女性へと成熟。相変わらずフレッシュで陽気なスタイルながら、そこにひとさじの洗練が加わった。ワードローブには、コットンポプリンのエレガントなクチュールライクのフレアドレスやドット柄のシフォンドレス、杢調のショートコートやダッチェスサテンの花柄コートまでが揃う。欠かせないカーディガンは、ピンクやオレンジのポップな色合いで、メタリックスタッズを飾っている。
いまこの瞬間に根差したモードを提示するのがマッシモ・ジョルジェッティ。モデルたちはブティックを出て隣の通りへと歩み出し、観客の前を小脇にバッグを抱えて進む—まさにリアルライフそのままに。彼女たちはキュートなドレスやタータンのミニスカート、柄をミックスしたハイブリッドなTシャツをまとい、マリンボーダーにシルバーのピースを掛け合わせて遊ぶ。ボーダーのクロップドニットを白いマキシシャツとワイドパンツにさっと重ねるだけで、スタイルは十分サマになる。