2025年9月4日から7日にかけて、東京・明治神宮野球場で乃木坂46が「真夏の全国ツアー2025」を開催した。OTOTOYでは、その千秋楽となるDAY4の模様をお届けする。
2014年に始まった神宮ライブは、今年で記念すべき10回目。グループの節目を象徴するメモリアルな舞台となった。。さらに今年からはこの春より加入した6期生も初参加。歴史を背負いながらも、新たな可能性を宿す乃木坂の“現在地と未来”がここに刻まれた。
影ナレは菅原咲月と瀬戸口心月が担当。「神宮最終日!全部出し切れー!!」という叫びを合図に、場内が熱を帯びていく。恒例の「OVERTURE」が流れるなか、最新シングル「Same numbers」でセンターを務める賀喜遥香の姿とともに「全力で行くよ、情熱の近くまで」というメッセージが映し出されると、スタジアムは歓声で震えた。
ライブの幕開けを飾ったのは「君に叱られた」。楽曲を象徴する“王冠”を掲げるメンバーの姿に、会場は一瞬で乃木坂色に染まる。続く「ジコチューで行こう!」では、賀喜と遠藤さくらの“かきさく”コンビによる、大胆かつ仲睦まじすぎるやりとりに明治神宮野球場は割れんばかりの大歓声を呼び込んだ。
夏の定番「裸足でSummer」では、川﨑桜が「メロメロにしちゃーうぞ♡!」と可憐に煽ると、「ガールズルール」では一ノ瀬美空が卒業した先輩からバトンを受け継ぐように観客を鼓舞。次世代を背負う覚悟と堂々とした佇まいが印象的だった。序盤ブロックのラストは「好きというのはロックだぜ︕」。タオルが一斉に振られ、まるでフェスのような熱気が球場を包み込んだ。コール&レスポンスで響く「努力!感謝!笑顔!」「うちらは乃木坂!上り坂!」「乃木坂!大好き!」という乃木坂46の円陣でお馴染みの掛け声が、会場の一体感をさらに高めていった。
序盤のMCでは、弓木奈於が自身にとって神宮が特別な場所であることを明かした。「私、昔から乃木坂が結成当初から大好きで、でもやっぱり当時のお小遣いとかちょっと世知辛いじゃないですか、ちょっと切り盛りするの難しくて、なかなかライブに行けなかったんです。そんな中で、初めて乃木坂のライブに足を運んだのがこの神宮でした」と振り返る。
さらに、観客としてステージを見守った思い出を回想。「そのとき、メンバーさんがフロートに乗って巡回してくださっていて、私も一生懸命手を振ったんです。そしたらなんと白石麻衣さんと目が合ったような気がして…。真相はわからないですけど、その瞬間がとても嬉しくて、次の日もずっと幸せでした」と語り、当時の感動を笑顔で伝えた。
弓木の白石麻衣と目が合った瞬間の感動を語るその姿は、まさにファン目線そのもの。今はその神宮の舞台に立ち、グループの一員として大歓声を浴びる姿とのコントラストが、乃木坂46の時間の積み重ねを実感させた。
中盤ブロックは、近年の楽曲を通じて“最新の乃木坂46”を提示する流れへ。井上和と中西アルノがWセンターを務める「ネーブルオレンジ」では、客席がタイトルにちなんだオレンジ色に輝き、温かな空間を生み出した。続いては6期生が後方ステージに登場。「なぜ僕たちは走るのか?」を神宮のステージで披露。まだあどけなさの残る表情と初々しい動き、それでも全力で放つエネルギーは会場を大きく揺らした。その輝きは、そのまま乃木坂の未来を照らすようだった。
中盤をさらに熱くしたのは、最新シングルから派生したユニット曲「ってかさ」。遠藤さくら、小川彩、賀喜遥香、川﨑桜、林瑠奈、弓木奈於の6名が登場し、脱力系ラップと緩やかに響く〈ってかさ〉のリフで、これまでの乃木坂にはなかったフリーキーな魅力を提示する。観客からの「Hey!」というレスポンスが飛び交い、球場に新しい風が吹き込んだ。そこから一転、「全員声枯らせー!!!」と金川紗耶が叫ぶと、アンダー曲「不道徳な夏」へ。爆発的なエネルギーを放ち、会場全体を揺らすその熱量は、乃木坂46のライブにおける新たなアンセム誕生を予感させた。
続いてのVTRでは、「乃木坂46、ヒロインは全員です」というメッセージとともに、メンバー一人ひとりの名前が読み上げられる。そこからピアノ伴奏のみで始まったのは「君の名は希望」。6期生の森平麗心、海邉朱莉、鈴木佑捺がリレー方式で歌い紡ぐ姿は、世代を越えて継承される“乃木坂らしさ”を体現していた。希望を探し続ける歌詞が、彼女たちの透明な歌声と重なり合い、その名が示す通り観客に確かな“希望”を刻み込んだ。
その余韻を引き継いだのは「錆びたコンパス」。田村真佑、金川紗耶、松尾美佑、矢久保美緒、黒見明香、岩本蓮加が、迷いや孤独を抱えながらも進む姿を重ね合わせるようにパフォーマンス。観客はその姿に共感し、胸を打たれた。さらに〈8th YEAR BIRTHDAY LIVE〉ぶりに披露された「ぼっち党」では、久保史緒里、生田絵梨花、桜井玲香が務めてきたオリジナルを、弓木奈於、岡本姫奈、冨里奈央の3人が継承。曲間には、冨里の「クリスマスにはケーキを2個買って帰ります。冨ぼっちです」、岡本の「ChatGPTと毎晩話していたら制限が来ちゃって、泣く泣く課金しました。岡ぼっちです」、そして弓木の「占い師に運命の人は70代で出会うと言われました。弓ぼっちです」のセリフが光る。そのユーモラスで独特な空気感が加わることで、楽曲に新たな色が宿った。
川﨑桜、奥田いろは、林瑠奈、伊藤理々杏、柴田柚菜、佐藤璃果、吉田綾乃クリスティーによる「あんなに好きだったのに…」に続く「ボーダー」では、マリンルックに身を包んだ小川彩、菅原咲月、五百城茉央、筒井あやめが夏らしい装いで登場。楽曲に新たな息吹とメッセージを吹き込んだ。
そして遠藤さくら、梅澤美波、池田瑛紗の3人による「ごめんねFingers crossed」では、立ち上る炎の中、強さの奥に見せる笑顔が観客の心を揺さぶった。時折笑顔を見せながら歌い踊る遠藤の姿は、この楽曲を通して彼女がいかに進化していったかを感じさせた。
続く「ひと夏の長さより…」では、久保史緒里、井上和、中西アルノが情感豊かに歌い上げる。夏の終わりを思わせる切なさと共に、久保が「来年の夏、この場所で会いましょう!」と語りかけると、これまで乃木坂46が神宮で紡いできた記憶と未来への約束が重なった瞬間だった。このブロックのラストとは「Sing Out︕」。
後半は“10thメモリアルソング”「真夏日よ」を全員で披露。声優・松岡禎丞によるナレーション映像の後、夏の夜空を背景にメンバー全員が歌い上げると、会場は一瞬で感動に包まれる。ドローン夜空に浮かび上がり、歌詞のフレーズやメンバー名を描き出すと、観客の掛け声とシンクロする新しいコール&レスポンスが完成した
ライブはここからクライマックス。「Monopoly」「ありがちな恋愛」とグループの持ち味である、エモーショナルな空気を作り出すと、「制服のマネキン」「Actually…..」では、鋭さの中に熱を秘めたパフォーマンスで観客を圧倒。クールなサウンドに乗せて全身で放たれる情熱が、ライブに大きなうねりを生んだ。そこから「夏のFree & Easy」「おひとりさま天国」へと続き、メンバーはフロートに乗って客席を周回。間近に届けられる笑顔に、観客は「すきで!すきで!たまらない!乃木坂いないと生きてけない!」と声を揃える。さらに「I see…..」では、全員で織りなす陽気なパフォーマンスが炸裂。長いアウトロではメンバー同士が無邪気にじゃれ合い(すぎているメンバーも)、スタジアムを大きな幸福感で満たした。
ライブの終盤のMCでは、4期生の賀喜遥香が、公演中のMCでこの夏に掲げていた目標や思いを明かした。
賀喜はまず、先輩である3期生への思いを口にする。「3期生の皆さんは、これまで9年間、本当に多くのものを背負って活動されてきたと思います。今年の夏は、少しでもその重荷を下ろせるように、私が背負えるようにと思っていました。不安も心配もなく、ただ楽しんでほしいと願っていました」
続いて、同期である4期生やスタッフに向けて。「加入してからずっと支えていただいて、迷惑や心配をかけてきたことも多かったと思います。今年こそ、“賀喜がセンターなら安心だ”と思ってもらえるようになりたいと考えていました」と語る。
さらに後輩メンバーへは「安心して挑戦してほしい」とエールを送り、ファンに向けても「かっきーがセンターでよかった、安心だと思って心の底からライブを楽しんでほしい」と呼びかけた。
その一方で、プレッシャーや責任に押しつぶされそうになる瞬間も多かったと明かす。「何度ステージに立っても慣れることはなく、夜に泣いてしまうこともありました。神宮公演では“泣かない”と決めていたのに、結局4日間ずっと泣いてしまって…。悔しさや不安、安心からくる涙もあったと思います」
しかし、最終日を迎えた今、ファンやメンバー、スタッフの笑顔を見て「少しは目標を達成できた」と胸を張った。「この夏は本当に楽しかったです。たくさん支えてくださった皆さんのおかげです。本当にありがとうございました」最後に「皆さんに愛と感謝を返したい」と語り、本編ラストを飾ったのは最新シングル「Same numbers」とつなげる。その力強いパフォーマンスで、乃木坂46の“現在地”を鮮やかに刻み込んだ。そして、真夏の終わりに、この公演の大成功を祝福するような花火が上がり、この日のライブを彩った。
アンコールでは、一ノ瀬美空が“エンゼルみーきゅん”として天使姿で登場。続いて“小悪魔さくたん”こと川﨑桜が現れ、2人のシュールな掛け合いから声出し企画が始まる。「ちゃんと声出ししないと松尾さんに怒られちゃいますよ!」と観客を煽ると、天使軍と悪魔軍に分かれ「のーぎざか!」「ふぉーてぃーしっくす!」のコール合戦が展開された。
さらに「みーきゅんは?」「まーじめ!」「さくたんの!」「しゅわめろぼいす!」と互いを褒め合う一幕も。恥ずかしさに照れながらも、再び大きな声でメンバーを呼び込むと、フロートに乗ったメンバーが再登場。「チートデイ」「他人のそら似」、そして4期生楽曲「ジャンピングジョーカーフラッシュ」をメンバー全員で会場を熱狂の渦に巻き込み、スタンド席まで一体感を広げていった。
最後のMCでは、最初にマイクを握ったのは、ツアーに初参加した6期生・瀬戸口心月。
「6期生楽曲の2曲目を披露できたり、誕生日をツアー中に迎えたり、本当に忘れられない夏でした」と笑顔を見せる一方、「一年前は配信で見ていただけの神宮に、今こうして自分が立っているのは奇跡ではなく、先輩方やファンの皆さんが築いてきた道があるから」と力強く語った。そして「また必ず帰ってきたい。その時は今日よりもっと大きい自分でありたい」と決意をにじませた。
続いてコメントしたのは4期生・遠藤さくら。「神宮は、夏の終わりから秋の始まりの景色を一緒に駆け抜けられる特別な場所」と表現し、「10回目の神宮で、ここに立つことに自信を持てた。必要とされているから堂々と歌っていいんだと思わせてくれるライブでした」と胸の内を明かした。さらに「未来を今、作っている途中。これからも手を取り合って歩んでいきたい」と、仲間やファンとの絆を強調した。
この日の公演では、センターを務めた賀喜遥香を中心に、同期や後輩が支え合う場面も印象的だった。キャプテンの梅澤に呼ばれた賀喜は、いつもよりさらにハスキーになった声で「はぁぃっ!!」と応える。賀喜はこの公演ではしゃぎすぎたというが、その声に今年のツアーの成功を物語ってると感じた。梅澤から「ずっと笑顔で、不安を抱えながらも支えてくれた」と労いの言葉が贈られると、賀喜は涙をこらえながら「最高に楽しかった」と振り返った。
アンコールのラストは、メンバーと観客が声を合わせて「乃木坂の歌」を合唱。笑顔と涙が交錯する中、最後は来年100周年を迎える明治神宮球場での再会を約束し、「今年の夏は幸せでした!」という賀喜の言葉とともに、本編は幕を下ろした。
しかし、終演のはずが観客の熱は冷めやらない。大きなアンコールの声に応えて、メンバーが再びステージに登場。ダブルアンコールとして「君に叱られた」を全力でパフォーマンスした。ナイターの光が煌々とステージと客席を照らす中、賀喜と梅澤が「私たちやり切ったよね」と健闘を称え合い、最後は「今年の夏もありがとうございましたー!」とマイクを通さず、“地声”で感謝を叫ぶ。
その声に呼応するように、観客の拍手と歓声が夜空に響き渡った。10度目の神宮ライブは、乃木坂46にとっての大きな節目であり、また新たな始まりを告げる瞬間となった。
取材&文:ニシダケン
撮影:鈴木健太(KENTA Inc.)
乃⽊坂46 真夏の全国ツアー2025
@東京 明治神宮野球場
9⽉7⽇(⽇) DAY-4 セットリスト
0 OVERTURE
1 君に叱られた
2 ジコチューで⾏こう︕
3 裸⾜でSummer
4 ガールズルール
5 好きというのはロックだぜ︕
6 ネーブルオレンジ
7 なぜ 僕たちは⾛るのか︖
8 ってかさ
9 不道徳な夏
10 君の名は希望
11 錆びたコンパス
12 ぼっち党
13あんなに好きだったのに…
14 ボーダー
15 ごめんねFingers crossed
16 ひと夏の⻑さより…
17 Sing Out︕
18 真夏⽇よ
19 Monopoly
20 ありがちな恋愛
21 制服のマネキン
22 Actually…
23 夏のFree & Easy
24 おひとりさま天国
25 I see…
26 Same numbers
ENCORE
EN1 チートデイ
EN2 他⼈のそら似
EN3 ジャンピングジョーカーフラッシュ
EN4 乃⽊坂の詩
WEN 君に叱られた