「フェティコ」2026年春夏コレクションから PHOTO:KO TSUCHIYA

⾈⼭瑛美デザイナーが手掛ける「フェティコ(FETICO)」は、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で2026年春夏コレクションを発表した。ブランド設立5年目を迎えた今シーズン、タイトルスポンサーの楽天グループによる若手支援プログラム「バイアール(by R)」に選出され、国立代々木競技場第二体育館でショーを行った。

「バイアール」の発表からショー開催までの1カ月の間に、ブランド初の写真集刊行、ワコール「ユエ(YUE)」や「スリー(THREE)」とのコラボ発表、第43回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞の受賞と「フェティコ」のニュースが続いた。ファッションの枠を超えた評価と高まる注目を裏付けるかのように、会場には業界関係者に加え、著名人ファンの姿も多く駆けつけた。

「フェティコ」2026年春夏コレクションから PHOTO:KO TSUCHIYA

今季はブランドの根幹にある“女性の奥深さ(The Depth of Her)”を再考。ドイツの現代美術家レベッカ・ホルン(Rebecca Horn)と、フランスの写真家イリナ・イオネスコ(Irina Ionesco)の作品を着想源とした。それらの作品に登場する羽根や放射状のモチーフ、フリンジやプリーツ、ダマスク柄といった素材に加え、顔や目を隠す演出もオマージュし、2人の共通点とする身体の可能性を探る表現方法や退廃的な美学をヒントに、1920年代アールデコやビンテージランジェリーのディテールを現代的なスタイルに昇華した。

自信と美しさを映すランジェリールック

「フェティコ」2026年春夏コレクション PHOTO :SEIGO ISHIZAKA

「フェティコ」2026年春夏コレクション PHOTO :KO TSUCHIYA

「フェティコ」2026年春夏コレクション PHOTO :KO TSUCHIYA

ショーは、官能美あふれるオールブラックのランジェリーシリーズで幕を開けた。今季を象徴するファーストルックは、胸元をレースで切り替え、裾に放射状のプリーツを配したミニドレス。全身を覆うリバーレースのブラウスや、さまざまなレースを職人の手でつなぎ合わせたドレスは、肌や身体のシルエットを大胆に見せながらもセンシュアルな透明感を生み出している。

続くルックはやわらかな生地をぜいたくに用いた、全身をやさしく覆うフルレングス中心のドレス群。バイアスカットによる優美なドレープと落ち感が映えるハンカチーフヘムのドレス、レーヨンフリンジを胸元に配したトップス、背中を大きく開けたカットアウトドレスなど、所作や後ろ姿まで意識させる「フェティコ」らしいアプローチが随所に映える。

「フェティコ」2026年春夏コレクションから PHOTO :KO TSUCHIYA

「フェティコ」2026年春夏コレクションから PHOTO :KO TSUCHIYA

「フェティコ」2026年春夏コレクションから PHOTO :KO TSUCHIYA

「フェティコ」2026年春夏コレクションから PHOTO :KO TSUCHIYA

「フェティコ」2026年春夏コレクションから PHOTO :KO TSUCHIYA

突如差し込む鮮やかな朱赤のドレスには、桐⽣のジャカード織りで作ったバラをちりばめたり、首周りなどにプリーツを施していたり、シンプルな色使いにも“女性の奥深さ“を感じさせるデザインが目を引く。また、オーガニックコットンを使⽤したブルーのデニムは、ダマスク柄をジャカード織りでデザインしたジャケットや白いプリーツペプラムを添えたビスチエなどで登場。構築的なシルエットのデニムもまた、今季の物語を紐解く重要なシリーズとなった。

終盤はベージュやアイボリーを基調にしたドレスやテーラードルック。レースやシフォン、フリンジなどを重ねることで、立体感と女性らしさを演出する。ナイロンウールツイルのロングコートや、ドレープを効かせたラップジャケットは、うっすらと肌が透けるほどの軽やかさを持ち、涼やかな印象を残した。

ショーでは、ブランド初のアイコンバッグとする“アーチ(Arch)”を披露。アーチ状のフォームを特徴に、環境に配慮したLWG認証のイタリア製レザーを使用し、日本で製作した。100%クロムなめしにより、しなやかな質感に仕上げた。ブラックとブラウンの 2 ⾊展開で、スモールとラージの 2 サイズをそろえる。

着想源を越え、独自の女性像を確立する“フェティコ”

「フェティコ」2026年春夏コレクションから PHOTO :KO TSUCHIYA

「フェティコ」のクリエイションは、もはや着想源とする著名な女性や彼女たちの作品にとらわれてはいない。舟山デザイナーのニックネームにも由来する“フェティコ”という女性像がコレクションにしっかり映し出されているし、彼女自身もまた、着想源とする女性たちと同じように、ファッションを通じて女性の美を探り続ける存在だからだ。今季について、舟山デザイナーは「かわいいだけでなく、ストイックで、ユニーク。それでいて美しい。そう誇れる仕上がりにした。⼥性の奥深さを探求してきた 5 年間の軌跡であり、纏う⼈々の⾃由と⾃⼰愛を後押しするエールを込めている」と語る。彼女の確かな哲学によって、現代女性の奥深さは鮮明に照らし出されている。

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