東京のファッションシーンにとって、いまや年に2度訪れる風物詩となった「Rakuten Fashion Week TOKYO(楽天ファッション・ウィーク東京)」。ストリートとハイエンド、伝統と革新が交錯するこの舞台は、単なるコレクション発表の場ではなく、次世代の価値観や美学がリアルタイムで更新される現場だ。今季も、国内外から注目を集める全25ブランドが参加し、東京ならではの熱気を放っている。そんな中、『Hypebeast』では独自の視点でフィーチャーすべきブランドをセレクト。単なるルックの紹介やトレンドの分析にとどまらず、デザイナー自身の言葉からそのクリエイションの核に迫る短期連載企画を敢行する。題して“東京デザイナーに訊く10の質問”。創作の源泉から日常のインスピレーション、そして未来のビジョンに至るまで、彼らのパーソナリティを掘り下げることで、ランウェイの向こう側にあるストーリーを明らかにしていく。
今回は、〈Chika Kisada(チカ キサダ)〉デザイナーの幾左田千佳。幼少期よりクラシックバレエを学んでいたという彼女は、バレエのエレガンス、パンクの生命力、その儚さと強さ、相反するイメージの融合から生まれる「強いエレガンス」をコンセプトに、2014年に〈Chika Kisada〉を設立。都市で生き続ける女性たちに、新しいラグジュアリーの形を提示している。2016年の『TOKYO FASHION AWARD 2017』受賞を皮切りに、2018年には『FASHION ASIA HONG KONG 2018』を受賞し、同年ミラノ・ファッション・ウィークに招待されランウェイを開催。2023年、2024年と続けて『Rakuten Fashion Week Tokyo』にてランウェイショーを行い、その存在感をさらに強固なものにしている。
Q1.2026年春夏シーズンのコレクションテーマを一言で表すと?
「Trace」です。
Q2.今回のデザインを進める上で、特にインスピレーション源となったものは?
毎シーズン通底している部分ではありますが、今季はとりわけ身体性・骨格・シルエットにフォーカスしました。
Q3.ブランドを始めたきっかけを教えてください
バレエで培った身体表現を、衣服を通じて新しい形で社会と共有したいと考えたことが出発点です。
Q4.Chika Kisadaの強みを教えてください
繊細さと構築性のバランスを兼ね備えている点です。
Q5.ファッションに興味をもったのはいつ頃ですか?
バレエに打ち込んでいた学生時代から、衣装が持つ力や演出性に強く惹かれていました。
Q6.ご⾃⾝の原点である“クラシックバレエ”の⾝体表現を、今季はどのようにデザインへ昇華しましたか?
これまで同様に身体の軌跡を可視化していますが、今季はさらに身体の存在感そのものに焦点をあて、輪郭やバランスを造形として引き出すことに挑んでいます。
Q7.尊敬するデザイナー、ライバルだと感じている(または共感する)デザイナーはいますか?(*他業種のクリエーターでも可)
特定のデザイナーというよりも、既成概念を超える勇気を示してきた先人たちに深く感銘を受けています。また、振付家のダミアン・ジャレによる身体の構造に挑む試みや、クリスタル・パイトによる感情を可視化する振付に、強い共感を覚えています。
Q8.東京ファッションウィークという舞台で発表する意義をどう感じていますか?
東京という街の多様性とエネルギーは、私のクリエイションにも通じるものがあります。その文脈の中で新しい表現を試みることに大きな意味を感じています。
Q9.今季のコレクションを通して、観客や着る⼈にどんなメッセージを届けたいですか?
「しなやかに強くあること」。相反する要素を内包しながらも、自分らしく立ち続ける姿を衣服で後押しできればと思います。
Q10.ブランドの今後の展望、または挑戦してみたいことは?
国境やジャンルを軽やかに超え、より多くの人々の心に触れながら、寄り添えるブランドへと成長させたいです。