「ムッシャン」2026年春夏コレクション
PHOTOS:SEIGO ISHIZAKA
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「ムッシャン」2026年春夏コレクション
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「ムッシャン」2026年春夏コレクション
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「ムッシャン」2026年春夏コレクション
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「ムッシャン」2026年春夏コレクション
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2026年春夏シーズンの「楽天 ファッションウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が開幕した。トップバッターは、主催団体の日本ファッション・ウィーク推進機構によるブランドサポートプログラム「JFW ネクスト ブランド アワード 2026」でグランプリを受賞した、木村由佳デザイナーによる「ムッシャン(MUKCYEN)」。インフルエンサーからデザイナーに転じ、独特の感覚を盛り込んで頭角を表している髪も眉もブリーチしたデザイナーによるブランドだ。
ブランド初のショーは、「ムッシャン」の独自性、いや特異性を存分に発揮した。描いた世界は、ある人には幻想的に見えるだろうし、別の人には儚げに映る。反対に強さの片鱗を感じた人もいるかもしれない。もしくは、ちょっぴり薄気味悪く思えた人もいるだろう。実際のコレクションも、ある人はセカンドスキンやコルセットゆえフェティッシュと捉えるだろうが、シャツやジャケットは解体・再構築しているからパンクもしくはアヴァンギャルドと解釈する人もいるだろう。繊細な素材を駆使してドレープを多用したドレスのようなトップスからはクラシカルなテクニックの確かな存在を感じるが、一方多くの洋服はスリットやボタン、ハーネスなどにより自由自在に着こなせるからカジュアルでフレンドリーなムードも同居する。かしこまった場面でも着用できそうなモード感も備えているが、反対に下着やワンマイルウエアのように体と最もインティメイト(親密)な緊密さも併せ持っている。
そんないかようにも解釈できて、いかようにも着こなせる洋服は、清濁併せ呑んだ混沌の時代、危機が常に存在するというプレッシャーや不安と同居しながらも楽しく暮らしたいと願う時代の、表現し難い心情や定義し難い時代感を表しているかのようだった。こうした心情や時代感を簡潔な言葉で無理やり定義するようなことはせず、“あやふや”なまま存在しても構わないと諭しているかのような、新しい多様性を表現している。
デザイナーの木村由佳は、「現実はあまりにもベールに包まれていて、息苦しくもあるし、魅惑的でもある。SF映画や占い、タロットカードでも、生と死は同様に常に並列されている現実。平穏に向かう道中は、平穏であることはない」と話し、「方程式のない、非論理的な時間の経過に浸れば浸るほど、私たちは本質的に価値と一貫性を導き出すことができる何かを探し求め、都会の喧騒や騒々しい世界に一寸の意味を見出す」と続ける。混沌とした時代がゆえ何もかもを含有したようなコレクションを生み出したが、そこからそれぞれが何かを感じ、自分の言葉で定義することにも意味を見出した。多様性を提示しつつ、それをいかように解釈しても構わないという違う種類の多様性も認める。新感覚のデザイナーは、ありきたりの多様性ではなく、そのさらに先にある異次元の多様性を表現した。
木村は、「今回は、いろんな場面で着られる洋服をイメージした」と話す。だが、その洋服はシンプルやミニマルとは異なっている。切る人によってはシンプルに着ることもできるが、それぞれには多様な思い、さまざまな可能性を詰め込んでいるかのよう。一言では表現し難いコレクションだが、それこそが、今の時代にフィットしている証なのかもしれない。