連載《ファッションハック》Vol.58 トップブランドのランウェイルックから読み解く
2025-26年秋冬シーズンのファッショントレンドは、時代にあらがう芯の強さがテーマに浮上してきました。優美さとタフ感を併せ持つ新スタイリングは「反骨のエレガンス」とも呼べそう。か弱いイメージを遠ざけつつ、艶やかさも忘れない――。強さと優美が共鳴するようなバランス感です。パリとミラノの両コレクションで披露された、トップブランドのランウェイルックから、6つのキーワードを手がかりに新トレンドの傾向を読み解きます。
【写真を見る】記事で紹介している魅力的なルックの数々はココからチェック! 各キーワードのイメージがぐっと深まるはず
■キーワード1:モダンノーブル(Modern Noble)
◇貴婦人ルックに動きやすさや強さをプラス
クラシック回帰の流れが強まっています。気高いノーブル感を帯びた貴族的なムードが台頭。ロマンチックな雰囲気も新シーズンの特徴になっています。でも、単に古風な貴婦人ルックではなく、動きやすさや強さを兼ね備えているのが2025-26年秋冬バージョンの傾向です。
「DIOR(ディオール)」はフリルをあしらった白いブラウスに、袖スリット入りのコートを重ねました。スリットからブラウスの袖がのぞいて華麗な着映えに。同じ素材で仕立てたバミューダパンツが動感を高めています。ブラウスの裾はウエストアウトして、軽やかでアクティブな印象を引き出しました。
■キーワード2:ジェントルハンサム(Gentle Handsome)
◇安らげるアウターで反骨マインドも表現
不穏な社会情勢が続く中、自らの身をしなやかに守るかのようなアウターが打ち出されています。体を包み込むアウターはしっかりしたぬくもりで、気持ちの安らぎをもたらします。レザーの硬質感は今を生きる女性たちの反骨マインドも映し出します。
レザーに強みを持つ「HERMÈS(エルメス)」はラムスキンとカシミヤを重ねたアウターレイヤードを披露しました。ブランケットのようなラムスキン・ジレの上からカシミヤ・ショートコートを羽織っています。シャツとパンツはグレーでそろえ、マニッシュなたたずまいに。縦に流れ落ちるシャープなシルエットが生まれました。
■キーワード3:レディーワイルド(Lady Wild)
◇たおやかさとワイルド感 女性の多面性を引き出す
たおやかさとワイルド感を交差させたスタイリングは、従来の役割意識にとらわれない、女性の多面性を物語ります。例えばレザースカートはフェミニン感とクールさが同居するアイテム。レディーライクでありながら、弱さを見せない装いは「着るエンパワーメント」のようです。
ミニマルで凜々(りり)しいルックを提案したのは「PRADA(プラダ)」。白シャツは襟ぐりが深く、ジャケット風の落ち着きを備えています。一方、ブラウン系のレザースカートは控えめなつやめきがシックで穏やか。リボンモチーフで愛らしさを添えました。奥深い風合いは経年変化を重ねたかのよう。風格を帯びたルックはオフィスにもなじみそうです。