timeleszの寺西拓人が、アニメ映画『迷宮のしおり』ではじめて声優に挑戦することが分かった。アイドルとして、そして俳優として目覚ましい活躍を見せる彼は、声だけの表現でいったいどのようなパフォーマンスを繰り広げるのだろうか。
【写真】新生timeleszは“演技力”
この2025年、寺西はもっとも注目を浴びている人物のひとりだといって問題ないだろう。いや、最注目の人物で間違いない。多方面で大きな反響を呼んだオーディション番組『timelesz project -AUDITION-』(Netflix)の「episode07」から登場という途中参戦組ながら、表現者としてのポテンシャルの高さと人間力で魅せ、見事にtimeleszの新メンバーに。もともとアイドルとしてキャリアをスタートさせ、俳優業をメインに活動してきていたが、timelesz加入のこの流れで彼の存在を認識した人は少なくないだろう。
『timelesz project -AUDITION-』への出演を機に認知度が急上昇し、その後もメディア露出の機会が急増。音楽番組のみならず、書店やSNSなどで頻繁に彼の存在を目にするようになった。2025年はミュージカル『ヒーロー』、ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』、「『新 画狂人北斎』-2025-」と舞台への出演が続き、日曜劇場『キャスター』(TBS系)の最終話にも登場。12月には初主演映画『天文館探偵物語』が公開となる。
まさに目覚ましい活躍。この一年のうちに上演された舞台はtimeleszへの加入以前に決まっていたもののはずだが、『キャスター』への出演はtimelesz加入後の反響を受けて決まったものだろう。物語のカギを握る“謎の男”という役どころであった。
そんな彼がはじめて声優を務める『迷宮のしおり』は、『マクロス』シリーズを手がけてきた河森正治監督による初のオリジナル劇場長編アニメーションだ。“歌”と“SF”と“三角関係”という河森監督のヒット作における“三種の神器”をベースに、現代人にとって欠かせぬスマートフォンをモチーフにした異世界脱出劇が展開していく。
異世界に迷い込む主人公・前澤栞の声を演じるのは、新しい学校のリーダーズのSUZUKA。スマホと人間の脳を直接つなぐ研究をしている大学生にして、国際的に注目される若き起業家の架神傑を寺西が演じる。異世界で奮闘する栞の物語において、架神傑はキーパーソンになるらしい。
先述しているように寺西は「俳優」として活動を展開していたが、timeleszへの加入によって正式に「アイドル」の肩書きを手に入れた。加入からまだ日が浅いとはいえ、アイドル活動の中で得るものは、俳優業で得るものとはまた違うはず。そこで得たものは、演じ手としての大きな武器になるはずだ。
たとえば、朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)に出演中の大森元貴の一番大きな肩書きは「ミュージシャン」だが、彼は劇中で役を演じている。大森が軸足を置いているのは音楽の世界だから、当然ながら演技経験が豊富だとはいえない。けれども歌唱や演奏を生業とする大森の演技には、彼特有のリズムがあるのを感じる。これがドラマ作品においては、ひとつの重要な“個性”として映るのだ。すると、ドラマの印象にだって影響を与えることになる。作品のアクセントになるのだ。『キャラクター』(2021年)や『はたらく細胞』(2024年)に出演したSEKAI NO OWARIのFukaseなどもまさにそうだろう。音楽シーンでの人気者を、ただドラマや映画に起用しているわけではないのだ。事実、彼らは話題を呼ぶ好演を刻んでいる。
俳優業とアイドル業を並行する寺西は、それぞれの活動が互いに影響し合っていくはず。演技にも反映されていくはずである。その過程を、私たちは観察し、堪能していけるのだ。『マクロス』を手がけてきた河森監督は、“アイドル”と馴染みが深い。表現は声だけに縛られてしまうが、『迷宮のしおり』でアイドル/俳優・寺西拓人が起こす化学反応というものもあるのではないだろうか。
折田侑駿