赤い着物 著者:横光 利一 読み手:松岡 初子 時間:15分30秒
横リーチ作 赤い着物 村の店頭府は雨の中を帰っていった。火の ついた検闘の光の下で梨の花が雨に打たれ ていた。 9は闇の中を眺めていた。先頭府の 雨がっぱの日だが、遠くへキラと光り ながら消えていった。 今夜はひどい雨になりますよ。お気をつけ 遊ばして。 旧の母はそう客に行ってお辞儀をした。 そうでしょうね。ではどうも色々 客はまた旅へ出ていった。 9は雨が降ると悲しかった。向こうの山が 雲の中に隠れてしまう。道の上には水が 溜まった。川は激しい音を立てて濁り出す 。枯は山の方から流れてくる。 雨コん降るなよ。屋根の虫が泣くぞよ。 旧は柱にほをつけて歌を歌い出した。 の起きた旅人が2人家の前を通っていった 。屋根の虫はちょうどその濡れた旅人の ミノのような形をしているにそういないと 旧は考えた。 甘れの音が早くなった。池の恋はどうして いるか。それがまた急には心配なことで あった。 雨コン降るなよ。屋根の虫が泣くぞよ。 外で客と話しているシャッフの大きな声が した。 間もなく角口の八の歯が車の方で 寄り動かされた。シャッフの持ったカジ棒 が玄関の石の上へ下ろされた。するとの中 からは夫人が小さい女の子を連れて降りて きた。 いらっしゃいませ。こんばんは。まあ、 大変なふりでございまして。さあ、どうぞ 。 旧の母は玄関の時計の下へ膝をついて夫人 に行った。 まあ、お嬢様のおらしていらっしゃいます こと。 女の子は眠そうな顔をして今日の方を眺め ていた。 女の子の着物は真っ赤であった。 の母は夫人と女の子とを連れて2階の5号 の部屋へ案内した。 旧は女の子を見ながらその後からついて 上がろうとした。 またお前はあちらへ行ってらっしゃいと母 はった。 は指を加えて階段の下に立っていた。 田舎宿の勝手元はこの2人の客で急に忙し そうになってきた。 密場あって まあ卵がないわ。姉さんもう卵がなくなっ てしまったのね。 かきよく旧の姉たちの声がした。茶の間で はどこが湯気を立ててなっていた。 は川に立って暗い外を眺めていた。 飛客の超沈の日が町の方から帰ってきた。 ビし濡れになった犬が首を垂れて影のよう に検闘の下を通っていった。 宿のものらの晩餐は遅かった。旧はご飯を 食べてしまうともう眠くなってきた。彼は 姉の膝の上へ頭を乗せて母のほれ毛を眺め ていた。 姉は沈んでいた。 彼女はその日まだ夫から手紙を受け取って いなかった。 しばらくすると今日の頭の中へ女の子の 赤い着物がぼんにやりと浮かんできた。 そのままいつの間にか彼は眠ってしまった 。 翌朝9はいつもより早く起きてきた。亀は まだ降っていた。家えの屋根は寒そうに 濡れていた。鶏は庭の隅に固まっていた。 9は起きるとすぐ2階へ行った。そして 午後の部屋の生事の破れ目から中を覗いて みたが布団の襟りから出ている丸まげとの 頭が2つ並んだままなかなか起きそうにも 見えなかった。 は早く女の子を起こしたかった。彼は子供 を遊ばすことが何よりも上手であった。 彼はいつも子供の止まった時に限ってする ように、また今日も5号の部屋の前を行っ たり来たりし始めた。 次には小さな声で歌を歌った。 しばらくして彼はそっと部屋の中を覗くと 夫人が1人起きてきて寝巻きのまま生事を 開けた。 坊っちゃんはいい子ですね。あのね、おば さんはまだこれから寝なくちゃならないの よ。あちら行ってらっしゃいな。いい子ね 。 は人を見上げたまま少し顔を赤くして背を ランカにつけた。 あの子まだ起きないの?もうすぐ起きます よ。起きたら遊んでやってくださいな。 いい子ねえ。坊ちゃんは 9は生事が閉まると黙って下へ降りた。母 はかの前で青い野菜を洗っていた。旧は庭 の飛び石の上を渡って潜水の恋を見に行っ た。恋は静かに物中に隠れていた。 は、ちょっと指先を水の中へつけてみた。 旧の眉毛には細かい雨が溜まり出した。 きちゃん、雨がかかるじゃないの。き ちゃん、雨がよと姉が言った。 2度目に9が5号の部屋を覗いた時、 女の子はもう赤い咲夜の着物を着て母親に ご飯を食べさせてもらっていた。 女の子が母親の差し出す箸の先へ口を寄せ ていくと旧の口も生事の破れ目の下で 大きく開いた。 はふとまだ自分がご飯を食べていないこと に気がついた。彼はすぐ下へ降りていった 。しかし彼のご飯はまだであった。 旧は裏の縁顔へ出て落ちる甘だれのしを 仰いでいた。 雨コン降るなよ。屋根の虫が泣くぞよ。 川は濁って太っていた。足の上をダバが車 を引いて通っていった。生徒の小さなバガ が遠くまで並んでいた。旧は弁当を下げ たかった。早くオルガを聞きながら消化を 歌ってみたかった。 きちゃんご飯よと姉が呼んだ。茶の前行く と旧の茶碗に盛られたご飯の上からはもう 湯が登っていた。 青い野菜は梅雨の中に浮かんでいた。 は小さい箸を取ったが、2階の女の子の ことを思い出すと、彼は箸を置いて口を 母親の方へ差し出した。 何よと母は聞いて今日の口を眺めていた。 ご飯?まあ、この子って ご飯よ。そこにあなたのがあるじゃあり ませんか。 母は1人ご飯を食べ始めた。 は引っ込めて少し膨れたが、すぐまた黙っ て箸を持った。 彼の腕の中では青い野菜がし折れたまま 泣いていた。 3度目に9が5号の部屋を覗くと女の子は ザ布トンをかぶって頭を左右に振っていた 。 お嬢ちゃん は廊下の外から呼んでみた。 お入りなさいなと夫人は言った。 旧は部屋の中へ入るとしばらく開けた生事 に手をかけて立っていた。 女の子は彼のそばへ寄ってきて、ああと 言いながらザブトンを胸へ押し付けた。 はトンを受け取ると女の子のしていたよう にそれを頭へかぶってみた。 へへと女の子は笑った。 は頭を振り始めた。顔を仕かめて下を出し た。それから目を向いて頭を振った。 女の子の笑い声は高くなった。はまろりと 横になると女の子の足元の方へ転がった。 女の子は笑いながら手紙を描いている母親 の肩を引っ張ってああと言った。 夫人は旧の方をちょっと見ると、まあ 兄さんは面白いことをなさるわねと言って おいて、また忙しそうに別れた愛人へ出す 手紙を書き続けた。 女の子は今のそばへ戻ると、彼の頭を1つ 叩いた。 は、あ、いたと言った。女の子は笑い ながらまた叩いた。あ、いた。あ、いた。 早急は叩かれる度ごに言いながら、自分も 自分の頭を叩いてみて、あ、いた、あ、い たと言った。 女の子が笑うと、彼は調子なお強く自分の 頭をピシャリピシャリと叩いていった。 すると女の子もたタと言いながら自分の頭 を叩き出した。 しかしいつまでもそういう遊びをしている わけにはいかなかった。旧は突然犬の真似 をした。そして高くワンワンと吠えながら 女の子の足元へ突進した。 女の子は怖そうな顔をしての頭を強く叩い た。はくるりとひっくり返った。えへへ とまた女の子は笑い出した。 するとキはそのままひっくり返りながら 廊下へ出た。女の子はますます面白がって の転がる後からついて出た。9は女の子が 笑えば笑うほど転がることに夢中になった 。顔が赤く熱してきた。えへ。いつまでも 続く女の子の笑い声を聞いているとはもう 止まることができなかった。笑い声に煽ら れるように廊下の橋まで転がってくると 階段があった。しかし彼にはもう油が乗っ ていた。彼はまた逆さになってそのを 折り出した。裾がまくれて白い小さな尻が ワンワンと吠えながら少しずつ下がって いった。 ええへ。 女の子は腹を波打たして笑い出した。23 、3段ほど降りた時であった。突然旧の尻 は打たれた鳥のように階段の下まで転がっ た。 階段の上では女の子は一層高く笑って 面白がった。えへ 物音を聞きつけて旧の母はかけてきた。 どうしたの?どうしたの? 母は抱き上げてゆってみた。の顔はゆられ ながら青くなってべたりと母親の胸へつい た。痛いか?どこが痛いの? 旧は目を閉じたまま黙っていた。 母は抱いてすぐ近所の医者のところへ 駆けつけた。医者は旧の顔を見ると、あと 低く声をあげた。 旧は死んでいた。 その翌日もまた雨は朝から降っていた。 町へ通う飛客の煮の上には破れたっぱが かかっていた。川には山からイカ田が流れ てきた。どこかの坂倉からは坂桶の輪を 叩く音が聞こえていた。 その日夫婦人はまた旅へ出ていった。 色々どうもありがとうございまして。 彼女は女の子の手を持って旧の母に霊を 言った。 ではご機げよろしく。 若い着物の女の子は車のの中へ消えて しまった。 山は雲の中に煙っていた。天だれはいつ までも落ちていた。 郵便客は旧の姉のところへ夫の手紙を 投げ込んだ。 夕暮れになるとまたいつものように店頭が 旧の家の門へ来た。 頭には新しい油が注ぎ込まれた。 梨の花は濡れ光った歯の中で白じと咲いて いた。 そして店頭府は黙って次の家の方へ去って いった。
赤い着物
著者:横光 利一 読み手:松岡 初子 時間:15分30秒
村の点燈夫は雨の中を帰っていった。火の点いた献灯の光りの下で、梨の花が雨に打たれていた。
灸は闇の中を眺めていた。点燈夫の雨合羽の襞が遠くへきらと光りながら消えていった。
「今夜はひどい雨になりますよ。お気をおつけ遊ばして。」
灸の母はそう客にいってお辞儀をした。
「そうでしょうね。では、どうもいろいろ。」
客はまた旅へ出ていった。
灸は雨が降ると悲しかった。向うの山が雲の中に隠れてしまう。路の上には水が溜った。河は激しい音を立てて濁り出す。枯木は山の方から流れて来る。
「雨、こんこん降るなよ。
屋根の虫が鳴くぞよ。」
灸は柱に頬をつけて歌を唄い出した・・・
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