コーセーのハイプレステージブランド「コスメデコルテ(DECORTE)」の成長が鮮明だ。2024年度の国内売り上げは過去最高を更新。コロナ禍が始まった20年から4年間で売上高は約2倍、顧客人数は約3倍に拡大した。10〜30代の若年層客の構成比も約4割から約6割へと高まっている。25年上半期(1〜6月)も前年同期比2ケタ増と好調を維持している。
ブランドの成長を支えるのは紛れもなく、21年に発売した“リポソーム アドバンスト リペアセラム(以下、“リポソーム”美容液)”(30〜75mL、8800〜1万7050円)の存在が大きい。23年には大谷翔平選手を広告に起用し、男性客や新規客を取り込み、全体で過去最高の売り上げを記録した。
21年に発売した“リポソーム アドバンスト リペアセラム”(30〜75mL、8800〜1万7050円)
CMで披露した“デコルテポーズ”
限定デザインの美容液“リポソーム アドバンスト リペアセラム”(全2種、各110mL、各2万2550円※数量限定販売)
24年はトライアルサイズや定期便、メンバーシッププログラムを導入し、新規客の獲得と定着の両面を強化。“リポソーム”美容液の売り上げは20年比で約3倍に拡大した。25年の上半期は、3〜5月の期間で大谷選手を起用したキャンペーンを実施。サンプリング、全国百貨店でのポップアップなどを行った。中でも新TVCMで披露した“デコルテポーズ”がドジャースのチーム内で大流行し、認知度を押し上げた。
6月には時計ブランド「フランクミュラー(FRANCK MULLER)」とコラボし、40代以上の層に訴求。通常ボトルの世代別の売り上げ構成比は、20代が25%、30代が24%、40代が21%、50代が20%、60代が10%と、40代以上で約半数を占めるが、同コラボ製品では7割を占める結果となり、狙い通りの世代を取り込んだ。結果、上半期の“リポソーム”美容液は、前年同期比2ケタ増となった。
次の成長軸は
ハイプレステージ化粧水
2期連続で過去最高の売上高を更新する「コスメデコルテ」が次に狙うのは、成長余地の大きいハイプレステージ化粧水市場だ。“リポソーム”美容液に続く成長ドライバーとして「ブランドを代表する化粧水」を掲げる。藤永あすかブランドマネジャーは、「グローバルのハイプレステージ市場で戦うには、化粧水カテゴリーの確立が不可欠。単品で支持を集めるヒーロープロダクトとして、顧客の獲得につなげたい」と説明する。
化粧水市場は近年、価格帯の二極化が進む。1万円を超えるハイプレステージでは、高度な機能や独自技術を備えた製品に需要が集まる。一方、5000円前後のボリュームゾーンでは安全性や低刺激性を重視した製品が支持を得ている。
加えて、かつて主流だったシリーズ使いから、アイテムごとに選ぶ「単品志向」へのシフトが鮮明になっている。成分や効果への関心も高まり、多面的なアプローチを打ち出せるかどうかが競争力を左右する。
同社はこうした市場環境を踏まえ、単品型高機能化粧水“ユース パワー エッセンス ローション”(150mL、1万6500円)を9月16日に発売する。美容液の効果を併せ持つ「次世代型の化粧水」とし、「永遠のテーマでもある“若返り”の願いを込めて訴求する」。
成長戦略の「最後のピース」
「コスメデコルテ」は、百貨店市場で各カテゴリーのシェアを着実に拡大している。美容液、クリーム、フェイスパウダーが首位、乳液、口紅、ヘア美容液が2位、リキッドファンデーションが3位と、主要アイテムはいずれも上位にランクインする(同社調べ)。
ブランド全体では現在、ハイプレステージ市場の本格攻略を戦略の柱に据える。21年には“リポソーム”美容液を軸にプレステージのボリュームゾーンで顧客層を拡大。さらに23年には“AQ”シリーズのスキンケアを刷新し、高単価・高付加価値の領域への展開を強めてきた。今回投入する“ユース パワー エッセンス ローション”は、成長戦略を完成させる「最後のピース」と位置づける。
新・化粧水の広告に
大谷選手起用は「当面なし」
9月16日発売の化粧水“ユース パワー エッセンス ローション”(150mL、1万6500円)
15年発売の化粧水“リポソーム トリートメント リキッド”(100mL、6600円/170mL、1万1000円)
5月発売の“AQ 毛穴美容液オイル”(40mL、1万1000円)
“ユース パワー エッセンス ローション”のプロモーションは、過去最高の販売実績を目指す。プレステージ化粧水市場でのシェア拡大に加え、独自の老化研究とリポソーム技術を融合した世界初の処方を訴求し、先端科学を備えたブランドイメージを浸透させる。
販売目標は、化粧水カテゴリーで最高実績を記録した“リポソーム トリートメント リキッド”(100mL、6600円/170mL、1万1000円)の初動3カ月実績に対し、数量ベースで約1.5倍を掲げる。百貨店や専門店ではすでに予約を受け付けており、今年5月に発売した“AQ 毛穴美容液オイル”(40mL、1万1000円)の予約実績を上回るペースで推移している。
プロモーションはデジタルを軸に、交通広告や雑誌タイアップ、KOLを活用した情報発信などを行う。初年度については同製品の広告に大谷選手を起用する予定はないとし、「まずは最先端サイエンスとテクノロジーを備えた製品としての認知拡大を優先する」(井口史生グループマネージャー)とする。
サンプリング規模も過去最大とし、百貨店や雑誌を通じてターゲット層へのリーチを強化。全国の百貨店・専門店で体験型イベントを展開し、売り場の活性化も図る。発売時には、化粧水に加え美容液やクリームを組み合わせた限定キットを投入。レビュー投稿を促す仕組みを導入し、購買促進につなげる。
グローバルでは14の国・地域で展開し、特に欧米と中国市場に重点を置く。ブランド認知を高め、プレステージ化粧水市場の成長を取り込む。