2025年、日向坂46にとって大きな出来事が相次いだ。14thシングル『Love yourself!』の活動をもって富田鈴花が、続く15thシングル『お願いバッハ!』をもって河田陽菜が卒業することを発表。けやき坂46(ひらがなけやき)時代からグループを支えてきた二期生の中でも、強い存在感を放ってきたふたりが、ほぼ同時期にグループを離れることになった。これは、ひとつの時代の幕が下り、新たな章が始まることを告げる出来事と言えるだろう。
【ブログ更新☀️ 河田陽菜】 日向坂46 河田陽菜 https://t.co/B6UpWhUZ2i #日向坂46 #河田陽菜 pic.twitter.com/dtPxgsggFG
— 日向坂46 (@hinatazaka46) August 4, 2025
ふたりの関係性を語る上で象徴的なのは、その役割の“対照性”だ。河田は控えめでマイペースなキャラクターながら、『日向坂で会いましょう』(テレビ東京系)では予測不能な発言や独特の間で笑いを生む“天然の仕掛け人”。ファンの間で“KAWADAワールド”と呼ばれるその感性は、2019年4月の番組初回から幾度も炸裂し、MCのオードリーを思わず笑わせる場面が何度もあった。企画中もどこかふわっとした佇まいを崩さず、淡々とした受け答えからふいに放たれるユーモラスな一言で空気を変える。2020年放送の「世間知らずちゃんの“はじめて”を温かい目で見守りましょう!」では、突然「話しかけんなクソが!」と笑顔で口にし、スタジオが爆笑に包まれた。また同年放送の「ひな川淳二の怪談ナイト」では、「あれは、8年前の秋頃だったでしょうか……秋頃だったでしょうか?」となぜか復唱。そうした瞬間は、意図して作られたものではなく、自然体から生まれたからこそ記憶に残る。
Leminoにて「日向坂で会いましょう」最新話の
見逃し配信が開始されました🎬
『帰ってきた ひな川淳二の怪談ナイト』👻
ぜひチェックしてみてください☀️https://t.co/Q5Y108s8Z7#Lemino#日向坂で会いましょう#ひなあい #日向坂46 pic.twitter.com/TWsEeuNEWs
— 日向坂46 (@hinatazaka46) July 21, 2025
一方、富田はリアクションの豊かさとコメント力が光るメンバーだ。SHOWROOMでの配信を始めた初期から続く“パリピちゃん”というキャラクターをはじめ、ラップや、松田好花とのユニット・花ちゃんズなど、多彩な活動で存在感を示してきた。誰とでもすぐ距離を縮められる人懐っこさもあり、番組外でも先輩/後輩の垣根を越えて会話の中心にいることも多い。そうした人間関係の広さは、グループ全体の雰囲気作りにも貢献してきた。『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)で現役女性アイドル初の“鬼レンチャン達成”を果たした歌唱力は、音程の正確さだけでなく、曲ごとのニュアンスにも表れている。さらに、2023年のミュージカル『ヴィンチェンツォ』でのホン・チャヨン役では、ヒロインとして歌と芝居を融合させた表現力で観客を魅了し、存在感を確立させた。表情や動きを自在に操る柔軟性は、彼女が経験を積み重ね、自らの引き出しを広げてきた証だ。
『日向坂で会いましょう』での掛け合いに戻ると、河田は静かに座っているだけでも絵になる“間”の持ち主で、突拍子もない反応が笑いを誘う。富田はテンポよくコメントを挟み、進行をスムーズに保つ。両者の相互補完が、番組にテンポを生み出し、ファンにとって安心感のある空気を作り出していた。
卒業発表当日、河田はブログで「23歳を区切りにしようというのを自分の中で決めていました」「色んな人生を歩んでみたいな、なんて気持ちが増えていきました」と綴っている(※1)。その言葉には、これまでグループで過ごしてきた時間への感謝と、未知の世界への好奇心がにじんでいた。一方、富田は「お芝居」という明確な次の目標を口にし、新しい舞台への意欲で輝いていた(※2)。歩む道は異なるが、いずれも前向きで、日向坂46で培った自信と覚悟が感じられる選択だった。