まだ探せるオールドステューシーT

 1980年創業という長い歴史を持つにも関わらず、今なおクールなイメージを保ち続けているストリートブランド「ステューシー(STÜSSY)」。ヴィンテージアイテムの人気も高く、当連載の第57回で紹介した1980〜90年代のフォトTシャツは、近年特に注目を集めています。

オールドステューシー Tシャツ

 オールドステューシーの人気アイテムの相場は、今やかなり高くなってしまいましたが、今回ピックアップした総柄デザインのTシャツは、1980〜90年代の個体でもまだ手に入れやすい価格のものが残っている、穴場的カテゴリーです。

オールドステューシー 総柄Tシャツ

Image by: FASHIONSNAP

 ステューシーには、かなり多数の総柄Tシャツのバリエーションが存在しています。ストリートシーンではTシャツを酷使することが多く、少しくらい穴が空いたり汚れたりしても目立たないという理由で総柄Tシャツが好まれたそうです。もしかしたら、ステューシーが総柄Tシャツをたくさん出していたのは、そういうニーズに応えるためだったのかもしれません。

 柄のデザインには、ネイティブ・アメリカンやハワイアン、アフリカンなどの民族的なモチーフの影響も感じられますね。上の画像の3枚はプリントで総柄を表現していますが、下の画像の4枚はジャカード織の生地が用いられています。一般的に、プリントよりもジャカード織のほうが製造コストがかかるのですが、これほど多くのバリエーションがあるということは、それだけ人気が高かったのでしょう。

オールドステューシー 総柄Tシャツ

Image by: FASHIONSNAP

オールドステューシー 総柄Tシャツ

Image by: FASHIONSNAP

ステューシーがラスタモチーフを取り入れた理由

 次に紹介するアイテムは、かなりスペシャル。当時のタグ付きデッドストックの、ラスタカラーの総柄Tシャツです。ラスタカラーは主にブラック、レッド、グリーン、イエローの4色から成り立っており、ブラックはジャマイカ独立のために戦った黒人戦士を、レッドはその戦いで流れた血を、グリーンはジャマイカの自然を、イエローは太陽の色を表しています。柄をよく見ると、ショーンフォントで「ROOTS RASTA」という文言がプリントされていますね。

オールドステューシー 総柄Tシャツ

Image by: FASHIONSNAP

オールドステューシー 総柄Tシャツ

Image by: FASHIONSNAP

オールドステューシー 総柄Tシャツ

Image by: FASHIONSNAP

 ラスタとはそもそも、1930年代のジャマイカで黒人系住民の中から生まれた、宗教的、文化的、社会的側面を併せ持った運動であるラスタファリ運動(ラスタファリニズム)を実践する人々に対する呼称です。黒人を含む被抑圧者の精神的束縛を解くために、アフリカ回帰と平等社会の実現を目指したラスタは独自のライフスタイルやカルチャーを持っており、大麻の儀礼的使用やドレッドヘア(ドレッドロック)もそのひとつ。そして、ラスタファリ運動の影響を強く受けて1960年代後半にジャマイカで生まれた音楽がレゲエです。ステューシーは、ラスタカラーやドレッドヘア、レゲエの象徴的存在であるボブ・マーリー(Bob Marley)を、頻繁にデザインモチーフに用いてきました。ステューシーが生まれた1980年代の南カリフォルニアではスケート・サーフカルチャーがレゲエと密接な関係があったことに加え、反体制・カウンターカルチャーの象徴としてラスタをデザインに引用したのでは、というのが僕の推察です。

オールドステューシー 総柄Tシャツオールドステューシー 総柄Tシャツ

 また、今回ピックアップした総柄Tシャツには全て、胸ポケットが設けられています。これはおそらく、サーフカルチャーの影響を受けたものだと思われます。サーファーは、必需品であるサングラスやワックスを入れるために胸ポケット付きのTシャツを愛用していたのです。ポケット脇にあしらわれているピスネームもポイントですね。

オールドステューシー 総柄Tシャツ

Image by: FASHIONSNAP

 数万円から数十万円の個体も珍しくないオールドステューシーのフォトTシャツに比べ、総柄Tシャツは古い個体でも数万円から入手できる「堀り甲斐」のあるアイテム。是非、今夏のファッションのスパイスに取り入れてみてください。

編集:山田耕史 語り:十倍直昭

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