乃木坂46には賀喜遥香と遠藤さくらの“かきさく”や冨里奈央と五百城茉央の“なおまお”など、親しみやすい語感とその関係性の深さでファンに愛されるコンビがいくつも存在する。中でも、今ファンの間で支持を集めているのが、5期生の井上和と菅原咲月による“なぎさつ”コンビだろう。

【画像あり】乃木坂46 井上和&菅原咲月、キュートな歯磨きショット それぞれの“セーラームーン”姿も

 ファンの間では以前から定番の呼び名として親しまれてきたが、ここにきてますます注目度が高まっている。本日8月6日発売のテレビ情報誌『TV LIFE』(ワン・パブリッシング)での「坂道発信!」でのペア登場や『乃木坂46“5期生”版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」2024』Wキャストでともにセーラームーン/月野うさぎを演じ、さらには冠番組『乃木坂工事中』(テレビ東京系)でのヒット祈願ロケまで、“いつも一緒にいる”という印象が強いふたりだ。そんな彼女たちは、グループを牽引するエースと副キャプテンという立場でもある。

 井上と菅原の関係性の原点は、乃木坂46加入直後の研修期間中にあった。当時はまだほとんど会話のなかった井上と菅原は、同じ部屋で生活をともにする中で、自然と距離を縮めていったという。早い段階からフロントを任されてきた井上と、持ち前の優しさでグループに安心感をもたらす菅原。そんなふたりの仲睦まじいやりとりは、雑誌やラジオ、舞台裏のトークなどでもたびたび語られており、ファンの間でも自然と“なぎさつ”という愛称が定着していった。そして面白いのは、仲の良さを見せる一方で食の好みや興味の方向性など、ほとんどすべてにおいて「合わない」と本人たちが認めている点だ。

 先日7月20日深夜放送の『乃木坂工事中』の「39thシングルヒット祈願」企画では、井上と菅原がペアで巡礼。途中立ち寄った道の駅では「セイムメニューチャレンジ」と題し、ふたりが同じメニューを選ばなければ食事できないというルールが課されるが、これが思いのほか難関に。菅原が「私たち、食べ物の好みが合ったことないんですよ」とぼやくと、井上も「食べ物以外でも合わないよ」と即座に返し、スタジオは笑いに包まれた。

 こうした「ズレているのに息ぴったり」な関係性こそ、“なぎさつ”ならではの魅力だ。どちらかが無理に歩調を合わせるのではなく、違いを前提として互いを尊重し合う姿勢が根底にある。その関係性は、いわゆる“似た者同士”ではなく、性格や好みが違うからこそ生まれる心地よいバランスに支えられている。真逆のように見えても、相手を受け入れ、信頼し合えるからこそ築ける関係性なのだ。

 ミュージカル『「美少女戦士セーラームーン」2024』では、井上がTeam MOON、菅原がTeam STARと分かれ、異なるアプローチでそれぞれ演じ切ったことは高く評価された。公演後、菅原は自身のブログで「和だったからこそ、お互いに切磋琢磨し合ってできたのかな〜なんて思ったりしています」と綴っている(※1)。同じ役を演じながらも、比較ではなく互いに刺激を与え合える関係性。こうした演技の現場で育まれた連帯感は、ラジオや雑誌の対談でも随所に垣間見える。

 菅原が副キャプテンに就任した際には、ラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)内の「乃木坂LOCKS!」にて、井上は「同期の菅原咲月ちゃんが副キャプテンに就任しまして、すごくおめでたいというか、私はうれしいです!」「私は“どうしよう”ってなっちゃったときとか、自分のことをあまり大事にしてあげられないときとかに、ファンの皆さんやメンバーからの言葉にすごく助けられたなって思うし、『好きだよ』っていう言葉ひとつにもすごくパワーがあると思うんです」とメッセージを送っていた(※2)。この言葉には、菅原という人間の優しさや繊細さを、誰よりも近くで見てきた井上ならではの視点が滲んでいる。そして井上は、ファンに向けても「そんな彼女だからこそ、ファンの皆さんが一番に大事にしてあげてほしい」と語り、同期として菅原を「頑張って支えます!」と、真っ直ぐなエールを贈っていた。

 とはいえ、過去には井上が初めてセンターとして『乃木坂46 真夏の全国ツアー2024』の座長を務めた際、井上は菅原との接し方に迷い、どう距離を取ればいいのかわからなくなってしまったこともあったという。そんな時期を、菅原は『EX大衆』2024年4月号(双葉社)のインタビューで「私はなぎの雰囲気で『大変そうだな』と察したときはそっと見守って、『いまは大丈夫かな』と思ったらちょっかいをかけていたんです」と振り返っていた。菅原のさりげない気遣いが、どれだけ井上の支えになっていたことだろう。しっかり者に見られがちだが、実は弱さも抱えている井上にとって、無理に言葉をかけずに自然体で寄り添ってくれる菅原の存在は、きっと“安心できる場所”のようなものだったはずだ。

 こうした関係性の蓄積が、グループ内での役割にも影響を与えている。井上が5期生の絶対的エースとして先頭を走る一方で、菅原は副キャプテンという立場でグループをまとめている。それは表立って引っ張るのではなく、必要な時にそっと背中を押すようなリーダーシップであり、“なぎさつ”という関係性そのものの延長線上にあるもののように思う。

 違うけど、だからこそ合う――。そんなふたりの関係性は、今後の乃木坂46にとってひとつの理想形となるかもしれない。似ている者同士ではなく、違う者同士が歩調を合わせて並んでいく。それが“なぎさつ”の面白さであり、強さであり、何より見ていて心地よいのだ。

※1:https://www.nogizaka46.com/s/n46/diary/detail/102484
※2:https://audee.jp/news/show/130028

川崎龍也

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