記事のポイント

参加ブランド数を23に絞り込み、フィジカルショー中心で質重視の運営に転換した。

「by R」や「JFW NEXT BRAND AWARD」などで若手デザイナー支援を強化し、国際的な交流も推進した。

20周年を記念し、宮沢氷魚のアンバサダー就任やツモリチサトのショーなど特別企画を展開する。

一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)は8月5日、都内で会見を開き、9月1日〜6日に開催する「楽天ファッション・ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)2026 S/S」(以下、RFWT)の概要を発表した。フィジカル回帰、次世代デザイナー支援、国際化の加速を柱に据え、「東京発ファッションプラットフォーム」としての位置づけを鮮明に打ち出した。JFWO創設20周年を記念したコンテンツも来シーズンにかけて実施する。

フィジカルへの回帰 「量より質」の決断

楽天ファッションウィーク 2026 S/Sについて説明するJFWO事務局長の古茂田博氏

今回は、渋谷ヒカリエを主会場に、全23ブランド(うち初参加5、海外5ブランド。インキュベーション枠を含めると24ブランド)がショーをする。前回の37ブランドからおよそxx割減少した。

JFWO事務局長の古茂田博氏は、参加ブランド数について、「フィジカルショーとして適正なのは20〜30ブランド程度だ」と説明した。過去を振り返ってもこの規模が妥当であり、応募数の増減にかかわらず、クオリティを優先して選定しているという。事前審査についても厳格な基準を設けているとし、「単に応募を募るのではなく、次のシーズンも継続して発表できるかを確認しながら、ブランドと対話を重ねている。プロとしてコレクションを成立させるためには、世界観を表現できる力量はもちろん、PRや営業、生産といったチーム体制が不可欠。結果としてブランド数が絞られる」と説明。1日のスケジュールについても、「過去は1日に7本のショーを回ることもあり、メディアやバイヤーは移動だけで精一杯で、場合によっては作品を見られないこともあった。しっかりとショーを見られる環境を整えたい」と量ではなく質を重視していくことを強調した。

また世界的な潮流を踏まえ、今回から、会期中に行うフィジカルなショー形式のみを公式スケジュールとする。「フィジカルなランウェイショーでプレゼンテーションでするのがファッションウィークであると再定義した」と古茂田氏は言う。ショーについても、単独ブランドによる「公式デザイナーショー」、国や団体主催の「パートナーシップショー」、学生主体の「インキュベーションショー」の3つ区分し、それぞれの役割を明確にした。

古茂田氏はそのねらいについて、「パリ・ファッションウィークでも、期間中に発表しているだけで、実際には主催団体に認められていないケースがあった。こうした状況を踏まえ、我々もファッションウィークにおける各ショーの定義を明確に示す必要があると考えた」と述べた。公式デザイナーショーとパートナーシップショーのおもな違いとして、公式サイトでのブランド紹介や公式フォトグラファーによる撮影・配信、海外バイヤーとの商談機会の提供、プレスリリースでの露出、スポンサーとの協議など、ビジネス面やプロモーション面でのサポートの有無を挙げた。

公式デザイナーショーを明確化する一方、会期中に行われる関連イベントは「準公式」と捉え、ファッションウィーク全体を盛り上げていくという。

才能の発掘と支援 楽天by Rは「フェティコ x スリー」の異色コラボをサポート

冠スポンサーの楽天グループが主催し、今年で6年目を迎えるデザイナー支援プロジェクト「by R」は今回、デザイナー舟山瑛美氏によるフェティコ(FETICO)とビューティーブランドのスリー(THREE)による異業種コラボレーションをサポートする。9月3日に実施するフェティこのランウェイショーで、スリーは、精油の香りによる芳香演出やモデルのメイクアップにおける商品協力で協力する。楽天グループは、ショーの模様をRakuten Fashionで無料配信するほか、限定商品の販売や舟山氏のインタビューなどを公開する。

「ムッシャン」デザイナーの木村由佳氏(左)と滝沢直己氏

若手デザイナー支援にも継続して力を入れる。JFWOの若手支援プログラム「JFW NEXT BRAND AWARD 2026」のグランプリに、ムッシャン(mukcyen)デザイナーの木村由佳氏を選出した。審査員を務めたファッションデザイナーの滝沢直己氏は、「素材やデザインに関わる人々の思いが共鳴している。世界に出ようとするブランドにとって重要な要素だ」と高く評価した。木村氏は9月1日のRFWTで初めてショー形式で発表を行う。また、特別賞でジュンワイ(Jun.y)デザイナーの山本淳氏も会期中に作品を披露する。山本氏は昨年12月、VOGUE JAPANで山本氏が日本人デザイナーの1人として、ジョン・ガリアーノ氏との鼎談企画に参加。同じく審査員の1人でVOGUE JAPANのヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントのティファニー・ゴドイ氏は、「ビジュアルコミュニケーションのスタイルに感動した」と期待を寄せた。

「ジュンワイ」デザイナーの山本淳氏(左)とティファニー・ゴドイ氏

▼初参加ブランド(NBAを除く)
アンセルム(ANCELLM)/デザイナー:山近和也、ファンダメンタル(FDMTL)/津吉学、ナゴンスタンス(nagonstans) /植田みずき、オリミ(ORIMI)/折見 健太

「トラノイ東京」 250ブランドが集うファッションハブへ

仏発の国際合同展示会トラノイ(TRANOÏ)と提携し、昨年9月の2025年春夏シーズンにスタートした「トラノイ東京(TRANOÏ TOKYO) A/W 25-26」は今回、従来のベルサール渋谷ファーストから国立代々木競技場(第一体育館)に会場を移し、規模を拡大する。出展ブランドは約250ブランドが出展し、日本以外にも、ヨーロッパやアジア、中東、南米など、約30カ国からの参加が決定している。

JFWOはこのほかにも、仏プルミエール・ビジョンや伊ピッティ・ウオモと提携して日本ブランドの取りまとめを行うなど、日本ブランドのプレゼンス向上や国際的なブランド交流を促進している。

20周年 アンバサダーに宮沢氷魚を起用

20周年を記念したスペシャルティザームービー(©INFAS.com ©JFWO)

JFWOは、前身の「ファッション戦略会議」を2005年に発足して以来、これまでに524ブランドによる1844件の発表(ショー、プレゼンテーション、デジタルを含む)を実施してきた。そのうち海外からは32カ国・地域、76ブランドが参加している。設立20周年を迎える今年、JFWOは年間テーマ「世界の継ぎ目となれ – JFW 20 + 20 -」を掲げ、日本のファッションが持つ独自の価値と、世界を「つなぐ」役割を強調。2026年春夏シーズンに続き、来年3月の2026年秋冬シーズンまで、継続的に関連コンテンツを発信していく。

今季は、ベテランデザイナーの参加も決定。ブランド設立35周年のツモリチサト(TSUMORI CHISATO)がショーを行うほか、渋谷ヒカリエでアーカイブ展示を行う。平田暁夫氏が創業した老舗帽子ブランドで生誕100周年を迎えるオートモード平田(Haute Mode Hirata)も、9月3日に若手デザイナーとのコラボレーションによる特別ショーを予定している。

またこの1年間、JFWの活動を国内外に発信するアンバサダーとして、俳優の宮沢氷魚が就任することも発表した。俳優やモデルとしての活動だけでなく、ファッションへの造詣も深いという同氏は、日本のファッションの魅力を世界に伝える役割を担う。

古茂田氏は、20周年の取り組みについて、「フィジカル開催に絞るなかで、どのようなコンテンツが魅力的なのかを検討している。20周年記念として特別な企画も模索しており、ブランド側との調整を進めながら実現していきたい」と今後への期待をにじませた。

取材・文・写真/戸田美子

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