昨年九州場所を最後に引退した元小結・阿武咲(おうのしょう)こと、打越奎也(うてつふみや)さん(29歳)。激動の相撲人生を振り返るとともに、新たに踏み出した第二の人生に密着した。【NumberWebインタビュー全3回の1回目/第2回、第3回も公開中】
力士のセカンドキャリアと聞いて、どんな第二の人生を思い浮かべるだろうか。
今春、大相撲の三役経験者が異色のセカンドキャリアを歩み始めた。
昨年の九州場所を最後に引退した元小結・阿武咲の打越奎也さんは、相撲協会に残らず、美容界への転身を決断した。今年4月から馬油のスキンケア商品の開発や販売を行う「横濱馬油商店」で勤務している。
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それにしても、なぜ美容界だったのだろうか。
さっぱり短髪、イベントに着物姿で登場
7月上旬、東京ビッグサイトで行われたイベントでは、さっぱりとした短髪姿になった打越さんが同社のブースに立ち、元気そうな姿を見せていた。現役時代に比べると、幾分、目が優しくなったような印象だ。
ブースにも並んでいた同社の商品の一つ、パフュームバーム(練り香水)「相撲の香り」には自ら開発にかかわった。何度も試作を重ね、苦労の末に生み出した商品。ふたを開けるとびんづけ油の香りがほのかに漂い“相撲”をイメージさせる。
「調合の仕方によって匂いが変わってくるので、すごく難しかったですね。でもそこが面白い部分でもあると思います。みなさんにいいものを届けたいからこそ中途半端にはできないですし、使っていただく方々の気持ちになって日々開発や仕事に取り組んでいます」
まだ入社間もないが、その笑顔からは充実の様子が伝わってくる。
「お客さんに喜んでいただけるのが一番の喜びです。実際に生の声を聞けるのも楽しいし、うれしい。もっといいものを作りたいというモチベーションになっています」