【インタビュー】前島亜美「これまでの日々は無駄じゃなかったし、それがあるからこそ挑めるこれからがある」
2024年11月にデビューアルバム『Determination』をリリースし、今年の4月には1stワンマンライブを開催するなど、声優アーティストとして充実した活動を重ねている前島亜美。
◆撮り下ろし写真
7月から放送がスタートしたTVアニメ『公女殿下の家庭教師』ではカレン役を務め、オープニングテーマ「Wish for you」の歌唱も担当している。「Wish for you」を含む3曲が収録された1stシングルは、彼女の表現の多彩さを堪能できる作品だ。各曲に込めた想い、制作エピソード、歌や演技に対する情熱について語ってもらった。
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◾︎少しずつ自分の歌声が好きになれるように、がんばっている最中
──ソロデビュー以来、充実した日々が続いているんじゃないですか?
前島:そうですね。デビューしたのは昨年の11月20日で、それに向けて動き始めたのが4月1日だったんです。エイプリルフールにデビューを知らされたので、「どっきりかなあ?」と思ったんですけど(笑)。でも、無事に活動が始まり、そこから約1年が経過しました。最初は手探りだったアーティスト活動も楽曲制作、作品リリース、1stライブをさせていただいて感覚が掴めてきましたし、1stシングルで初めてのアニメのタイアップが決まって夢が叶ったりと、新しい挑戦もできているのが嬉しいです。
──活躍に期待してくださっているファンが、たくさんいらっしゃいます。
前島:本当に感謝しています。私はグループ活動から芸能のお仕事を始めて、女優のお仕事もしながら様々な界隈での経験をしてきたんですけど、声優に力を入れるようになってからまだ1、2年くらいなんです。その前から声優のお仕事をさせていただきつつも、活動量が増えてきているんですよね。声優のお仕事ならではの楽しさも感じますし、アニメへの出演の報告をすると、応援してくださっているみなさんにとても喜んでいただけるんです。『公女殿下の家庭教師』への出演とオープニングテーマの歌唱を務めさせていただくことを1stワンマンライブで発表した時も、「待ってました!」とお客さんが一番喜んでくださったのを感じました。
──グループ時代の活動と較べて、違いのようなものは感じますか?
前島:やはり違いますね。キャラクターソングを歌って、1人で初めてライブをした時にも、感覚の違いに驚きました。ステージ上で横にメンバーがいっぱいいるのが当たり前だったので、「みんな私を観てる。一瞬でも気を抜くことができない」みたいな状況になかなか慣れなかったです。でも、1人ならではの楽しさもあると感じるようになりました。
──演技に関しても、俳優と声優では表現の違いがありますよね?
前島:はい。その違いにも驚きました。私は映像の演技からスタートして、その後は舞台に立たせていただくことが多かったんです。相手役が目の前にいる演技しかしたことがなかったので、初めての声のお仕事でブースに1人で入ってマイクに向かって演技をした際に距離感が掴めなくて、使う感覚もまったく違ったので苦戦しました。「わあっ!」ってマイクの前で驚く演技が自然にできなかったのをよく覚えています。棒読みになっている私にしびれを切らした監督さんが「ブースに行くから!」とおっしゃって、後ろから肩を掴まれました(笑)。「わあっ!」って私は驚いて、「それでやりなさい」と。
──なるほど(笑)。
前島:ご指導もいただきながら声のお芝居について学んできました。舞台で学んできたお芝居をそのまま声優の現場でやると、絵から浮いてしまうんです。誇張ではないんですけど、声色をわかりやすくしていく必要があって。でも、それを舞台の現場でやると質感が浮いてしまうんですよね。どちらが良い悪いということではなくて、その切り替えの難しさはずっと悩んできました。声優と実写の演技の両方で活躍していらっしゃる方々もたくさんいるので、先輩のみなさんに学ばせていただいています。
──『公女殿下の家庭教師』ではカレン役ですが、オープニングテーマの歌唱も務めるとお聞きになった時、どのようなことを感じましたか?
前島:驚きました。声優のお仕事をさせていただく前からずっとアニメと声優さんが好きだったんです。よく仕事の合間とかにアニメのショップに寄って、いっぱいグッズを買うのが私の趣味で、深夜アニメに元気をもらっていたタイプなんです。そんな私がアニメのオープニングテーマを歌わせていただいて、クレジットに名前が載るなんて、本当に嬉しいです。それと同時に責任も感じて、「がんばらなきゃな」と思いましたね。
──オープニングテーマの「Wish for you」は、恋をしてときめく胸の内が描かれていると同時に、力強い意志も伝わってくるのが印象的です。
前島:『公女殿下の家庭教師』の世界観に合う曲をコンペで探していったんです。1回聴いただけで惹かれて、ひと聴き惚れのようなものをしたのがこの曲でした。ザ・王道アニソンというような爽やかなメロディでありながら、ストリングスが入っていたりする高貴で上品な雰囲気も作品に合っていると感じました。そして、歌詞も素敵なんですよね。ただただ「大好きです」ということを歌っているだけではなくて、ひたむきに夢に向かって努力することの素敵さ、正しくあろうとすることのまぶしさがまっすぐに描かれているんですよね。
──楽曲の制作が始まったのはいつ頃でしたか?
前島:結構早くて、昨年リリースさせていただいたアルバムと同時進行だったんです。アルバムの制作でいろいろ聴いた中で、「公女殿下っぽい」と思って、「どうですか?」と私が言っていた曲があったんですけど、改めて「もう1回、公女殿下のコンペをやりましょう」ということになりまして、そこで出会えたのが「Wish for you」でした。他にもすてきな曲がたくさんあったんですけど、「この曲しかないな」と思いました。
──解釈の仕方はいろいろありそうですが、歌詞の視点はティナですかね?
前島:ティナっぽいんですけど、登場するみんなの気持ちも入っている気がします。どのキャクターの目線でとらえても重なるものがあるというか。『公女殿下の家庭教師』は、キラキラしているだけではなくて、登場するキャラクター1人1人の悩みや葛藤も丁寧に描かれているんです。だからどのキャラクターを好きになっても、その目線でとらえながら「Wish for you」を楽しんでいただけるんじゃないかなと思っています。
──リスナーそれぞれの人生とも重なるものがありそうです。
前島:そうですね。押し付けない前向きさ、背中を押すというよりは、寄り添って一緒に光ってくれる、照らしてもらえるというか。そういう曲なのかなと私も感じています。
──《夢を見るために資格は必要ないのだと 心が知ってる勇気はもう受け取ってる》とか、心に響きます。
前島:素敵ですよね。ぜひ歌詞カードを見ながら聴いていただきたいです。私は《自分を信じることは誰かを信じることよりも ずっと難しいことで》がとても好きで、歌いながら共感して熱が入ります。
──歌を通してメッセージを伝えるのも、演技と同様に「表現」ですよね。
前島:おっしゃる通りです。「ソロデビューしよう」と決意するまで、私は歌に対してあまり自信がなかったんです。歌のお仕事はずっとさせていただいていたんですけど、「自分の名前でソロデビューできるほどではないです」みたいな弱気なところがあって。でも、ソロでデビューさせていただいてからは、レッスンにもより真剣に取り組んで、今も先生と相談しながらがんばっています。先生が「もっと自信を持ってほしいし、自信を持つ前にまずは自分の歌声を好きになってほしい」とおっしゃってくださって、「私は自分の歌声を好きになる前に他人の評価ばかりを気にしていた」と気づきました。キャラクターの声で歌うことにも慣れすぎていたところがあって、「私の素の声ってどれなんだろう?」と悩んだりもして。そういう時期を経て、少しずつ自分の歌声が好きになれるように、自信をつけられるようにがんばっている最中なのが、今の私です。
──声優さんとしての表現のスキルも活かして歌えるのは、すばらしいことですね。
前島:幅広い声を使った楽しい楽曲を歌っていらっしゃる先輩たちもいらっしゃいますからね。私もいつかそういう楽曲も歌えるようになれたらいいなあと思っています。