(写真:ArtMarie / E+ / Getty Images)
服を選ぶとき、それがどこで、どう作られたのか──その背景まで意識したことはあるだろうか。近年、「サステナビリティ」や「エシカル消費」などのキーワードへの関心が高まるなか、リサイクル素材を使った衣服や古着回収ボックスを見かける機会も増えてきた。こうした動きは「よいこと」として広がりつつあるが、その言葉の中身について、立ち止まって考えたことがあるだろうか?
最先端技術に関する倫理的・法的・社会的課題──「ELSI(エルシー)」の考え方をひも解き、社会とビジネスにおける実践的な視点を提供する連載「ELSI最前線」。今月は、様々なものごとを取り巻く価値(観)に関する諸問題を研究する井出和希氏が、ファッションを切り口に、消費者・事業者双方に関わるELSIを読み解く。(第3回/全3回)
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「サステナブルファッション」とは一体何を指すのか? 第1回で論じた前提のもと、包括的な概念としてのサステナブルファッション(sustaina…続きを読む
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井出和希
大阪大学 CiDER/ELSIセンター 特任准教授。薬剤師、修士(芸術)、博士(薬科学)。静岡県立大学、京都大学を経て現職。疫学、公衆衛生学や健康情報学を基盤に2016年から健康・医療情報の利活用にまつわるプロジェクトで(急に)ELSI担当として関連領域に取り組むようになった。以降、様々なものごと(学術情報流通、先端的な科学技術、ファッション、芸術など)を対象に活動を展開している。プロフィール詳細
国内外の「サステナブルファッション」政策動向
さて、このようななか、国内外ではどのような大きな動きがあるのだろうか。ここでは、2022年に欧州委員会が公表した「持続可能な繊維戦略(EU Strategy for Sustainable and Circular Textiles)*」をみていく。
*戦略の日本語名称は日本貿易振興機構(Japan External Trade Organization, JETRO)の翻訳に従った。
この戦略における2030年までの目標として、EU域内で販売される繊維製品を「耐久性があり、修理・リサイクル可能で、大部分がリサイクル繊維で作られ、有害物質を含まず、(労働者の権利などの)社会的権利や環境に配慮したもの」にすることが掲げられている。
そのためにどのようなことを行うのだろうか?
1.デザイン要件の設定(エコデザイン、修理やリサイクルの容易さ、リサイクル素材の含有量など)
2.未使用繊維製品の廃棄をやめること
3.マイクロプラスチック汚染への対策
4.情報提供の強化(デジタル製品パスポートの導入)
5.本当に持続可能な繊維製品における環境訴求(green claims)
6.生産者責任の見直し(拡大生産者責任 extended producer responsibility, EPR)と繊維廃棄物の再利用およびリサイクルの促進
といったものが鍵となるアクションとして挙げられている。
そして、…