ジャンルを飛び越える最新J-POP
世界的人気を誇るアーティストが続出している現在のJ-POPシーン。今年メジャーデビューを果たした新人バンドのなかから、個性的な音楽性で注目されている2組をピックアップしてみたい。
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King Gnu、藤井風、Vaundy、Creepy Nuts、YOASOBI、XG。2020年代以降、日本のみならず、海外でも高く支持されるアーティストが続々と登場している。国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」のニュースを目にして、「今のJ-POPって、こんなに盛り上がっているの?」と驚いた方もいるだろう。
アーティストの個性と才能が正当に評価されるにつれて、音楽業界全体も活性化。現在はコロナ禍の時期に活動をスタートさせたバンドが次々とメジャーデビューを果たし、J-POPシーンをさらに豊かなものにしている。ここでは今年ブレイクが期待されている2組のニューカマーを紹介したい。
まずはS.A.R.。音楽はもちろん、映像やアートワークも自分たちで手がけていることから、“バンド”ではなく“オルタナティブ・クルー”を掲げているグループだ。
音大でジャズを学んだメンバーを含むS.A.R.の音楽性。その最大の特徴は、R&B、ジャズ、レゲエ、ヒップホップ、ロックなどを有機的に融合させたバンドサウンドだ。全員とにかく巧いのだが、決してテクニックをひけらかさず、ひたすら快楽的なグルーヴを追い求めているのがいい。メジャーデビューEP「202」はメンバーが暮らしているマンションの一室で“宅録”した作品で、自由な発想とアイデアがふんだんに盛り込まれた楽曲が楽しめる。
ライブではロック/ファンクの名曲カバーも披露し、オリジナル曲とシームレスにつなぐことで、心地よいバイブレーションを体現。客が一斉に手を上げたり歌ったりというJ-ROCK的なノリではなく、お酒を楽しみながらゆったりとオシャレに楽しめる雰囲気も大人のリスナーを魅了している理由だろう。
そしてBILLY BOOは、今年メジャーシーンに進出した4ピースバンド。高校時代から地元・仙台のライブハウス・シーンで注目されていたボーカリスト・KAZUKI UJIIEを中心に結成されたバンドなのだが、コロナ禍の影響により解散。KAZUKIはソロ活動を行ったが、自身ワンマンライブをきっかけに“この4人じゃないとダメだ”とばかりにメンバーが再集結し、リスタートを切った。
ブラックミュージック、ロックを軸にしたミクスチャーサウンドがこのバンドの身上。R&Bやネオソウルを反映したアレンジのなかでJ-POP的な親しみやすいメロディを響かせる、そのバランス感覚の良さによって、早耳の音楽リスナーの支持を獲得し始めている。新曲「ラプソディ」は、全国57局のラジオ局でパワープレイに選出。なめらかでエモーショナルなKAZUKIの歌声はここから、さらに幅広い層に浸透することになりそうだ。
文=森 朋之(音楽ライター)
(ENGINE2025年8月号)
ENGINE編集部