我儘ラキア、日本で一番最強で最高なアイドルが残していったもの 最期の瞬間まで我儘にらしく | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス - Moe Zine

我儘ラキア『There is surely tomorrow』2025.07.09(wed)Zepp Haneda

会場であるZepp HanedaにSE「Prayer」が響き、ついに幕を開けた、我儘ラキアのラストライブ『There is surely tomorrow』。ライブが待ち遠しいのと裏腹に、来なければ良いのにとも思っていたこの日。OP VTRに流れるのは、<いつか私たちの音楽は鳴り止んで、静寂になる>と始まる「Prayer」の訳詞。

ラストライブにあまりに相応しい言葉だが、6年前以上から繰り返し流されてきたSEだ。<だからその時までに、一度でも多く祈りを繰り返すことにしました>と続き、<心優しいあなたたちの行く末に どうか幸せが訪れますように>と願う歌詞から、彼女らがSEを通じてファンの幸せを祈り続けてくれていたことを改めて知り、胸が熱くなる。

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

ステージにあるのは、凛と立つ4人の勇ましいシルエット。「日本で一番最強で最高なアイドル。我儘ラキア、はじめます」と星熊南巫が告げ、ライブタイトルでもある「There is surely tomorrow」でライブが本格的にスタートする。“きっとそこには明日があるから”の意を持つこの曲は、2017年に発表した1stシングルの表題曲であり、その後の我儘ラキアの方向性が決まるキッカケとなった重要曲だ。

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

星熊と海羽凜の二人きりだった我儘ラキアが発表した初音源であり、最初期から歌い続けてきたこの曲。LのダンスやMIRIのラップも加わり、楽曲もパフォーマンスがどんどんブラッシュアップされて。ラストライブのOPとして披露するのは、メンバーにとっても感慨深いだろうが。拳を突き上げて大きな声でシンガロングする姿や、セーフティエリアから熱い眼差しで見守る姿を見ると、ファンにとっても大事な曲だったことがよく分かる。

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

2016年結成。2018年にL(川﨑怜奈)、2019年にMIRIが加入して、現体制となった我儘ラキア。僕が初めてラキアのライブを見たのは、2020年2月に行われた、初のバンドセットで行われたワンマンライブ『Don’t fear a new day』だった。4人の圧倒的なライブスキルの高さと、バンドサウンドにも負けない気迫。そして、モッシュやダイブが横行するフロアの熱狂からは、ファンの猛烈な愛情が伝わってきて、「こんなカッコいいアイドルがいたんだ!」と大興奮。気付くとライブレポ用のメモ書きをするのも忘れて、ステージに夢中になっていたことをよく覚えている。

ライブは「Trash?」、「Re:Paint of the[Heart:Hunt]」と続き、ど頭から全力のステージで魅せるラキアに、フロアの熱気は増すばかり。歌って踊って叫んで拳を突き上げて、モッシュしてダイブしてと、ぐっちゃぐちゃのフロアで自由にわがままにライブを楽しむ観客を見て、初めてライブを見たあの日の風景と興奮が蘇ると同時に、「これだよ、俺の見たかった光景は!」と胸が熱くなる。

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

感傷的な歌声が胸締め付ける「M」、振り付けもキュートな「SUPER SA!KO」と新し目の曲が続き、最新型のラキアを見せつけるとMCへ。思うようにが売れなかった前回のZepp Haneda公演(2022年6月)を振り返るMIRIが、「でも、今日は満員のみんなに門出を祝ってもらえます。ありがとうございました!」と感謝を告げると、「幸せもんだな」としみじみ語る星熊。こんな日に限って、喉の調子が良くないことを明かした星熊は、「ここに自分の命を置いていくつもりで、全部をぶつけたいので、よろしくお願いします」とこの日に賭ける覚悟を告げた。

続く「IDOL」はMIRIの攻撃的なラップで始まり、L~星熊~海羽とマイクを繋ぐ、我儘ラキアの自己紹介曲。アイドルを超越する存在を目指し、アイドルである誇りをもって。アイドルとして頂点を獲るため、闘い続けた我儘ラキア。どんな逆風に吹かれても「We’ll Keep Raising The Frag」と自分たちにしか掲げられない旗を高く掲げて、「My life is only once」と自分を信じて一度しかな人生を突き進む彼女らの勇ましい姿にどんだけ勇気づけられたことか。

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

さらに「Why?」、「New World」とライブ定番曲が続き、ステージを派手やかに彩るダンサーとフロアをブチアゲると、「Ambivalent」ではステージにたいまつの火が灯る神聖な雰囲気の中、楽曲世界を丁寧に繊細に表現。闇の奥底から響くような星熊の悲痛な歌声が胸を刺す「rain」はLEDビジョンにメンバーの表情が映り、歌やダンスに込めた思いや感情がより生々しく伝わってくる。

「4人の始まりの曲です。みんなにこの曲を届けるのは最後になっちゃうけど……手を挙げろ!」と叫ぶ星熊の美しく力強い歌声と、手を挙げて声を合わせる観客の合唱で始まったのは「reflection」。2019年12月、MIRIの加入直後にリリース。星熊が作詞作曲、MIRIがラップ詞を務める野心に満ちた楽曲はいつだって彼女らのそばにいて。この日のようなファンとの熱い一体感が、彼女らを奮起させてきた。4人の始まりの曲は原点回帰の意味もありながら、絶やさず闘志を燃やす着火剤的な役割を果たしてたのかも知れない。

ここで前半戦が終わり、改めてOP VTR的な意味を果たす映像が映し出される。グループ結成時から現在に至るまで、自分たちらしさを追求し続けて、どんどんヴィジュアルが進化変化していく我儘ラキアの歴史をたどる映像を見るだけで、彼女らがいかに既存のアイドルの枠にとらわれない、異質で唯一無二の存在だったかが良く分かる。

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

「Vertex」で始まった後半戦は「Leaving」、「ゼッタイカクメイ」と決して外すことの出来ない重要曲を連投。会場中が振り付けを合わせて、メンバーへのコールが起きてと、アイドル然としたノリが生まれるこれらの曲は、我儘ラキアのライブでは逆に希少。そういう意味ではアイドルの枠にとらわれない唯一無二の存在でありつつ、アイドルとしてのアイデンティティを守るという部分において、これらの楽曲の存在は大きかっただろう。

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

MVに登場した旗を楽曲後半の映像で再現し、観客の熱い大合唱が起きた「the reason」に続く「GIRLS」は女の子の可愛さと強さとカッコ良さを存分に見せつける、女の子による女の子のための楽曲。たくさんの女の子がリフトで上がり拳を突き上げる痛快な画は、ラキアにしか作れない光景。続いて攻撃的な「SWSW」を放つと、MIRIのラップで始まる「JINX」で会場に雪を降らせ、歌やパフォーマンスだけでなく演出面で楽曲世界を表現。さらに、もろく弱い自分との自問自答、それでも生きていきたいと願う壮大なバラードソング「Polaris」と続き、めくるめく世界観で魅了する構成や魅せ方はやはり唯一無二。

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

「これまで私たちと一緒に歩んできてくれて、本当にありがとうございました。私たちとみなさんが大切に歩んだ日をこの曲で歌わせて下さい」と海羽が感謝を告げて「Days」が始まると、ライブも終盤へ。ラキアとファンを繋ぐ大切な曲である「Days」の楽曲後半、<声が届きますように あなたの胸に響きますように>とファンと星熊が歌声を贈り合うと、「JOURNEY」に会場中が歌声を重ね、全員がかりで最高のクライマックスを作り上げていく。ラストライブも終盤を迎えながら、湿っぽくならないのがラキアらしいが。そういう雰囲気にならないのは「そんなのラキアっぽくない」とよく理解している、みんなの気持ちがあってこそだったのだなと思う。そんな互いをよく理解し合って、長い年月をかけて築き上げてきたラキアとファンの関係性を考えるとグッとくるし、羨ましいとさえ思う。みんなが過ごしてきた日々は間違いじゃないし、ひとりじゃないのだ。

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

我儘ラキア 撮影=ヨシモリユウナ

「バカみたいな夢を掲げて、アイドルの枠から飛び出すぞって勢いだけで4人になって。「普通のアイドルになってたまるか!」ってコンプレックスを背負いながらここまでやってきて。そのコンプレックスが私たちをとってもとっても強くしました。そしてなにより、自分たちがへこたれそうな時もいつもみんながそばにいてくれて。心から支えてくれて、本当にありがとうございました!」

残りがあと2曲であることを告げると、改めてファンへの感謝を語った星熊。

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

さらに「我儘ラキアという形が無くなっても、音楽は残り続けます。今日のクソみたいな声じゃなくて、もっと綺麗な音源が残ってるから。明日からはそっち聴いてくれ!」と自虐的に語った星熊が、「でも、今日には今日の良さがあると思って。でも汚い声が私の生きてるって証明、まだ負けたくないって声なんだよね。だからこの声を絶対に忘れないで、なにか負けそうになったら「あいつ、あんなカスカスで歌ってたじゃん」って笑い飛ばして、みんなの力にして下さい」と彼女らしいメッセージを放つと、フロアから大きな歓声が起きる。「今日が本当に最後。死ぬ気でぶつかりませんか!? この記憶を武器に明日からも生き抜いて下さい!」と叫んで「SURVIVE」へ。

「SURVIVE」の激しく攻撃的なバンド演奏に負けない、気迫に満ちたパフォーマンスを見せる4人。振り返ると新型コロナウィルスという、抗えない敵に世界が混乱してた2020年。音楽が不要不急と言われ、音楽ライターとしての仕事も全く無くなって。もはやこれまでかと諦めかけてた俺を救ってくれたのがこの曲だった。もしも我儘ラキアがいなかったら、もしも俺の不安や苦悩をブッ壊してくれたこの曲が無かったら、本当にこの仕事を辞めてたかも知れない。個人的にもそんな強い思い入れのある曲なので、最後のパフォーマンスをボロボロと涙しながら見ていたが。お世辞抜きでこの日の「SURVIVE」が、これまで見た中で一番良かったし、一番心に響いた。ダイジョウブ、まだまだ這い上がれる。

星熊南巫 撮影=ヨシモリユウナ

星熊南巫 撮影=ヨシモリユウナ

星熊南巫 撮影=ヨシモリユウナ

星熊南巫 撮影=ヨシモリユウナ

渾身の「SURVIVE」をぶっ放ち、「我儘ラキアとして生きれて本当に良かったです、ありがとう!」と告げた星熊。それぞれのメンバーがいかに最強だったかを改めて紹介し、「そんな最強の4人が集まった、最強の我儘ラキアの曲を聴いて下さい」と始まったラストナンバーは「GR4VITY G4ME」。アイドル界、いや日本で一番のロックシンガーと名言する星熊のたくましく伸びやかなボーカルに、アイドル界最強のラッパー・MIRIが切れ味鋭いラップで追撃して。アイドル界最強のギャル・Lのダンスが楽曲に彩りを加え、我儘ラキアの象徴で正真正銘のアイドル・海羽の存在がアイドルの境界線を死守する。間違いなく言えるがこんな最強同士が互いを高め合い、引き立て合って、驚異的なバランス感覚で抜群の均衡を保ち続けるアイドルはこの先も現れることがないだろう。

L 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

L 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

L 撮影=ヨシモリユウナ

L 撮影=ヨシモリユウナ

「今日はすごい複雑な気持ちで、こんな豪華なセットでむちゃくちゃ楽しみもあったけど、今日が来てほしくないなって、色んな感情が混じった一日でした。性格的に続かないだろうなと思ってたけど、気づいたら8年も続いて。辛い時もあったけど、4人で会うとすごい頑張れるし、バカみたいに笑って、一緒に戦うことが出来て。ラキアに入って、人生で一番良い選択をしたなって思います」(L)

海羽凜 撮影=ヨシモリユウナ

海羽凜 撮影=ヨシモリユウナ

海羽凜 撮影=ヨシモリユウナ

海羽凜 撮影=ヨシモリユウナ

「将来の夢がアイドルってこともあって、我儘ラキアを9年間も出来たことにすごいびっくりなことと。こんな最高で素敵なメンバーがいて、周りには支えてくれてるファンの方やたくさんのスタッフの方がいて、ここまで活動出来てきたと思います。みんなには少しでも悪いことが起きず、ずっと笑顔に溢れる毎日を送って欲しいと本当に思ってます。また、どこかで必ず会えると信じて。生きることを頑張っていきます」(海羽)

MIRI 撮影=ヨシモリユウナ

MIRI 撮影=ヨシモリユウナ

MIRI 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

MIRI 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

「最初は本当に私が入っていいのかな?って不安だったり、葛藤もたくさんあったけど。ライブを重ねるに連れてファンの人が増えて、「ラキアに入ってくれてありがとう」って言ってくれた言葉がとても支えになりました。初めて会った時、凛ちゃんとは絶対仲良くなれないと思ったし。クマとは半年くらい全く話さない期間もあったけど。本当に集まるべくして集まった4人だと思うし、後にも先にもこんな4人組は現れないと思います。出会ってくれたメンバー、見つけてくれたみなさん。本当にありがとうございました」(MIRI)

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

アンコールに登場したメンバーが一人ひとり挨拶した後、「(我儘ラキアが)人生の中で一番楽しかったです」と話した星熊。「自分のことばかり考えてたはずなのに、気づけば「みんなどう思ってるかな?」って考える日々が多くなった時、「私は我儘ラキアとして、こんな大好きなメンバーともっと駆け上がりたいんだな」と実感して。そこからは全力で、いかに面白い事出来るか?とか考えて」と思い出を語ると、「表では私が引っ張ってるように見えてるかも知れないけど、みんなに役割がしっかりあって。この4人だから、我儘ラキアなんだなって、いますごく思います」としみじみ語る。

さらに「私たちはここで一度終わることを決めましたが、こんだけの人数が祈ったら、なにか変わるかも知れないし。その時思ったことを大事にして、わがままに生きることをこの4人でしようと思ってます。「ババアになったら会いましょう」って言葉は汚いので、可愛いうちに逢えたら逢いましょう。約束は出来ませんが」と再び逢う日の期待を含む言葉を残すと、「どんな道もあきらめなければ続きがあると思ってて。死ななかったら、何度でもチャレンジし続けられるよって意味を込めて、この曲を歌いたいと思います」と「To Be Continued」を披露。そして、いよいよ4人で歌う最後の曲。「みんなの心にこの曲を刻みます」と始まったラストナンバーは「Melody」。「ラスト、一緒にいこう!」の呼びかけに会場中の大合唱が美しすぎるエンディングを作り上げ、ラストライブの幕を閉じた。

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

「我儘ラキアは、彼女たちがただひたすら自分らしさを追い続けたプロジェクトでした」と始まり、「活動を終えることも自分たちの意志で選びきった」とを告げた終演VTRでは、“自分の意志を貫くこと=わがままであること”という、我儘ラキアが活動を通じて伝えたかったメッセージを改めて届け、「あなたの物語の主人公は、あなただけだから」と締めくくった。

メンバーそれぞれが感極まって涙するシーンはありながら、決してお涙ちょうだいにならず。あくまでも自分たちらしくわがままに、上手くいくことばかりではない人生や自分自身と闘う姿を最後まで見せてくれた、我儘ラキアのラストライブ。「ここに自分の命を置いていくつもりで」という、星熊の序盤の挨拶は決して大げさではなくて。4人それぞれが誰のものでもない自分の人生、命尽きる時に決して後悔などしないようにという気持ちを体現すべく、全身全霊をささげてステージに挑んでいただろうし。だからこそ、観る者の心を震わせたのだろう。アイドルがアイドルを超越する瞬間、二度と現れないであろう奇跡のグループの最後を見届けられたことを誇りに思うし。俺も明日から、自分の人生を少しわがままに生きたいと思う。

取材・文=フジジュン

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

我儘ラキア 撮影=TAKAHIRO TAKINAMI

セットリスト

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