左から、マッシュスタイルラボの仲谷陽子企画本部アンダーウエアデザイン課課長、生熊昂太MD本部MD2部「リリー ブラウン」MD担当課長
2022年4月にスタートしたマッシュスタイルラボの「リリー ブラウン ランジェリー(LILY BROWN LINGERIE)」(以下、リリー ブラウン)は、デビュー当時からキャミソールやタンクトップなどファッションアイテムの延長ではなく、ワイヤーブラを展開してきた。ワイヤーブラの開発には専門的な知識と技術が必要なため、下着専業メーカーで経験を積んだデザイナーやMDを採用してチームを編成し、本格的に下着に取り組んだ。快適性を追求する下着市場の拡大や独立系デザイナーの増加により、大手下着メーカーは苦戦、市場取り巻く環境は変わった。ブランド設立から3年で、初年度約4000万円だった売上高が約1億5000万円に成長。「リリー ブラウン」の今後の展開について、マッシュスタイルラボの生熊昂太MD本部MD2部「リリー ブラウン」MD担当課長と仲谷陽子企画本部アンダーウェアデザイン課課長に聞いた。
ランジェリーがブランドの顧客年齢層拡大に貢献
マッシュスタイルラボは、2020年に「スナイデル(SNIDEL)」から「スナイデル ホーム(SNIDEL HOME)」、2021年に「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」から「ジェラート ピケ スリープ(GELATO PIQUE SLEEP)」と、アイテムを拡大したブランドを派生させている。「リリー ブラウン」も同様の流れで、肌見せファッションの流行や服とランジェリーのボーダーレス化が進む中、ブランドの世界観を生かしつつ、ファッションの幅を広げる存在としてスタートした。「リリー ブラウン」と同じく、コンセプトに“ビンテージ”を掲げ、ビンテージ特有の繊細なレースやディテールをデザインに落とし込んだランジェリーを提案している。モノ作りに関して仲谷課長は、「『リリー ブラウン』らしさを大切に、消費者起点で、方向性を決めクリエイティブチームで何度も意見を交換する」と話す。時には、社内の700〜800人に向けて一斉メールで意見を募ることもあるという。直接意見を伝えてくれる社員の存在もあり、貴重なリサーチになっている。そんな社員のリアルな声が、トレンドを反映したスピード感のある商品開発につながっている。
ランジェリーの購買層や購買動向はアパレルとは違うようだ。生熊課長は、「購入層は、アパレルは20代が中心だが、ランジェリーは20代後半〜30代後半が中心で、40〜50代もいる。ランジェリー商材により顧客の年齢層が広がった。また、アパレルは6~7割が店頭で購入するのに対し、ランジェリーは7割がECの売り上げだ」と言う。
“シアーファンデシリーズ”が1万3000枚のヒットに
売り上げをけん引するヒット商品となった“シアーファンデブラ”(6930円)。まるで背中にファンデーションを塗ったように素肌をアップデートできる
“レディメイクブラ”トゥインクル (6930円)、“レギュラーショーツ”トゥインクル(2970円)
「リリー ブラウン ランジェリー」は「リリー ブラウン」店舗内と自社ECで販売
「リリー ブラウン」はアパレルと共通のコンセプトで商品開発する一方で、ファッションを楽しむための機能を持たせた“ソリューションインナー”を強化している。“ソリューションインナー”とは、肌見せアウターやオフショルダートップ着用時の下着問題を解決するものだ。その代表格が、売り上げをけん引する“シアーファンデシリーズ”だ。第一弾の“シアーファンデブラ”が登場したのは23年4月。ストラップと背中の部分がパワーネットで、アジャスターやホックなどブラジャーパーツを使っていないのが特徴だ。そのため肌と同化し、シアー素材や背中が開いた洋服と相性がいい。「肌見せ服を着たいが、ストラップレスやシリコンタイプのブラは苦手」という消費者のニーズに応えた。また、肌を美しく見せるファンデーション効果も期待できる。
“シアーファンデブラ”発売のきっかけは、マッシュスタイルラボがブランドを横断して開催するポップアップイベント“ザ ドレス ラボ”だった。仲谷課長は、「背中が開いたドレスが多数あり、それに合わせる下着を考えついた。会議にサンプルを持参してプレゼンしたのが始まりだ」と話す。“シアーファンデブラ”の発売直後にはSNSで火がついた。「23年に約6000枚を販売した。翌年、ブラトップスやボディースーツなどラインアップを拡大し、販路も広げた。その結果、シリーズ累計約1万3000枚を販売した。今後さらに展開を広げる」と生熊課長。 それだけでなく、“バッククロスブラレット”や “レディメイクブラ”なども、「リリー ブラウン」を象徴するソリューションインナーだ。
アンダーウエアデザイン課設立で効率とスキルアップ
新商品“カップ付ハーフシアーキャミ” 。カップ内蔵型で下は薄手のパワーネットになっている
新商品“カップ付フリルチュールキャミ”。フリルを贅沢にあしらったデザインは1枚でもレイヤードでも着用可能
オフショルダーや背中開きアイテム用に開発された新商品“シアーファンデ ストラップレスブラ”
新商品“バンドゥ付き2ウェイ ボディ”は、前後どちらにも着られるボディースーツ。バンドーブラ、チョーカーのセット
アパレルを含むブランド全体の年商は約56億円。ブランド全体でさらに成長するために、ランジェリー売上高の拡大を図る。生熊課長は、「トレンドの服を美しく着られるソリューションインナー中心に販路を広げていきたい」と話す。同社は24年秋、「リリー ブラウン」「アンダーソンアンダーソン(UNDERSON UNDERSON)」「バレリット(BALLELITE)」の3ブランドを擁するアンダーウエアデザイン課を設けた。アンダーウエア事業を強化するため、アイデアや情報、素材や資材などのリソースの共有が目的で、スタッフのスキルアップも図るという。下着に対する価値観が多様化する中で、下着メーカーとは異なる視点とスピーディな企画・開発力で、既存の下着とは違う付加価値のある商品を提供していくようだ。