人気アイドルグループが設立した「株式会社TOKIO」が廃業──法人の廃業にかかる「税金コスト」の内訳とは | ゴールドオンライン - Moe Zine

2025年7月2日、株式会社TOKIOが公式サイトを通じて法人の廃業を正式発表。同時に、同社が運営していた農業体験施設「TOKIO-BA(トキオバ)」の閉園も明らかになった。アイドルグループTOKIOのファンのみならず、活動内容から多くの国民の共感・支持を集めた企業の廃業ということで注目されたが、法人の廃業には多くの税務・法務手続きが伴い、少なからぬ税金コストが発生することもある。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

エミン・ユルマズ氏、杉原杏璃氏、特別講演決定!

THE GOLD ONLINE フェス2025 SUMMER

~あなたの財産を守る・増やす・残すための大展示会~

★8月23日(土)/東京国際フォーラムB5・B7★

 

 ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

『50代から始める終活「争族・不動産」対策』

平田康人 (著), ゴールドオンライン (編集) 

『富裕層が知っておきたい世界の税制【大洋州、アジア・中東、アメリカ編】』

矢内一好 (著)、ゴールドオンライン (編集) 

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

 

国民的グループの「法人としての終焉」

1994年にCDデビューしたTOKIOは、『ザ!鉄腕!DASH!!』などを通じて「芸能×地方創生」という新しい価値観を提示し、農業や林業、自治体との連携など、芸能の枠を超えた活動で高く評価されてきた。

 

しかし、2025年6月、日本テレビが国分太一氏のコンプライアンス違反を公表。同氏は無期限の活動休止に入り、6月25日にはグループの解散が正式に発表された。その流れを受けて、2020年7月に設立した「株式会社TOKIO」の法人としての活動継続も困難となり、廃業を選択するに至った。

 

リリースでは「グループTOKIOの解散に伴い、所定の事務手続きおよび関係各位へのご説明等を終え次第、廃業する運びとなりました」と報告されている。

法人をやめるにもお金がかかる──「終わりの税金」に注意

個人の芸能活動と異なり、法人の廃業には多くの税務・法務手続きが伴う。とくに資産の処分や株主への分配には慎重な対応が求められる。主な税務上のポイントをピックアップしてみた。

 

1. 資産売却

TOKIO-BAのような不動産や設備、備品などを売却すれば、帳簿価額との差額が「譲渡益」として法人税の課税対象となる。

 

また、これらを無償あるいは著しく低い価格で譲渡した場合でも、税務上は「時価で譲渡した」とみなされ、法人税および消費税の対象となる。

 

2. 出資金の分配

解散・清算に伴い株主へ分配される資金のうち、「資本金等の額」(資本金+資本剰余金)までは非課税とされるが、それを超える分は「みなし配当」とされ、20.42%の源泉所得税の対象となる。このみなし配当は、配当所得として総合課税の対象となり、総合課税の税率は、所得金額に応じて5%から45%まで変動する。

 

なお、帳簿上の資本金と税務上の「資本金等の額」は一致しないことが多く、過剰に税金がかからないよう慎重な判定が求められる。

 

3. 消費税の「みなし課税」にも要注意

社用車や什器を従業員や役員に無償で譲渡した場合も、消費税法上は「課税売上」とみなされるケースがある。たとえ現金のやり取りがなくても、時価による譲渡があったとされ、消費税の申告義務が生じる可能性がある。

 

4. 従業員の整理と社会保険・源泉徴収

従業員がいる場合には、退職手当の源泉徴収、雇用保険・社会保険の資格喪失届などが必要になる。労務管理上の手続きも、税務と並ぶ重要な業務である。

「やめる」ことにも戦略がいる

TOKIOのような著名企業であっても、法人を畳む際には時間・手間・コスト・知識が必要だ。この現実は、全国の中小企業・個人事業主にも等しく当てはまる。

 

また、廃業時に押さえておきたい主なチェックポイントを挙げてみた。

 

廃業時の主なチェックポイント

●解散・清算時の課税タイミングと課税範囲の把握

●資産の処分方法(有償・無償)と税務処理の整合

●株主への分配に伴う「みなし配当」課税・源泉徴収の対応

●従業員の退職処理、社会保険の届出義務

●債務免除益への課税

●役員退職金の活用

●欠損金の繰戻し還付の適用可否(黒字だった前期がある場合)

●延滞している税金に関する債務は廃業後も放棄されない

廃業だけが“出口”ではない

シェル総合会計事務所の貝井英則税理士は次のように語る。

 

「株式会社TOKIOは、おそらく資産超過の状態にあるため、通常の『普通清算』手続きが採用されると考えられます。一方で、中小企業では債務超過で廃業するケースも多く、そうした場合には『特別清算』の手続きが必要となり、より煩雑になります」(貝井氏)

 

TOKIOの事例は、法人にとっての「終わり方」にも選択肢と計画性が必要であることを示している。

 

「廃業という選択肢だけでなく、M&A(株式売却・事業譲渡)といった別の“出口戦略”を選ぶことも可能です。多くの経営者は、無意識のうちに『自分は一生、経営者であり続ける』と思い込んでしまいがちです。しかし、引退の時期や相談相手の選び方によって、引退後の人生は大きく変わります」(貝井氏)

 

企業活動の終了には、感情だけでは解決できない制度上の壁と負担が立ちはだかる。株式会社TOKIOのように社会的に注目を集める存在であっても、その背後では粛々と複雑な税務・法務処理が進められる。法人にとって「終わること」は、単なる手続きではなく、次の人生に向けた“最終経営判断”でもある。

 

経営の最終章をどう描くのか──それは多くの企業が直面する課題といえるだろう。

 

 

THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班

Write A Comment

Exit mobile version