乃木坂46 賀喜遥香、3年ぶりに“夏曲センター”に立つ意味 「好きロック」から「Same numbers」への軌跡 - Real Sound|リアルサウンド - Moe Zine

 乃木坂46が7月30日にリリースする39thシングル表題曲「Same numbers」のMVが公開された。

 真夏という季節のリリースでありながら、その映像と楽曲には、どこか涼しさと張り詰めた静けさが漂っている。センターを務めたのは賀喜遥香。2022年の30thシングル表題曲「好きというのはロックだぜ!」以来、実に3年ぶりに夏曲のセンターに立った彼女の姿は、これまでの“太陽のような存在”というだけではない、柔らかくも張り詰めた静けさをまとっていた。

 「好きというのはロックだぜ!」の際、賀喜は羽田空港を舞台に10パターンもの衣装を身にまとい、夏の開放感を全身で表現してみせた。弾けるような笑顔と溢れ出るエネルギーが、彼女をグループのエースとして一気に押し上げたのは言うまでもない。夏休みに詰め込みたい希望を全部並べるように、心の奥まで陽にさらすようにして立つその姿には、迷いや戸惑いの影はほとんどなかった。あの夏、賀喜は間違いなくグループの中心で、太陽のように眩しい存在だった。

乃木坂46『好きというのはロックだぜ!』

 だが、「Same numbers」で賀喜が立つのは、3年前と同じ“夏シングルのセンター”という立場でありながら、まったく別の物語の中心だった。楽曲のテーマは、デジタル時計に繰り返し現れる“同じ数字”。MVでは、現実には存在しないはずの「88:88」という時刻が何度も映し出される。それは賀喜の誕生日である8月8日を示す数字でもあり、偶然を装いながら必然のように浮かび上がるのが印象的だ。映像を手掛けたのは、近年の乃木坂46の映像表現を担ってきた人物のひとりでもある伊藤衆人監督。画面の中で賀喜は何度も時計を見つめる。それはまるで過去を振り返るようでもあり、遠くの未来を探るようでもある。

 この3年間、賀喜がセンターという立場の中でどれだけ成長を遂げたかは、これまでに残してきた言葉にも表れている。「好きというのはロックだぜ!」で二度目のセンターを経験したあと、賀喜は「周りのみんなのことも見えるようになった」と話していた(※1)。センターというのは、ただ歌って踊るだけの場所ではない。周りを引っ張りながら、時に自分が誰よりも不安を抱え、それを隠し続けられなければならない役割でもある。「好きというのはロックだぜ!」の頃の賀喜は、不安を笑顔の奥に隠しながら乗り越えた。「Same numbers」で映し出されているのは、自分の弱さを正面から抱えたまま立ち続ける強さだ。

乃木坂46『Same numbers』MUSIC VIDEO

 MV撮影後、賀喜はブログに「悔いの残る過去の自分も、不安を抱いてしまう未来の自分も、救えるのは今を生きている自分自身なんだということに気付かされた撮影でした」と綴っている(※2)。この一文には、センターとして経験を積み重ねてきた彼女が、その責任の重さを正面から受け止めた姿が滲んでいる。時間の流れは止められない。だが、その流れに縛られすぎず、“今”に立つ。その覚悟を示すように、MVの終盤、時計の数字が「23:59:59」から「00:00:00」になった瞬間、賀喜は穏やかな表情を浮かべる。

 「Same numbers」のフォーメーションからも、賀喜の役割の変化が見て取れるだろう。センターの両脇を固めるのは、初めてフロントに立つ5期生の川﨑桜と一ノ瀬美空。選抜メンバーの半数以上を5期生が占めていることからも、グループが世代交代のタームに入っているのは明らかだ。今回の表題曲フロント3名のフォーメーションを見て、10年以上前の「ガールズルール」で白石麻衣、松村沙友理、橋本奈々未が並んだ構図を思い起こした人も少なくないのではないだろうか。

 冠番組『乃木坂工事中』(テレビ東京系)のインタビューで、賀喜は「(乃木坂46に加入して)もう6年半、7年目なので、後輩のみんなとか同期のみんなとか、先輩方が安心して楽しくみんな過ごしてほしい」と語っていた。さらに「39枚目シングルは全員に感謝を届けられる作品にできたら」と続けた言葉からも、センターとして自分ひとりの背中だけでなく、メンバー全員を包み込もうとする覚悟を持っていることがが伝わってくる。

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