PROFILE: ダヴィデ・セシア/そごう西武副社長ダヴィデ・セシア/そごう西武副社長

PROFILE: PROFILE:(DAVIDE SESIA)1967年、伊ミラノ生まれ。92年に来日し、数々の海外アパレルブランドの日本支社でマネジメントを経験。ベネトンジャパン取締役CFOを経て、2000年プラダジャパン社長に就任し「ミュウミュウ」「チャーチ」を含む日本および海外の子会社を統括。23年11月から現職 PHOTO:SYUHEI SHINE

そごう・西武は7月9日、旗艦店「池袋西武本店」の大規模改装第1弾として、3階に化粧品売り場をオープンする。売り場面積約1700平方メートルの1フロアに47ブランドを集積。都内最大級のブランド数を誇るコスメフロアが誕生する。ダヴィデ・セシア=そごう・西武副社長は「これはただの改装ではない。“リニューアル”の枠を超えた“リボーン(再生)”と言うべき」と語気を強める。

今回の改装を経て、「日本の百貨店と長年関わってきたが、ここまでのスピード感はなかった」と振り返る。背景には、米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループによる資本参加と、それに伴う経営体制の刷新がある。「新しいエネルギーが入り、プロジェクトが一気に動いた」。従来、百貨店の改装は数年単位で構想・実行されるのが通例だが、同店では意思決定の迅速化により、構想からわずか約1年でプロジェクトを具体化させた。

数あるカテゴリーの中で、なぜ化粧品売り場を最初に刷新したのか、その理由は明快だ。「化粧品と食品(9月以降開店)は、日々の生活に最も必要なもの。だから最初に手をつけた」。生活者目線での優先順位がはっきりとあったという。

“クロス・エクスペリエンス”へ進化

「ディオール ビューティー」

「ディオール ビューティー」

「ラ・メール」

「ラ・メール」

「ゲラン」

「シセイドウ」

「イプサ」

「シュウ ウエムラ」

「エレガンス」

9月下旬オープン予定の「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」

イベントスペース“ニュース”の初回は「セリーヌ」のポップアップを実施

イベントスペース“ニュース”の初回は「セリーヌ」のポップアップを実施

百貨店の化粧品売り場が多層階に分散する傾向が強まる中、「最近の百貨店リニューアルは、どこも似たようなものになりつつある。ただ広い空間にブランドを詰め込むだけでは意味がない」と語る。「必要なのは、明確なコンセプトだ」と強調する。

新たな化粧品売り場では、ブランドの世界観や体験価値を重視し、コンセプト性の高い空間づくりを追求。新業態も多数導入した。「従来の百貨店の延長では顧客の心は動かない。買い物をするだけでなく、ブランドの世界観に没入できる“場所”が求められている」とし、「都内でこれほど多くのブランドを1つのフロアに集積し、なおかつ全体で一貫した世界観をもたせた売り場は他にない」と自信を示す。

特徴的なのは、カフェ利用もできるチョコレートショップ「メゾン・デュ・ショコラ」を配置し、買い物目的でなくても立ち寄れる“余白”を持たせた点だ。百貨店にありがちな「化粧品フロアは人が多いが滞在が短い」という課題に対応し、「滞在し、発見し、回遊する」構造を導入。店舗全体の回遊性も高めている。

また、2週間ごとに企画が入れ替わるイベントスペースでは、コスメに限らずファッションやアクセサリー、雑貨など幅広い提案を展開する。第1弾は「セリーヌ」のポップアップイベントを実施する。「“インクルージョン”を全館リニューアルのコンセプトに掲げているが、セパレーションはもう古い。フロア全体を“クロスセル”を超えた“クロス・エクスペリエンス”の場へと進化させる」と、力を込める。

業界の新風なるか

ダヴィデ・セシア=そごう・西武副社長 PHOTO:SHUHEI SHINE

3階のフロアは、隣接するヨドバシカメラとも2本の通路で接続する予定だ。ヨドバシ側とのMD(商品構成)や売り場としての世界観は「まったく異なる」が、相互送客による相乗効果も見込まれる。

12月には1階にフレグランスフロアがオープンする。売り場面積270平方メートルで「関東最大級のフレグランスブティックゾーン」が誕生する。3階の化粧品売り場とあわせて、美と香りの一大拠点を形成する。3年後には、両フロアで改装前比45%増の売り上げを見込む。

“再生”を果たした新たな旗艦店モデルが、縮小均衡が続く百貨店業界に風穴を開けるか。今後の展開に注目が集まる。

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