2025年7月2日〜4日、京都で開催されたスタートアップカンファレンス「IVS2025」。会場にはAI、ロボティクス、SaaSといった定番ジャンルのスタートアップが並ぶ中、異彩を放っていたのが、デジタルファッションを手がけるharmony株式会社のブースだ。
harmony株式会社のみなさん
「そもそも、デジタルファッションって何?」という人も多いだろう。ざっくり言えば、アバターが着るための“デジタル専用の服”だ。ゲームやVR空間、バーチャルライブなど、リアルではなくデジタルの世界でだけ着るファッションを、harmonyは1年ほど前から本格的に展開している。
特徴は、マルチプラットフォーム対応と高い3Dクオリティ。VRChatやバーチャルSNS、ライブプラットフォームなど、さまざまな空間にシームレスに着回せるデザイン設計になっており、ファンが勝手に宣伝してくれるレベルの支持を集めているという。
「ギリシャの観光地は、史跡なのでコスプレ禁止なんです。でも、メタバースなら着られる」 そう語るのは、プロダクトリードの田上翔一さん。今回の展示では、古代ギリシャ風のマントや、乙姫様風エフェクト付きの衣装など、“リアルでは恥ずかしいけど、デジタルなら着たい”というニーズに応えるプロダクトを披露していた。
ギリシャ神話に登場する狩猟と貞潔の女神「アルテミス」のコレクション
今後の展開について田上さんは、「いずれは“無印良品”みたいな日常使いのデジタル服を出したい」と語る。コスプレや派手な衣装にちょっと抵抗がある我々にとっても、こうした“ふつうの服”が選べるのはありがたい話だ。
バズワードとしての“メタバース”はひと段落したように見えるが、中のコンテンツであるアバターやファッション領域はむしろ伸びている。特にharmonyのように、リアルのアパレル出身メンバーが手がけるプロダクトは、デザイン面でも評価が高い。
リアルのアパレル産業が実店舗の閉店や在庫処理問題に揺れる中、“着られない服”を売る新しいファッション市場が育ちつつあるようだ。