オム プリッセ イッセイ ミヤケは、イタリア・フィレンツェのメンズ見本市ピッティ・イマージネ・ウオモ(以下、ピッティ)に名誉招待ブランド“ゲスト・オブ・オナー”として参加し、2026年春夏コレクションをランウェイショーと展覧会形式で6月18日に発表した。シーズンタイトル“Amid Impasto of Horizons —積み重なる地平—”にふさわしく、色やかたち、素材、ディテールに新たな要素を美しく重ねて、独自のプリーツ技術を世界へと軽やかに解き放った。

オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクションの会場はメディチ家所有別荘の庭園Ryunosuke Kanaya

ショー会場となったメディチ家の別荘ヴィッラ・メディチェア・デッラ・ペトライアの庭園

会場には、ルネサンス期にフィレンツェの発展に貢献したメディチ家の別荘の一つ、ヴィッラ・メディチェア・デッラ・ペトライア(Villa Medicea della Petraia)を選んだ。セットはアンドレア・ファラグナとミヒャエル・クライネが手掛けており、庭園中央の噴水やスプリンクラーから上がった霧状の水しぶきによって数々の虹がかかる幻想的な空間だ。コレクションも虹のように、多彩な39色で華やぐ。イタリアでの発表に合わせて現地で採集した色の数々が、オム プリッセ イッセイ ミヤケがこれから歩む新章に大きく関連している。

イタリアで約200色を採集オム プリッセ イッセイ ミヤケのデザインチームがパレットにカラーを採取する様子© ISSEY MIYAKE INC.

デザインチームは筆とパレットを手にイタリア各地を訪れ、200色近いカラーを約1年かけて採集した。

オム プリッセ イッセイ ミヤケのデザインチームが生ハムから採取したピンク色© ISSEY MIYAKE INC.

イタリア各地で採集した色はさまざまで、39色の中には生ハムのピンクを再現したユニークなものもある。

今シーズンのモノ作りは、1本の筆からスタートした。デザインチームはイタリアでの発表が決まると、筆を手にしながらフィレンツェやジェノバ、ピサやチンクエ・テッレなどイタリア各地を訪れ、200色近いカラーを約1年かけて採集した。道端のポストのグリーンや、アガヴェのイエロー、ナチュラルワインのレッド、生ハムのピンクなど、カラーチップにはないあらゆる色のニュアンスを絵の具で再現し、イタリアの豊かな風土をコレクションに取り込んでいる。

ユーモア溢れる最高の日常着 オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクションのファーストルック ペインターズ ギア シリーズGiovanni Giannoni

オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクション“ペインターズ ギア”シリーズ。

オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクションのリネンライクなイエローのスーツGiovanni Giannoni

オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクション“リネン ライク”シリーズ。

ファーストルックは、色の採集に必要な道具を収納するアイデアから誕生した“ペインターズ ギア”シリーズだ。ジャケットやシャツの上に身に着けたパーツウエアは、日常のあらゆる小物を収納でき、シンプルな装いのアクセントにもなる。デザインチームが大切にしている、デザインの“ユーモア”がふんだんに感じられた。イタリアで採集した39のオリジナルカラーはショー終盤にかけて混ざり合い、服をキャンバスに見立てて、調色過程のカラーパレットや、筆跡のようなグラデーションをそのままのイメージで採用し、美しい制作過程を記録した。

色に加えて、今シーズン注力したのがテーラリングである。クラシックが息づくイタリアでの発表に合わせてジャケットの構造を見直し、ノーカラーのロングタイプやダブルブレストなどジャケットの種類も拡充した。従来よりも肩まわりのラインをやや強調したり、身幅をたっぷりとってシルエットに迫力を加えたりと、柔らかいプリーツに構築的要素を調和させ、テーラリングのさらなる可能性を示している。

イタリアのスーツでは定番素材のリネンも、プリーツで肌触りを再現した。清涼感のある素材は、ジャージーよりもわずかにハリがあり、構築的なシルエットを可能にする。男女のモデルが身にまとうプリーツのスーツは、素材感と鮮やかな色が軽やかでありながら美しい構造は維持しており、現代社会に向けてスーツの新しいバランスを提案した。

ピッティの自由なスタイルにも着想オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクション パレットリーズのパンツとシアートップスGiovanni Giannoni

オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクション“パレット マーブルド”シリーズ。

オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクションのガーメントバッグ型に収納できるキャリア キャリードGiovanni Giannoni

オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクション“キャリア キャリード”シリーズ。

また、今シーズンはピッティを訪れる紳士たちの自由なドレススタイルにも着想している。ルールの多い男性服をどのように崩すか、引き算していくかを考え、自由なスタイリングでコレクションに躍動感を与える。リゾットのような凹凸のあるニットウエアをはじめ、シアー素材をプリーツアウターの上に重ねたり、タイツのようなスキニーボトムやミニ丈のショーツだったりと、素材感にメリハリを加えたスタイリングで各アイテムの特徴をさらに引き出した。

終盤に登場したのは、ガーメントバッグ型にパッカブルできるアウター“キャリア キャリード”だ。旅に出る際のバッグそのものが軽量なコートへと変わり、着用者を遠くに連れて行く。ハンガーをあえて付けたままにし、ユーモアたっぷりのアイデアでオム プリッセ イッセイ ミヤケにとってのイタリアの旅を締めくくった。現地の文化や風土を取り入れることで、プリーツの可能性をさらに拡張させる会心のコレクションだった。庭園には、400人近いゲストの歓声と拍手が鳴り響き、多幸感溢れる“最高の日常着”を讃えた。

パリでの挑戦を経て――オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクションのフィッティングを行うデザインチーム© ISSEY MIYAKE INC.

フィッティングを行うオム プリッセ イッセイ ミヤケのデザインチーム。

オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクション“ペイント ブラッシュ クローズ アップ”シリーズのバックステージ© ISSEY MIYAKE INC.

オム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクション“ペイント ブラッシュ クローズ アップ”シリーズ。

オム プリッセ イッセイ ミヤケは、2013年のスタート以降プリーツの新たな可能性を探求してきた。創業者の三宅一生とデザインチームは、プリーツをTシャツやジーンズのように日常を彩る衣服として浸透するよう、あらゆる挑戦を行ってきた。19年にはパリ・メンズ・ファッション・ウィークに参加してファッションショーを行い、以降はパフォーマンスやアート、風、石、テントなど、日常に根差したテーマ性を取り入れた制作を通じて、世界観やビジネスをさらに広げることに成功する。

一方で、パリでの経験を経て拡張したプリーツの可能性を、より多くの人に深く伝えたいという思いもデザインチームの中で芽生えていた。そこで、ピッティ参加を皮切りに、26年春夏シーズンからは新たなクリエイティブの方針“オープン ステュディオ”を採用。シーズンサイクルに合わせた新作発表はそのままに、世界のさまざまな場所を巡りながら、不定期でイベントや場所に合わせた企画も開催していく。

プリーツの可能性を立体的に伝える日本デザインセンター三澤デザイン研究室の三澤遥がディレクションしたオム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクションの展覧会Delfino Sisto Legnani

日本デザインセンター三澤デザイン研究室の三澤遥がディレクションした展覧会。

展示会場のシャンデリアに明かりが灯り、幻想的なムードに変わるオム プリッセ イッセイ ミヤケ2026年春夏コレクションの展覧会Ryunosuke Kanaya

展覧会会場のシャンデリアに明かりが灯るとさらに幻想的な雰囲気に変わる。

ピッティのショー会場でも、日本デザインセンター三澤デザイン研究室の三澤遥がディレクションした展覧会を開き、26年春夏コレクションのリサーチプロセスと、原点となるプリーツの可能性を調和させた制作過程を展示。ショーのゲストはもちろん、会期中にはイタリア地元学生らも招待して、オム プリッセ イッセイ ミヤケのものづくりを伝えた。

オム プリッセ イッセイ ミヤケは、今後もさまざまな場所へと旅を続ける。そして、その土地の文化や風土と共に、プリーツで魅力的な日常を作り上げていく。たとえファッションの都であるパリではなくとも、派手なショーではなくとも、好奇心が尽きない限りブランドは前進し続けることをデザインチームはフィレンツェで証明した。受け取り手も、無限の可能性を感じたはずだ。誰よりもブランドを愛した三宅一生の「世界を見なさい」という言葉が、躍動するオム プリッセ イッセイ ミヤケの根幹を今もなお支えている。

●問い合わせ先
イッセイ ミヤケ
TEL 03-5454-1705

公式サイト

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