伝統と革新が融合する京都発のファッションイベント『第31回 Fashion Cantata from KYOTO』が2025年6月14日(土)、京都劇場にて開催された。水川あさみが着物姿でファッションショーに初登場し、シシド・カフカとアオイヤマダが山本寛斎の想いを情熱的なパフォーマンスで表現した華やかなステージとなった。
『第31回 Fashion Cantata from KYOTO』は、京都の伝統的な和装文化と先進的な洋装文化、さらには芸術文化との交流・融合を図り、京都から世界へ向けて情報を発信するファッションイベント。
今年のテーマは「情熱のベクトル」。思考やアイデアの方向性と大きさは違えども、きもの業界・洋装業界に生きる作家達の独自の想像力、独創力に着目し、ステージから発するパワーで様々な「ベクトル」を持つ観客の感受性を刺激するショーとなった。
和装コレクションでは、水川あさみが青野保夫デザインによるローケツ染のきものと、可野浩太郎による直線的なラインと鮮やかなブルーが印象的なきもの、計2ルックを披露。
作家:可野浩太郎
作家:青野保夫
アオイヤマダは、金彩友禅が美しい和田全央のデザインによるきものを身にまとい、独自の存在感を放ちながらランウェイに登場した。
作家:和田全央
洋装コレクションでは、アオイヤマダが再び登場し、1973年にデヴィッド・ボウイのUSツアーのステージ衣装として着用されたKANSAI YAMAMOTOの代表作「TOKYO POP」をまとい、圧巻のパフォーマンスを披露。
「TOKYO POP」KANSAI YAMAMOTO
シシド・カフカもKANSAI YAMAMOTOのアーカイブコレクションを着用し、ドラムパフォーマンスでショーを盛り上げた。
KANSAI YAMAMOTO
■アオイヤマダ、水川あさみ、シシド・カフカ代表質問
Q1:Fashion Cantata from KYOTOにご出演されていかがでしたか?
水川あさみ:このような着物のファッションショーに出演する機会は初めてで、日本の伝統的な着物を着させていただけてとても光栄ですし、ワクワクしています。リハーサルのときよりもみんなが生き生きしていて、どんどんエネルギーが渦巻いていくのを感じてこの後のショーも楽しみです。
シシド・カフカ:今回SOIL&“PIMP” SESSIONSの皆さんとパフォーマンスをご一緒させていただくんですが、それだけでも「祭り」なのに、その中でモデルの方々がウォーキングして、アオイヤマダさんやダンサーの方々が踊ってくださるというのはものすごい祭りに参加しているんだなという楽しみがあります。回を重ねるごとにこの思いが大きくなっていっています。
アオイヤマダ:昨日の夜に銭湯へ行ったんですが、自分の裸を見て凄く反省したんですよ。当たり前のように服を着ていたなと思って。ファッションって凄いことだなと実感しました。時代とかアイデンティティーというのを繋いでいく。まさに人生で、山本寛斎さんの人生が詰まっているんだなというのを実感して色々な思いが込み上げてきました。
Q2-①:水川さんは実際にご衣装を着られてみていかがですか?
水川:今回2点着させていただくんですが、どちらの着物も色鮮やかでビビットな衣装です。今着用している着物はステンドグラスをイメージして作られています。普段「役」で着させていただくような衣装とは全く違う鮮やかなお着物で、とっても気持ちが華やかになるんだなと実感しました。スーツや着物を着ると背筋か伸びると言いますけど本当にそうだなと思います。とても凛とした気持ちになります。
Q2-②:水川さんは着物とご自身の思い出は何かございますか?
水川:日本の人からすれば近い存在のはずなのに、日常に置いて考えるとちょっと遠くなってしまいますよね。それがもう少し身近なものになっていくと素敵な日常にもっともっと繋がっていくような気がします。
作家:青野保夫
Q2-①:シシド・カフカさんは実際にご衣装を着られてみていかがですか?
シシド:まずはアオイヤマダさんが着ている「TOKYO POP」を実際に見れるという感動があります。寛斎さんの服を着させていただいて感じるのは力がみなぎってくるなということです。寛斎さんの人生が洋服に詰まっているからこそ、それを着た私の力がみなぎってくる、そういう作用に繋がっていくんだなというのを感じています。
Q2-②:今回はKANSAI YAMAMOTOを身に纏ってのパフォーマンスでした。どんなことを意識してパフォーマンスに臨まれましたか?
シシド:寛斎さんのファッションからも元気を届けるという思いが強くあると思います。その思いと一緒に自分自身も楽しみながら皆さんと楽しい空間を作るということを念頭に置いていました。
KANSAI YAMAMOTO
Q2-①:アオイヤマダさんは実際にご衣装を着られてみていかがですか?
アオイヤマダ:このデザインの始まりを昨日お聞きしまして。イラストレーターのアントニオ・ロペスさんの「TOKYO POP」というイラストの中に面白い東京の一部としてニッカポッカが描かれた絵を見て、寛斎さんが作られたというのをお聞きしました。日常から始まっているんだなというのが印象的でした。
それをデヴィッド・ボウイさんが着られて、デヴィッド・ボウイさんも山本寛斎さんも「これで俺らは世界に行くんだ!」という気合いだったんですって!私が想像できないくらいの情熱だと思います。2人の羽となった衣装なので、その羽の力を借りてパフォーマンスさせていただきます。
Q2-②:アオイヤマダさんは和装と洋装それぞれのショーに出演されましたが表現者として意識の違いはございましたか?
アオイヤマダ:全然違いました。和装は作者の和田さんとお話させていただいて、1着を作るのに2か月〜3か月くらいかかるとお聞きしました。それくらいの人の力と時間の結晶なんですよ。情熱の結晶。本当にファッションカンタータのテーマそのもののように感じて和装を歩きました。
作家:和田全央
Q3:ファッションカンタータは日本の古き良き伝統と先進的な芸術文化を発信し続けています。昔から続けていることは何かございますか?
水川:お味噌を作ったり糠漬けを漬けたり、「手仕事」みたいなことがとても好きで、先人の知恵を借りながら、ずっと楽しんでいます。
アオイちゃんとも何度かプライベートで豆板醤を作ったり、柚子胡椒を作ったりもしました。
シシド:続いているのはドラムですね。デビューしてから、リハーサルに入るときにサウナスーツを着込んでやってます。というのも夏フェスなどに出ると直射日光の中で演奏しなければならない環境も多いので、そんな中でもパフォーマンスができる体を鍛えておくために、サウナスーツで鍛えています。
アオイヤマダ:私は文通をしている人がいまして…。実のおばあちゃんではないのですが、好きなおばあちゃんがいて、手紙を交換しています。文通っていいですよね。「想いながら書く」というあの時間は特別だなと思います。よくよく考えたら書くことって子供の頃からやっていますし、そういう意味でも昔から続けていることです。
Q4:今年のショーのテーマは「情熱のベクトル」ですが、みなさんが最近、情熱を捧げているものがあれば教えてください。
水川:最近梅を漬けたばっかりでして!梅酢が上がってくるので、それを毎日必死で見てます。
シシド:最近やっと趣味ができまして。観葉植物なんですけどこの木の樹形を好みにするためにはここをこう切ったらこうやって芽が出て、こういう風に折り曲げたら…みたいなことを毎日情熱を捧げながら考えています。
アオイヤマダ:「情熱を捧げ続けられる方法」というのに情熱があって。小さなことでもよいので「どれだけ日常の解像度を上げて情熱を捧げ続けられるか」ということに情熱があるのかなと思います。小さなことでも「ウォーーー」ってなりたい!(笑)。
Q5:最後にこのあとのショーに向けて意気込みをお願いいたします。
水川:本当に美しいお着物を着させていただいて、とても光栄に思っています。今までやったことのないことにチャレンジするというのもそうですし、観客の皆さんとひとつになって、素晴らしい伝統を伝えられたらよいなと思います。その一部になれるように頑張ります!
シシド:洋服一つ一つに、もの凄く強い個性が備わっていて、ステージの上で集結したときや演奏しているときに、お会いはできなかったですが寛斎さんから「パーン!」と背中を押してもらっているような気持ちになりました。みんな凄く楽しい気持ちと強い心を持って、このステージに上がっているのではないかなと思います。そのパワーや元気が皆さんに届けばよいなと思っています。
アオイヤマダ:寛斎さんが生きてらっしゃった時にショーに出演させていただいて、「お前は何を思ってそこに立ってんだ」と言われて、「日本のために立つんだぞ」って言われて!今日は日本のためと言われると大きすぎるので、観ていただく皆さんに届くように一生懸命やらせていただきます。