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フランス上院は、中国の「シーイン(SHEIN)」や「ティームー(TEMU)」などの“ウルトラ・ファストファッション”と呼ばれるブランドを規制する「ファストファッション法案」をほぼ全会一致で可決した。

同法案では、“ウルトラ・ファストファッション”企業を対象に、EU域外から発送される小包1個あたり2〜4ユーロ(約330〜660円)の課税を行うほか、製品および企業の広告を全面的に禁止する。最終的に、2030年までに1商品あたりの課税上限を10ユーロ(約1651円)に引き上げられる可能性がある。また、20年に施行された売れ残り商品の廃棄を禁止する「廃棄禁止及びサーキュラーエコノミーに関する法律」により、未販売品を「寄付」することで得られる税制優遇も廃止される見通しだ。

なお、広告の全面禁止といった措置については、EUレベルでの承認が必要となるため、フランス政府はまず欧州委員会への通知を行う。その後、最終調整が行われる予定で、成立は早くても9月末から10月が予想される。

一方、シーインは価格に敏感な消費者や低所得世帯を罰するものだと主張。同社のフランス広報担当クエンティン・ルファ(Quentin Ruffat)はAFPの取材に対し、「今回の法案が成立すれば、当社の顧客の財布に直接的な負担を強い、購買力を大幅に低下させることになる」と主張した。同社は、法案のさらなる修正を求めてロビー活動を続ける方針を示している。

可決をめぐっては、“ウルトラ・ファストファッション”の定義が争点となった。原案では、より広義のファストファッションが対象とされていたが、企業側の「地域雇用への貢献」といった主張による強いロビー活動により、内容が一部緩和された。今回の法案では、“ウルトラ・ファストファッション・プラットフォーム”と、実店舗を構えるファストファッションブランドを区別することで、結果的にスウェーデン、アイルランド、スペインといった欧州本社の企業は、実際には中国、インド、バングラデシュなど低賃金国での下請け生産や複雑なサプライチェーンに依存している場合にも規制の適用を免れる形となる。

フランス上院で法案の推進役を務めた共和党所属のシルヴィー・ヴァラント・ル・イール(Sylvie Valente Le Hir)議員は、「我々は明確に線を引いた。規制すべきは“ウルトラ・ファスト・ファッション”。一方フランスに雇用を生み、地域経済とつながりを持つ、国に根付いた手頃なファッションブランドは保護していきたい」と述べた。

法案は今後、施行に向けて細則の整備が進められる見通しだが、「ウルトラ・ファストファッションを規制する法制度としては世界初となり、他国の政策にも影響を与える可能性がある。

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