PROFILE: 徳留嘉寛/佐賀大学教授
PROFILE: (とくとめ・よしたか)薬学部卒業後、大学院薬学研究科を修了。その後、ポーラ化成工業の研究所で10年以上研究活動を行う。その後、武蔵野大学助手・助教、城西大学准教授・教授を経て、2021年から佐賀大学の化粧品科学 共同研究講座に特任教授として着任。24年から教授に就任、現在は国立大学初のコスメティックサイエンス学環設置に向け日々奮闘中
化粧品業界全体でサステナビリティへの関心が高まる中で、化粧品ブランドが農業に参入して原料の自社生産に乗り出す動きも珍しくなくなってきた。この潮流はどのように化粧品業界に影響を及ぼすか。国立大学法人・佐賀大学化粧品科学講座の教授を務める徳留嘉寛教授に、農業参入の今と今後を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月26日号付録「WWDBEAUTY」から抜粋・加筆しています。無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
WWD:化粧品ブランドが農業に参入する動きについて、どう捉えているか。
徳留嘉寛教授(以下、徳留):メーカーが農業に関与する背景には、原料に対する責任がある。天然物は育つ環境や収穫年で成分の質が変わりやすい。そのため、自社管理によって品質の安定性を図ろうとするのは自然な流れだ。また、消費者のトレーサビリティー意識も影響している。「誰がどこで育てたのか」という背景が明らかになることで製品への信頼性が増し、ブランドのストーリー性の強化にもつながる。
WWD:一方で、農業参入には課題も多い。
Image by Freddy from Pixabay
徳留:最大の課題はその“こだわり”をどう消費者に伝えるかという点だ。たとえば水の使用に関しても、名水であろうが精製水であろうが、成分表示上は全て「水」。植物エキスも同様に、どんな背景があっても表記上は変わらない。そういった“見えない価値”をいかに伝えるかが難しい。
さらに、農業はすぐに成果が出るものではなく、収益化には時間がかかる。結果として、コストの問題が参入障壁になるのは確かだ。ただし、それでも消費者にしっかりと価値を伝えられれば、理解してくれる層は必ずいる。
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