2025年5月31日(土)に奄美大島・アマホームPLAZAにて「AMAMI TEENS FES」が開催。初夏の気持ちの良い風が吹く中、奄美大島の島民400人が訪れ、奄美大島の音楽好きの小中高生が歌を披露し、交流する場になった。
2021年にユネスコの世界自然遺産に登録された奄美大島は、豊かな自然とともに、独自の言葉や音楽文化を今に受け継ぐ島。なかでも三線とともに歌われる「島唄」は、生活の中で育まれた音楽として、世代を超えて愛されてきた。即興性や語りに近い節まわしが特徴で、土地の記憶や感情をそのまま声にのせて伝える、奄美ならではの音楽文化だ。
しかし近年、島内では音楽に触れる若者の姿が少しずつ減ってきているという。
そこで、まずは音楽に関心を持つ小中高生が自由に表現し、同世代と出会い、つながる場をつくろうと開催されたのが、この「AMAMI TEENS FES」だ。
開催に先立ち、5月中旬には出場者を対象としたワークショップも行われた。
東京や大阪で活動するプロのボイストレーナーが奄美を訪れ、声の出し方や人前で歌う際のコツなど、実践的なアドバイスを直接伝授。専門的な指導に触れられる機会は島内でも限られており、参加者にとっても新たな刺激となる時間となった。
イベント開催当日は、あまみエフエムのパーソナリティ・渡陽子さんと、鹿児島読売テレビの奄美大島出身アナウンサー・登島凛さんがMCを務めた。
ステージは、奄美の方言で「こんにちは」を意味する「うがみんしょーらん」の挨拶とともにスタート。渡さんは、奄美では誰もが知る“声の顔”。あまみエフエムディ!ウェイヴを通して、島の日々の出来事や声をつなぎ、地域のコミュニティを育んできた存在だ。そんな彼女の温かい進行が、イベントの空気をより島らしく、和やかな空気が会場全体に広がっていった。
ステージには、J-POPや島唄、オリジナル曲など、それぞれの想いを込めた音楽を携えて19組が登場。
出演者の中には、奄美本島だけでなく、奄美群島の喜界島や徳之島、さらには鹿児島市内や宝島、種子島からこの日のために駆けつけた参加者も。小学生の姉妹による島唄では、堂々と三線を弾きながら唄いあげ、会場からは温かい拍手が送られた。
各組のパフォーマンス後には、MCの渡さんと登島さんが出演者にインタビュー。出場のきっかけや音楽への想いをひとつずつ丁寧に引き出し、10代の素顔や声が観客にもじんわりと伝わっていく時間となった。
ステージ終盤にはシークレットゲストとして、奄美出身のシンガーソングライター・我那覇美奈が登場。
「9歳のときに奄美の10代向けの音楽イベントに出たことが、音楽の道を目指すきっかけになった」と当時を振り返り、「この中からもデビューする子がいるかもしれないね」と笑顔でエールを送り、当時彼女がそのステージで歌ったという、カーペンターズの「プリーズ・ミスター・ポストマン」を披露。
原点の曲を、次の世代が舞台に立つこの場所で改めて歌う姿には、時を超えて受け継がれる思いがにじんでいた。
“シークレットのシークレット”として、同じく奄美出身のカサリンチュ・コウスケもサプライズ登場。彼もまた奄美の10代向けの音楽イベントへの出演経験があり、2人の存在がステージに立つ子どもたちの未来を静かに照らした。最後は「スーパースター」で締めくくられ、会場全体があたたかく盛り上がった。
イベントの最後には、特別賞とベストパフォーマンス賞の発表が行われた。
特別賞には、徳之島から参加し、ギター弾き語りを披露した幸多幸星さんが選ばれ、記念品としてワイヤレスイヤホンが贈られた。
ベストパフォーマンス賞に輝いたのは、男女混合バンドのrush nova。都内で開催される夏フェスへの観覧招待が贈呈された。
思いがけない受賞に、どちらのグループも驚きと喜びをにじませ、「まさか受賞するっちょ思わんかった」と、奄美の方言で素直な気持ちを口にしていた。
イベントの運営には、奄美市名瀬を拠点に活動する高校生団体・annacotoも参加。
会場ではオリジナルグッズの販売を行いながら、受付や誘導、舞台周りのサポートなど、イベント全体を支えた。
ファッションショーや地域の歴史をテーマにした企画など、奄美の文化を若い視点で再解釈し、発信する活動を続けてきた彼らと共に取り組んだ今回のフェスは、音楽を通じた交流の広がりとともに、島の文化の次の担い手たちの姿を浮かび上がらせる時間にもなった。
島唄からJ-POPまでを通して多様な表現が交わり、島内外の若い世代がつながった今回の「AMAMI TEENS FES」。
島の音楽文化がどんなかたちで次の時代へと受け継がれていくのか。その未来を、静かに思い描くような時間がそこにあった。
なお、本イベントの模様は、6月末に鹿児島読売テレビにて特別番組として放送される予定となっている。
開催概要
【公演名】 AMAMI TEENS FES
【会期】 2025年5月31日(土)
【会場】 アマホームPLAZA
【時間】 12:30開場 13:00開演~18:45終演
【料金】 入場無料
【主催】 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント / 鹿児島読売テレビ
【後援】 鹿児島県教育委員会 / 鹿児島県高等学校文化連盟(予定)
【公式ホームページ】 https://www.sonymusic.co.jp/sd/amami_teens_fes/
【公式SNS】 Instagram:amami_teens_fes
■MC 渡陽子(あまみエフエム)
奄美大島のローカルエリア・宇検村田検集落出身。2011年あまみエフエムに営業職を希望して入社するが、島口(島の方言)での絶妙かつ素朴なトークが話題となり、名物パーソナリティに。
http://www.npo-d.org/index.html
■MC 登島凛(鹿児島読売テレビ)
鹿児島読売テレビ、2025年入社。奄美大島出身、同社初の離島出身アナウンサー。
https://www.kyt-tv.com/announcers/toshima-rin/
■運営サポート:annacoto
高校卒業を機に進学や就職で島を離れることが多い奄美大島の高校生が、故郷に恩返しをしたいと2023年に結成。地元奄美大島を拠点とし活動している学生団体。 「本気で遊ぶ島んちゅ高校」をテーマに、奄美に「恩返しをしたい」と活動。
Instagram:an_nacoto