※日経エンタテインメント! 2025年5月号の記事を再構成

“アジア版グラミー賞”を日本から――音楽業界の主要5団体がタッグを組み、5月に京都で初開催となる日本最大級の国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」。J-POPのグローバル化を大きな命題とする同アワードの進捗と“進化点”とは。同アワードの展開について短期集中連載。第2回は、エントリーから選考過程における“基本設計”に携わっているビルボードジャパンの礒﨑誠二氏に話を聞く。

(写真/中村嘉昭)

(写真/中村嘉昭)

礒﨑誠二(いそざき・せいじ)

1968年生まれ、東京都出身。阪神コンテンツリンク ビルボード事業本部上席部長。、ビルボードの日本国内のブランディングを担当しており、ジャパンチャートの設計には立ち上げから関わっている

 日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、そしてコンサートプロモーターズ協会。日本の音楽業界における主要5団体がタッグを組んで設立した、一般社団法人カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会(CEIPA)が主催する、まったく新しい国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」(以下、MAJ)の授賞式が2025年5月21~22日に開催される。

 その新しさの肝となるのが「透明性」だ。ビルボードジャパン、オリコン、GfK/NIQ Japanなどのデータと連携した客観指標にて、エントリー作品やアーティストは自動選出されている。

 短期集中連載第2回は、MAJの透明性を担保し、今の時代ならではの国際的アワードたらしめる選出方法の“基本設計”に関わった、ビルボードジャパンの礒𥔎誠二氏にインタビュー。ビルボードジャパンで、本国と折衝しながら日本向け、また日本発の音楽チャートを開発してきた礒𥔎氏。MAJに参加するきっかけとなったのは、その理念に共感したことからだと語る。

 「弊社では、08年の2月から総合チャートを発表しています。一方、米国では『ビルボード・ミュージック・アワード』という音楽賞を開催しており、それを日本に移植できないのかといった検討も続けていました。そういった関連から『日本でどういったアワードがふさわしいのか』というヒアリングのために、CEIPAさんからお声掛けいただきました。

 参加を決めたのは、『ユーザーを置き去りにしないアワードにする』という理念があったからです。その理念はビルボードのヒットチャートの元々のコンセプトでもあるんです。

 というのも、20年弱ヒットチャートを作りながら、ヒットチャートの限界を実は感じておりまして。ヒットチャートはストリーミング数やダウンロード数、それからCDセールスだったりと、その時そのユーザーの動きを反映するものです。ところが、じゃあ購入したCDは聴かれているのかは分からないし、ストリーミングなども真剣に聴いている人もいれば、そうじゃない方もいらっしゃる。

 だからこそ、ビルボードではCDセールスやストリーミング再生数といった単指標ではなく、複数のデータを重ねることでヒットが見えてくると考えているのですが、それでも回数をカウントするしかないところがアワード向けの選考データとしては弱いんですね」(以下、礒﨑氏)

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