歴史的背景を持つ、ヴィンテージ古着。人気が高く希少なアイテムの価値は高まり続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式で紹介。第50回は「ポロ ラルフ ローレン(Polo Ralph Lauren)」キューバシャツ編。

2008年よりヴィンテージショップを運営。その後2021年には、ヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、来場者を1万人以上を動員する、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。
また渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」、エルメスジュエリーを専門に取り扱う予約制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLERY」を運営。
2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、全国のヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
「こんなヴィンテージが欲しかった!」を実現してくれるラルフ ローレン
当連載ではこれまでオープンカラーシャツやレザースイングトップを紹介してきたポロ ラルフ ローレン、通称「ラルフ」。1967年に創業し、現在は世界のアパレル企業の売上トップランクに入るくらいの巨大企業になっています。一般的に、ファッションブランドがそれほどの大企業となった場合、万人受けする無難な服が主力になりがちですが、ラルフは違います。今もなお、ファッション愛好家を唸らせる服を生み出し続けている、稀有なブランドなんです。その源泉となっているのが、ブランド創業者であり今もクリエイティブ部門のトップを務めるラルフ・ローレン(Ralph Lauren)のヴィンテージに対する知識と情熱。ラルフは、ヴィンテージをサンプリング・アレンジして「こんなヴィンテージが欲しかった!」と思わせるようなアイテムを提供してくれるので、長年ヴィンテージを追いかけてきた僕ですら、リアルヴィンテージよりもラルフがアレンジを加えたアイテムのほうが良いと感じることが少なくないんです。そして、そんなラルフのアイテムのなかで特に気に入っているのが、今回ピックアップしたキューバシャツです。

Image by: FASHIONSNAP
キューバシャツは、今も多くの古着屋さんが取り扱う、夏の定番トップス。その名の通りキューバが発祥の地です。諸説ありますが、18〜19世紀始めにキューバの農夫のためにつくられたと言われており、収穫した農産物を入れられるよう胸と裾に合計4つ設けられたポケットが最大の特徴です。前身頃にはピンタックに加え、刺繍やカラーステッチなどの装飾が施されていることが多いのですが、ラルフはここに絶妙なアレンジを加えています。キューバシャツの象徴であるピンタックはそのままに、刺繍やカラーステッチを「引き算」し、さらにボディをブラックで仕上げることで、牧歌的なワークウェアを都会的なカジュアルシャツにブラッシュアップしたのです。


さらに僕が感銘を受けたのが、こちらの長袖のアイテム。オリジナルのキューバシャツは半袖が多いのですが、それを長袖のブラックにアレンジするのは、ラルフならではのセンスだと思います。この個体に使われているのは、「TWO-POLY COTTON」と呼ばれるハリのあるコットン生地。端正なシャツに採用されることが多い素材ですが、それをリネンやポリエステルといったカジュアル素材が主流のキューバシャツに落とし込んでいます。また、細部を見ると襟のフォルムやボタンの色、ポケットの位置や大きさなどが緻密に計算されていることが伺えますね。

ラルフだからこそできる「自分だけのお宝探し」を楽しんで
これら2つのキューバシャツは、僕が所有するラルフのアイテムのなかでもトップクラスで気に入っていますが、ヴィンテージ市場ではまだそれほど注目はされていないので、頑張って探せばまだ現実的な価格で手に入ると思います。サイズや状態にもよりますが、半袖なら3〜4万円、長袖なら5〜7万円くらいが目安です。ラルフは歴史ある大企業なので、二次流通市場に流通しているアイテムのなかにはまだ注目されていない逸品、珍品がたくさんあります。ヴィンテージに強い古着屋さんだけでなく、レギュラーアイテムを主に取り扱う古着屋さんや、リユースショップでも数多く取り扱っているので、色々なお店を巡って「自分だけのお宝ラルフ」を見つけてみてください。

Image by: FASHIONSNAP
編集:山田耕史 語り:十倍直昭

