「日本一コスメビジネスがしやすい街」を目指す、九州屈指のビューティ県とは? - WWDJAPAN - Moe Zine

「日本一コスメビジネスがしやすい街」を目指し、注目を集める地域がある。九州北部に位置する佐賀県だ。中でも唐津市は、美と健康を軸にした「コスメティック産業」の集積地を目指し、産業誘致を進めながら自然由来の原料開発・生産に力を注ぐ。2018年には、自然派化粧品で知られるクレコス(本社・奈良県)が同市に自社工場「ファクト(FACTO)」を開設。24年8月には、「スリー(THREE)」を運営するアクロが唐津市と「地産素材活用連携及び進出協定」を締結。今秋には、体験型の精油蒸留所「スリー アロマ ディスティラリー」の開業も予定されている。そこで佐賀県のポテンシャルを、取り組みを進める各社の取材から浮き彫りにする。オーガニックコスメ「アムリターラ(AMRITARA)」が取り扱う、唐津市の自然栽培レモンを主役にした季節限定製品や、佐賀県が推進する「フードツーリズム」についても紹介する。

工場や精油蒸留所を佐賀県唐津市に開設する理由

クレコスが佐賀県唐津市に開設した自社工場「ファクト」

クレコスが佐賀県唐津市に開設した自社工場「ファクト」

クレコスが佐賀県唐津市に開設した自社工場「ファクト」

ホーリーバジル

レッドクローバー、ティーツリー

ネロリ

佐賀県唐津市

工場の開設場所に佐賀県唐津市を選んだ理由について暮部達夫クレコス社長は、「唐津市から誘致を受け、助成金の制度を活用し、工場移転を実現させた。佐賀県のコスメティック産業推進室や唐津市のコスメティック産業振興室など、行政にコスメの専門部署が設けられており、手厚いサポートがある。コスメ業界への理解が進んでいることが、工場の移転先を決定する上で大きなポイントになった」と話した。秋に精油蒸留所の開業を予定する「スリー」の佐井賢太郎ホリスティック リサーチセンター センター長は、「唐津市コスメティック産業集積促進補助金を活用した。交付要件を満たすと、認定された日から2年間補助金が受けられるため、唐津市を選んだ」と、両者ともに助成金について言及した。

自社工場や精油蒸留所では、農産物の原料化から製造、出荷までをワンストップで完結できる。暮部クレコス社長は、「最大のメリットはスピードだ。春に採れたフレッシュな植物を使い、初夏には製品化して市場に出せる。全ての工程を“見える化”できることもメリットとなる。セミファブレス(自社工場を持ちつつも、一部の製造工程を外部のOEMに委託するビジネスモデル)にも通じるが、顧客が来訪した際に、原料を作るところから最終製品を作るところまで見ることができる。化粧品原料の開発もスムーズだ。現在、佐賀県と唐津市、玄海町、ジャパン・コスメティックセンターとともに、佐賀県産の素材を化粧品原料化して業界に流通させるプロジェクトを進めている。佐賀県産のユズ種子やアスパラガス、白イチゴ、トウキ、青ミカンなどから化粧品原料を開発中だ」とコメント。

「スリー」が2023年に佐賀県唐津市に開設した「スリー ハーブガーデン」

「スリー」が2023年に佐賀県唐津市に開設した「スリー ハーブガーデン」

今秋開業を予定する、体験型の精油蒸留所「スリー アロマ ディスティラリー」

今秋開業を予定する、体験型の精油蒸留所「スリー アロマ ディスティラリー」

ティーツリー

ローズマリー

収穫の様子

収穫の様子

「スリー」が2023年に佐賀県唐津市に開設した「スリー ハーブガーデン」

「スリー」は23年、「スリー ハーブガーデン」を唐津市に開設し、ティーツリーやロザリーナ、ユーカリ、ジュニパーなどを定植栽培している。特にローズマリーは日本一の規模を誇り、今年5月にさらに定植予定。蒸留した精油は秋以降、ホリスティックケア製品への配合が予定されている。佐井「スリー」ホリスティック リサーチセンター センター長は、「精油がどこで栽培され、生産され、どのように納品されるのか把握できることは重要だ。メリットは主に3つある。まずは、調達の安定性。昨今の石油や人件費などの高騰、また香りの世界的な需要増により、精油の価格は上がるばかりで調達は不安定だ。国内製造されている精油は海外情勢の影響に左右されることがなく、価格が安定する。次に、環境負荷が低い。基本的に栽培圃場の近くに蒸留所を設けている。精油は植物を水蒸気蒸留した油溶性の芳香成分であり、合成香料と比較してもエネルギー負荷が低い。さらに、誰がどこで作ったか、サプライチェーン上の全ての顔が見えて把握できることは、信頼と安心につながっている。現在日本には活用されていない圃場が多くあり、私たちは耕作放棄地の活用に取り組んでいる。ブランドの認知や売り上げとともに、関わる人たち全員の働きがいや、自社製品を愛用してくださる顧客にも誇れる活動にしたい」と述べた。

「アムリターラ」の佐賀県唐津市産“自然栽培レモン”シリーズが好評

佐賀県唐津市のレモン農園

“アロマティック クレンジングクリーム ジャパニーズシトラス”(150g、4950円※数量限定)

“佐賀県産 唐津のレモン果汁 ストレート100%”(200ml、1080円※25年度分完売)

“シトラス オイル イン ミスト”(100mL、4840円※数量限定)

「アムリターラ」もまた、唐津市で自然栽培したレモンを主役にした季節限定製品を取り扱う。“シトラスシリーズ”として、16年に発売した“アロマティック クレンジングクリーム ジャパニーズシトラス”(150g、4950円※数量限定)から始まり、毎年すぐに完売となるレモン果汁“佐賀県産 唐津のレモン果汁 ストレート100%”(200ml、1080円※25年度分完売)、21年からはレモンの蒸留水を配合したイエローとグリーンの二層式“シトラス オイル イン ミスト”(100mL、4840円※数量限定)をラインアップする。

勝田小百合アムリターラ代表・商品開発は、「日本で流通しているレモンの約9割は輸入品という状況で、国産かつ栽培中は肥料すら使用しない自然栽培レモンはとても希少だ。環境にできるだけ負荷をかけない方法で農業に取り組む生産者を応援することが、美しい自然を守り、地域の活性化につながると考え、毎年数量限定で販売している」と述べた。

「フードツーリズム」「ウェルネスツーリズム」の観点からも商機

佐賀県が推進するのはコスメビジネスだけではない。美術館に飾るような器で同県の食材を楽しむ期間限定レストラン「ユージアムサガ(USEAM SAGA)」を主催している。第6回を迎えた今年3月には、佐賀市「ショクドウ 欅(SHOKUDO 欅)」と、宮城県仙台市「松石」のシェフがタッグを組み1日限りのスペシャルコースを提供した。佐賀県伝統の陶磁器のプロモーションと、「ローカルガストロノミー」としてのポテンシャルを発信する。

オーガニック・ナチュラルブランドに特化したPR会社ラキャルプは、地方創生と同時に、旅する人の美容と健康をかなえる「ウェルネスツーリズム」の提案をスタート。地方自治体や地方の企業とタッグを組み、地域と暮らしに密着した新しい旅のスタイルを企画・提案する。新井ミホ代表は、「第1弾は。今年5月に兵庫県で開催する。佐賀県をデスティネーションとしたツアーも構想中だ」と明かす。「多様性の時代、単に外側の美しさを磨くだけではなく、内側をいかに美しく健やかに整えるかというウェルネスへの関心が高まっている中で、旅は一つの美容法としても注目されている。旅を通して、心も体もキレイになれる“リトリート旅”や“ウェルネスツアー”は、今後さらに盛り上がるだろう」とコメントした。

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